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第89回 入居者が内心内見同行を望まない理由

2016.06.13
  • 全国賃貸住宅新聞

    不動産店舗に頼らない人が4人に1人

    全体の3分の1は、ネット情報だけで契約できる

    「21C. 住環境研究会」で調査

    賃貸住宅の入居者アンケート調査である「入居者ニーズと意識調査」が発表された。今回で第7回目だが、これは、3年毎に「21C.住環境研究会」と「リクルート住まいカンパニー」社とが共同で行っている調査で、今回は参加企業の賃貸入居者1225組に答えてもらった。毎回、1000組以上の実際の入居者に答えてもらっている調査であり、情報として確度が高いと思っている。「21C.住環境研究会」は、1995年設立で、首都圏の中堅、大手の賃貸管理会社約20社が参加する研究会で、年数回の定例会で情報交換をするなどしている。

    「物件名検索」をかける

    今回の調査では特に、ネット社会が浸透するなかでユーザーの部屋選びの意識がどう変化しているかを探ってみた。まず、ネットで部屋探しをする際に、気になった物件の「物件名検索をGoogleなどでしたか?」(Q16)であるが、約6割の人がイエスと答えている。ITリテラシーが高い若い人は、当然のように、もっと深く詳細な情報を求めて物件名で再検索をするのだ。

    続いて「何のために再検索をするのか?」という問には、「物件の周辺環境(スーパー、コンビニの位置など)を確認するため」「物件の詳細住所を特定するため」「物件の写真や映像が他にもないか探すため」「同じ物件で仲介手数料などの条件がよい不動産会社を探すため」等とある。いまや、電化製品などは「ショールーミング」の時代だ。家電量販店でさんざん説明をうけても、同じものをネットで買ってしまうくらい消費者はシビアで、ネットの使い方をよく知っている。そう思うと、6割という数字はまだまだ伸びるのではないか。物件名検索をかければ、より物件の「元付け」側にユーザーは近づく。そして、管理会社の発信する情報にたどり着けば情報が詳細なだけではなく、「仲介手数料は無料」などという恩恵に預かれるのだ。ネット社会が「中抜き」を促進させる。

    「内見」は1人でいい

    次にQ19の「内見をしたか?」の問である。75%が不動産会社と一緒に行ったと、答えている。まあ、これが一般的行動であることは理解できる。しかし、14%は一人で見に行っている。残りの1割は物件を見ないで契約している。不動産屋さんに頼っていない人が4人に一人はいるのだ。意外に多くはないだろうか。次にQ34は、「内見しなくても部屋の契約をすることができるか?」という問だ。内見なしでは契約できない、とする人が67%でちょうど3分の2である。3分の1の人は、現在のネットでの情報で契約できるか、もっと詳しい動画とかがあれば、契約できるとしている。これも思ったより多いという印象だ。3分の1の人は、見なくても賃貸住宅を借りられると言っているのだ。ネット上で契約もできれば、一度も不動産会社や大家さんに合わなくてもよいということに繋がるではないか。

     

    Q36では、改めて「物件の部屋を見に行く際に、不動産会社の担当者の同行は希望しますか?」と聞いている。7割の人がイエスと答えている。同行を希望する理由は、「いろいろと質問したいから」「物件選びのアドバイスがほしいから」「他の物件も紹介してほしいから」「連れて行ってもらえるのが楽だから」「条件交渉をしたいから」などとなっている。まあ、当然といえるが、しかし3割の人は「一人で見に行きたい」と答えているのだ。「一人で行きたい理由」は「時間にとらわれずゆっくりと見たいから」「営業されるのが嫌だから」「物件の周辺をゆっくり見て回りたいから」「気に入らなかったときに、断りづらくなるから」「友人や家族とゆっくりと見たい」「不動産会社の人との日時調整が面倒だから」などとある。たとえば服を買うときに、いちいち店員に付きまとわられたら面倒であり、用があるときはこっちから話しかけるものではないか。どうも、これまでの業界の常識が通用しなくなっているのではないか?

     

    問題はQ38の問だ。Q36の問でイエスと答えた人のうち、「仲介手数料割引があるのなら一人で内見してもいいか?」と問うてみた。なんと、8割以上の人が、「一人で見に行く」と答えている。もともと、一人で見に行きたいと言っていた3割の人を足すと、全体で9割の人が一人で内見することにとくに違和感を持っていない、むしろ希望しているという感じだ。なんだ、ほとんど仲介業者を必要としていないのではないか。案内してくれるというから、まあ案内してもらってはいるが、内心は、別に一人で見に行っていいのに、と思っている。そういう心情が透けてみえる。

    (筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2016.6.13 掲載)

    • 藤澤 雅義(フジサワ マサヨシ)/Mark藤澤
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。役職呼称を禁止にしている。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

      2001年、不動産会社向けコンサルティング企業であるオーナーズエージェント株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任。
      また、アメリカのIREM®(全米不動産管理協会)発行の国際ライセンスである
      CPM®(米国不動産経営管理士)の日本での普及活動にも尽力。IREM JAPANの創学メンバーである。

      著作に、
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