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第91回 投資判断、新築か中古か

2016.08.15
  • 全国賃貸住宅新聞

    古い物件にこそ高収益獲得の妙味あり

    高額改修回避のため、水回りの老朽度合いの確認必須

    最近では、我々のクライアントである不動産オーナーが所謂「地主さん」ばかりではなく、「個人投資家」であることも多い。よく受ける質問に、こんなものがある。「新築がいいですか、中古がいいですか」「東京がいいですか、地方がいいですか」「マンションが有利ですか、アパートが有利ですか」。私の答えは決まっている。「それはケースバイケースです」。それぞれにメリット・デメリットがあり、選ぶ側の好みや得手・不得手もある。「一概に断定することはできない」というのが、正直かつ正しい答えだと思うのだ。それぞれの選択肢が持っているメリットは、見方を変えればデメリットにもなる。逆にデメリットを逆手にとることで、有利な投資物件に生まれ変わることもある。物件の選択肢ごとの特性と問題点を検討してみたい。まず、最も身近な「新築か中古か」のテーマから。

    三年目以降の収支を見極める

    新築の最大のメリットは、「最新の」設備・仕様であるということだ。そして、中古物件では大きな負担となるメンテナンスコストが、当分の間、大きくかかることがない。また長期融資がつきやすいので、借入金返済額を低く抑えられる。その分、キャッシュフローが良くなることも大きなメリットである。新築の特性としては、一般的には、新築から2年間くらいは家賃が5%程度高く決まることが多い。これが、「新築マジック」、「新築魔力」である。よって、新築の物件を購入したり、新たに建築するというときは、3年目以降の「冷静な家賃」を元に収支予測をしたほうがいい。5%程度の下落ならいいが、もっと賃料がダウンすることもある。それほど良い物件ではないのに、新築というだけで勢いで決まってしまう場合もあるのだ。私たちプロは、内覧すればいい物件か悪い物件か、ひと目でわかるが、それがわからないまま買っているオーナーも多いはずである。少なくとも新築時には、いい物件か悪い物件か気づきにくいものである。

     

    また新築物件を購入する際は、販売価格が高いことが多いので、利回りは低くなってしまう。しかも、数年後売却すると購入価格と売却価格の差が激しいことが多い。たとえば、仮に5年間で回収した賃料が200万×5年間=1,000万であったとしても、売却損が1,000万なら利回りは0%である。地主さんは「売却」という選択肢をあまり意識しないと思うが、売るつもりがないとしても、5年後「売るとしたら」いくらになるのだろうか、という視点は持っていたい。

    稼働中の収入から利回りはそこそこあると思っていても、売却損があるのであれば、それは投資に実は失敗していることになるのだ。新築のワンルームマンション投資が昔からある不動産投資のパターンだが、ほとんどの購入者がそういう意味で失敗している可能性がある。長期保有で、かつ団信付きで生命保険代わりというのならいいが。

    賃料変動少ないがメンテコストかさむ

    新築が「新築マジック」のせいで実力以上の家賃を設定できるのに対して、中古物件の家賃は立地条件や築年数、設備・仕様などを反映した適切な額だといえる。いわば「冷静な家賃」が設定されているわけだ。新築の家賃が不安定なのに比べて、家賃が安定しているのは大きなメリットである。当然のことながら、新築に比べて一般論としては購入価格が安いため、その分、利回りは高くなる。また中古は、実力を反映したこなれた物件価格になっているため、購入価格と売却価格の差が少なくなっている。

     

    一方、中古物件では新築効果とは反対のデメリットがある。新築に比べると家賃が安く、間取りや設備・仕様が陳腐化していれば、入居者の人気が低い恐れがある。また、ファイナンス面では、古い物件は長期融資がつきにくく、その分、借入金返済額が多くなるのでキャッシュフローが低下する。メンテナンスコストも高くなる可能性があり、それもキャッシュフローを圧迫する。

    不動産投資の醍醐味

    「新築」は魅力的であることは間違いないのだが、私は中古物件のほうにも「不動産投資の醍醐味」を感じることが少なくない。中古物件でもきちんと管理されており、適正な家賃なら入居者はスムーズに決まる。買う側にとっては、購入価格が安い分だけ狙い目なのである。ただし、購入した後に給排水管が破裂して莫大な費用がかかったなどというと、洒落にもならない。こうしたリスクの見極め、特に水回り関係が中古物件の場合は気になるところである。

     

    新築物件はリスクが低い分、それほど高収益は期待できないが、誰でも手を出しやすい。古い物件はハイリスクだが、チェック能力がしっかりしていれば、ハイリターンの可能性を秘めている。結局は「物件を見抜く能力」なのである。たとえば空室だらけで見向きもされていない古い物件は、かなり安く購入することができる。その上で、なぜ空室が多いのかをキチッと把握し、「ここが悪いから入居者が決まらない。こう変えれば入居者が戻ってくるはず」と明確にわかれば、「これだけの収入をこれだけのコストで稼ぐことができる」と想像できる。適切なリニューアルやリノベーションを施すことで、非常に高利回りな物件に「変身させる」ことができる。リスクはあるが、たいへん「おいしい物件」になる可能性が高いのだ。

     

    ときに管理会社の管理が悪い物件、リーシング能力が低い会社に任せている物件を目にすることがある。物件自体の欠点に加えて、こうした管理も運営も下手だというケースも狙い目である。悪い部分を改善すれば、効果はたちどころに現れるからだ。まともなPM会社に転換し、上記のように適切なリニューアルやイノベーションを実施する。さらに、しっかりとした管理・運営・リーシングをすることによって、収入を大幅に増やすことが可能なのである。ちなみに、リーシング能力が低い会社とは、必ずしも小さい会社ということではない。私の経験でも、大手であっても手が回っていないのか、リーシングの弱い会社というのは正直あるものだ。

     

    たとえ安く買った物件でも、大きな収入を得られる物件に蘇る。そうすれば、売却の際にも高額の物件に変貌することになる。というのは、新しい年度のNOIを期待利回り(キャップレイト)で割り戻したものが、その物件の新しい価値(価格)になるからだ。たとえばNOIが倍増すれば、売却益も倍増することになるのである。

    ※「リニューアル」と「リノベーション」:リニューアルは劣化した機能や美観を原状回復すること。リノベーションは、それまでの機能・性能以上に価値を高めたり付加価値を生むことである。

    (筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2016.8.8-15 掲載)

    • 藤澤 雅義(Mark藤澤)
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役社長
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役社長であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役社長を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に豊ノ島・時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

      著作に、
      ・『賃貸経営マイスター』(住宅新報社)(Amazonで購入
      ・『「収益改善」&「リニューアル企画」マニュアル』(総合ユニコム)(購入
      ・『200万円からはじめるマンション投資術』(主婦の友社発行)(Amazonで購入

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