全国賃貸住宅新聞

公開日:2016年5月16日

第88回 空室対策はリニューアル提案が究極

第88回 空室対策はリニューアル提案が究極
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オーナー説得に必要な5つの力を身に付ける

類似物件との比較ポイントは水回り設備

「仲介力」より「物件力」

ネット社会になって、「仲介力」というものの、会社による差がどんどんなくなってきている。今後もっと、仲介は簡易になっていくだろう。ネットやシステムで自動的に申し込みが入る時代がくる。よって、真の「物件の力」そのものが勝負になるのだ。昔は営業担当の口八丁手八丁によって、成約率が違っていた。私もこの業界に入った30年ほど前、接客すると申し込みを100%取り付ける猛者がいたのを思い出す。まあ、口が達者なおじさんだった。今は店頭に来社する前に、ユーザーが物件をネットで充分に吟味して絞り込んでいるのだ。今、一番良い営業トークは「流石、お目が高い!良い物件を選びましたね」ということらしい。下手に他の物件を薦めないほうがいいのだ。今のユーザーは、ネットで物件の真偽を充分に判断することできる。要するに本物しか評価されないのだ。ということは、我々管理会社が物件の力をどう付けることができるかにかかっている。

     ▲ before

     ▲ after

リニューアル提案は総合力が問われる

空室対策にはいろいろあるが、結局のところ、リニューアル提案が究極だ。そして、不動産オーナーにたいして、この提案が適切にできるかどうかが、管理会社生き残りの分水嶺だと思っている。リニューアルには新築提案より何倍も難しいものだ。リニューアル企画を進めるには総合力が必要だ。賃貸業界で働くすべての要素が、ここに集約されるといっても過言ではない。具体的には、次のような力と知識が必要とされる。①冷静な物件評価力、賃料査定力、②空室対策の力、③企画力、④投資判断力、⑤入居者ニーズを知る力、である。

まず、①「物件の評価」がキチンとできるかだ。稼働率が悪くなっている物件を、冷静に評価してみよう。物件、間取り、立地・環境、設備、募集条件の項目ごとに、類似物件との比較によって現在の賃料を理論的に推測できる。たとえば設備・仕様の面で、水まわりが古くなっているだとか、外観があまりにも陳腐化して汚い、メールボックスが汚い、エントランスアプローチが貧弱だとか、いろいろな観点から類似物件との比較でチェックするのである。その上で、対象物件を空室期間2ヵ月くらいで決めようと思ったらどの程度の賃料なら可能かを、調査する。こうして総合的に導き出される賃料が、いま現在の正しい評価だ。まず、それを押さえることから出発すべきである。

 

次に、②具体的な空室対策だが、これには、お金をかける対策とあまりかけない対策がある。お金をかけない対策も考えよう。ワイヤーの室内干しなど、安価で效果的な対策もあるし、物件名を変えてもいいだろう。お金のかからない対策や、ソフトの充実などで空室が改善できればそれにこしたことはないが、ハードまでやらなければ空室は解消しない場合もある。基本的な間取りの変更、設備・仕様の変更にまで踏み切らざるを得ないという結論が古い物件なら出るかもしれない。

 

そうなると、③企画力が試される。リニューアルの検討となる。その物件のエリアではどんな物件が入居者に支持されるか、どんな需給ギャップがあるかを調べるエリア・マーケティング・リサーチも必須だ。一番は間取りについてどう考えるかだ。間取りには、部屋数、広さ(真の有効面積)、使い勝手等の要素がつまっている。

 

④「投資判断力」も重要だ。不動産投資なのだから、全て「数字」で明確に表されなければならない。しかし、リニューアルの場合はプロでも投資の見極めが難しい。投資分析の技法を活用して、リニューアル計画が投資の視点で妥当なものかを検証する必要がある。このあたりは、賃貸の業界人は一番弱いところではないだろうか。

 

また、⑤「入居者ニーズの最新動向」も踏まえなければならない。空室対策にも企画・プランニングにも、現在の入居ニーズの把握は必須だからである。
 このように、リニューアルプロジェクトは賃貸経営ノウハウの集大成であり、総合力の有無が成否を分けるといってよい。業界人の方々には、こういわせていただきたい。たとえば、築年数がかなりいっている物件で稼働率がたとえば50%を切るような賃貸アパート・マンションがあったとする。それに対して、自分が提案してリニューアル工事を施し、満室経営に蘇らせることができたら、その人は一流のプロだといえるのではないか。

 

いっそのこと建て替えなら話は早いのだが、古いアパート・マンションには、どこから手をつけたらいいかわからない陳腐化した間取りや設備・仕様が存在する。往々にして、滞納者や不良借家人がいたりする。メンテナンス不備で修理しなくてはいけない部分があるかもしれないし、修理後のメンテナンス点検の計画も立てる必要がある。こういった物件を再生させ、かつ収支面でも軌道に乗せるという作業には、賃貸経営の全ての要素が入ってくるから、最も高い能力が求められる業務なのである。 その仕事を、自分で絵を書いて、すべてプロデュースすることができたなら、その人は一流のプロパティ・マネージャーといっていいだろう。

提案の現場

他に、実際の提案の現場で重要なのは、「実績」を見せることだろう。実例としてのリニューアルの「ビフォー&アフター」の写真が欲しいところ。実例集のパンフレットなどがあると一番いい。たった一例でもあるのとないのでは、まったく意味が違う。不動産オーナーは、あなたのプレゼンはわかったが、実際にどこまでやったことがあるの?と内心思っている。実績を積むことだ。

また、実際の案件を前にして、オーナーの取る選択肢は以下の3つであることを理解したい。①「しっかりリニューアル」、②「プチ・リニューアル」、③「何もしない」、である。プレゼン時には、あなたの取るべき選択肢は必ずこの中のどれかになります、とするのだ。オーナーはこう冷静にカテゴライズされることで、空室対策への意識が明確になってくる。③の何もしない、と選択する人は非常に少ない。誰も、そんな後ろ向きな不動産オーナーではいたくはないのだ。

 

しかし、では①を選択するかというと、いきなりコストがしっかりかかる「しっかりリニューアル」を選択するひとも少ないのも事実だ。まず②の少々のコストをかけて様子をみる、という人が一番多いのではないか。それでは、実際の空室対策としては決定打にはならないかもしれない。しかし、まず一歩をオーナーに踏み出してもらうことで良しとするのでもいいかと思う。築古の一部屋の物件にたとえば100万〜300万をつぎ込むのは、結構決断がいることだと思う。一度、踏み出していただければ、次には①の「しっかりリニューアル」に繋がるのではないか。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2016.5.16 掲載)


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