お問い合わせ

第92回 「間取り」を考える

2016.09.12
  • 全国賃貸住宅新聞

    DINKS世帯に高まる書斎の人気

    寝室は最小限にしリビングの広さを確保

    間取りの見直し

    「間取り」の問題が原因で空室が発生するケースはかなり多い。新築企画でも空室対策におけるリニューアルプロジェクトでも、重点項目のトップは常に「間取り」だ。この「間取り」には、単に2DKとか3DKというタイプの違いだけではなく、「部屋数」「専有面積」「使い勝手」「各部屋の大きさのバランス」「収納力」など、様々な要素が入っている。かつて主流だった間取りは、2DKだった。もともとは50年前に日本住宅公団が始めた「51C型」と呼ばれる規格で、永らく日本の賃貸市場で先導役として走ってきたが、そろそろ役目を終えようとしている。いまや陳腐化した間取りでは、入居者は選択肢にも入れてくれないだろう。

     

    かつて主流だった2DKはその役目を終え、1LDKにリニューアルされている。38~43㎡程度の専有面積なら、「マスターベッドルーム+LDK」という構成になる。2DKのダイニングキッチンは6畳くらいしかなく、それでは満足に食事もできないし、中途半端でもったいない。ダイニングテーブルが置いてあっても、単なる配膳テーブルに過ぎなかったりする。また、ふた部屋目のベッドルームが必要かといえば、それを作るなら部屋はいらないから、リビングをもっと大きくしてほしいというニーズが勝っている。

     

    いま求められているのは、大型液晶テレビ+AV機器、ソファまたPCコーナーなどが置ける大きなリビングコーナーである。そして、収納力が足らない、という意見が圧倒的に多い。また、ベッドルームは文字通りベッドだけ置ければよく、最低限ダブルベッドが置ける4畳半程度にして、その分リビングルームを大きくするという手もある。

     

    一般的な2DKは、「部屋6畳+部屋6畳+DK6畳+収納1.5畳」で、バス・トイレ・廊下部分、を除いた有効な生活面積(=「部屋有効面積」)と呼んでいる)は合計19.5畳である。たとえばそれを「4.5畳+LDK12畳+収納3畳=19.5畳」にするのである。これなら、カップルでも単身者でも対応できる間取りである。

     

    他にも2Kとか3DKなど、陳腐化した間取りは世の中にたくさんある。2Kタイプはスタジオ(広めの1K)に、3DKは2LDKに変更すべきである。入居者が決まらない物件のなかには、「6畳+4.5畳+2畳のキッチンの2Kタイプ」というような 年代ものの間取りもまだまだ沢山ある。3DKタイプというのは、その昔、部屋数が多いことがいいことだ、という「部屋数信仰」があったころの間取りだ。現在は3部屋欲しいという入居者がほとんどいない。

     

    2LDKも、よくある「6畳+6畳+LDK10畳=22畳」というものよりも、「6畳+DEN3畳+LDK13畳=22畳」としたほうが人気が出ることだろう。それは、2LDKタイプを欲する賃貸需要層がカップル、つまり新婚・DINKS(Double Income No Kids/共働き、子供なし)・同棲等の「2人入居」が中心で、子供がいてもせいぜい乳児や就学前であることが多いからだ。2部屋目が大きい必要はない。

     

    DEN(書斎・小さい私室)で十分だし、最近は自宅にパソコンがない家はないだろうから、DENのニーズも高まっている。2部屋目を小さくした分、LDKが大きくなったほうが入居者にとってはありがたいだろう。  また、乳幼児がいるカップルを意識するなら、夫婦の寝室にベビーベッドが置けるスペースを意識したい。そうなると6畳では狭いだろう。7畳~7.5畳は必要になる。つまり、「7畳+DEN3畳+LDK12畳=22畳」の間取りが良いということになる。

    DENという発想

    DENという言葉は、元々は「こじんまりとした巣」というような意味で、それが転じて「書斎」、「私室」という言葉として使われている。人間の習性として、ちょっと狭い空間のほうが居心地が良かったり集中できたりするものだが、実際3畳とか4畳程度のDENがあると、なぜかワクワクする。個人的なことをいうと、子供の頃、「基地遊び」というのをよくやったものだが、DENを見ると、そのときのワクワク感と同じような感覚がよみがえる。

    ▲ 3畳弱のDEN

    ご理解いただける男性も多いのではないか。ベッドルームとは違う何か「自分の城」的な感触もあるのだろうか。写真は、3畳弱しかないDENだが、平机と椅子、本棚を最初から作り付けでセットしてあるものだ。今はPCを大抵は持っているし、家で仕事をする場合や、ちょっとした書き物をする場合にも「書斎」があるととても嬉しい。もっと賃貸住宅にもあっていいのではないか。

    4畳半のベッドルーム

    この案件は、35㎡の「和室6畳+洋間6畳+キッチン4.5畳」の2Kタイプのアパートのリニューアルだ。

    ▲ リニューアル前と後

    リニューアル前と後の間取りを見ていただくとわかるが、エリア的に、2ベッドルームのタイプより、1LDKが好ましいと思われたので、ベッドルームはあくまでベッドを置けるだけのスペースの4.5畳と狭くした。よって、その分リビングルームに余裕がうまれ、またキッチンスペースとの一体感を出すようにもしたことでリビングをより広くすることができた。

    ▲ 3枚引き戸がきれいに収納されている

    ベッドルームとリビングルームを分ける引き戸をポリカーボネ ート製にすることで、スタイリッシュなテイストを作ることがで きる。また、引き戸を開け放したときには、部屋全体が一体とな り、大きなスタジオタイプにも変身するのだ。そして、この3枚 引き戸だが、3枚全部が壁側に収納されなければならない。よく 10㎝程、部屋側に飛び出していて、収納し切れていない引き戸を 見かけるが、そのあたりの見切りの良さにまでこだわってほしい ものだ。

    家具の配置を意識せよ

    間取りを作る際に、気をつけなくてはいけないことがある。それは、実際に家具をどのように入居者は配置するのかを予想しながら設計しなくてはいけないということだ。6畳程度の部屋をつくったからそれで良しとするのではなく、ベッド、PCがおける机、椅子、テーブルなどをどのように置くことができるのかを考えなくてはいけない。

     

    それをしておかないと、実際には部屋のどこにもたとえばベッドの置きようがない、また、クローゼットのドアを開けようとするとベッドにあたって開けられないというようなことが起きるのだ。ベッドはドアやクローゼットや履きだし窓の前に置くとふさいでしまうので、そこに置くわけにはいかない。それらを除いたスペースが無くてはいけないのだ。図面には必ず点線で家具の配置をいれてみよう。

    (筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2016.9.12 掲載)

    • 藤澤 雅義(Mark藤澤)
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役社長
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役社長であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役社長を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に豊ノ島・時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

      著作に、
      ・『賃貸経営マイスター』(住宅新報社)(Amazonで購入
      ・『「収益改善」&「リニューアル企画」マニュアル』(総合ユニコム)(購入
      ・『200万円からはじめるマンション投資術』(主婦の友社発行)(Amazonで購入

      さらに詳しく見る

    導入事例紹介

    サービス紹介

    メディア掲載情報一覧へ戻る
    このエントリーをはてなブックマークに追加
    PAGE TOP