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第102回 「仕事ができる」とはどういうことか?

2017.07.11
  • 全国賃貸住宅新聞

    正解のない課題を解決する力が重要

    人工知能が対処できないアイデア創出や高いコミュニケーション能力が必要な時代へ

    「あの人は仕事ができる人だ」とはどういうことだろうか。仕事ができる人とは、与えられた課題を的確に処理し、結果を出すことができる人のことであろう。

    ハードルの高い課題であっても、①問題点を見つけ、それを②分析し、③改善策を編み出し、そしてそれを④実行できる人だ。

     

    ①から④に分解(表1)してみたが、①で、ここがポイントだと「気づく力」が試され、②冷静に「分析」する力、つまり現象に対して推論をロジカルに検証する能力、そして、③の「アイデアを独創する技術」が求められ、④の実行に続く。

     

    我々の業界内での至近な例でいえば、長らく空室が複数戸、続いている物件があったとしよう。この物件を満室にするのが課題だ。

     

    営業のAさんは、このエリアのユーザーターゲットにこの物件の間取りは合っていないのではないかと「気づき」、この物件の「3DK」を欲するユーザーは市場調査の結果、ごく少数だと「分析」した。2LDKないし思い切って1LDKに間取り変更することがベストの「改善策」だと考え、実際にその内容をオーナーにプレゼンして、合意を得て「実行」するに至るのである。気づいてかつ改善策ができても、実際に「実行」されなければまったく意味がない。

     

    最後の「実行力」も当然大事だ。お金がそれなりにかかるリニューアル提案をするのだから、提案内容の緻密さ、事業収支の納得感、人としての信頼感、そして説得力がなければプレゼンは成功しない。そして、実際に工事を進める力も必要だ。工事は一人ではできない、工事に関わるベンダーの方とのコミュニケーション力も必要だし、社内の同僚や上司の理解も得ていなければ工事は実行できないだろう。

     

    しかし、これなどは、比較的簡単なものかもしれない。実務の世界では、もっと難しい課題、「正解などない課題」に数多く出会うものだ。

     

    たとえば、ある日給湯器が壊れたというクレームが入居者からはいったとしよう。ベンダーに確認に行ってもらったら、交換が必要だという。交換費用は15万円だ。オーナーに連絡してもまったく繋がらない。2万円以上の費用については、オーナーの了解が必要だと管理契約書にはルール決めがしてある。時間が経っていき、今度は入居者が風呂には入れないとかなりお怒りの電話がはいる。

     

    さて、あなたならどうするだろうか。

    部下からどうしたらいいでしょうかと、問われたらどう答えるか。選択肢はいつくかある。

     

    入居者に銭湯代を渡すか、他の空いている部屋のシャワーを使ってもらうか、ビジネスホテルに移動してもらうか、または思い切って給湯器交換を勝手に実施するか、それともあくまでオーナーと連絡がつくまで入居者に待ってもらうか。友達の家にでも行ってください、あとで賠償しますと。

     

    どれを選択しても、相手をうまく説得しなくてはならない。そして、オーナーからはそれなりの費用を負担してもらう必要がある。どれが正解かはわからない。やってみなければ。そして、厳しいオーナーなら何をやっても怒られそうだ。しかし、実務の世界ではこのような「正解のない課題」を解決する能力が求められるのだ。

     

     

    文部科学省が2020年を目処に10年ぶりに「学習指導要領」を改訂するそうだ。第四次産業革命とも言われる、進化した人工知能の急速な進化が人間の職業を奪うのではないか言われる昨今。知識習得に偏重している今の学校教育が時代の変化に通用しなくなるのではないかという懸念に対応していくとのことだ。

     

    今後10年〜20年で半数程度の仕事がロボットに奪われると、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授が予想したことは有名だ。また、レイ・カーツワイルは2045年には人工知能が人類の能力を超える「シンギュラリティ」が来るとも予言した。孫正義氏は2045年よりもっと早いと言っている。そのような激動の変化の時代を目前にして、文部科学省は、「何を学ぶか」が中心だった従来の指導要領から「何ができるようになるか」を明確にするとのこと。「知識」を得ることもさることながら、「問題解決能力」を重視するということか。

     

    「答えのない問題」に挑む力をつけさせる力をつける授業として、先生が一方的に教える形ではなく、「グループ討議」をしたり、「ディベート」を行ったり、「調査学習」を通じて思考力や判断力を育てるのだそうだ。

    ▲ ロボットと共存する時代へ

     

    その討議の課題はこのようなものになるらしい。

    「あなたは満員の乗客を乗せたバスの運転手です。あるバス停に近づいていますが、杖をついたおばあさんがゆっくりとバス停に向かっているのが見えました。しかし、その歩みは遅く、バス停にたどり着くにはあと1分程度はかかりそうです。時は盛夏、次のバスが来るまで30分はあるようです。さて、あなたはどうしますか」というものだ。

     

    単純に「おばあさんを待つ」、と答えたあなたは思慮が浅い(笑)。バスの乗客の中には、定刻も過ぎているし、飛行機の出発時間に間に合わないからと早く急げという人がいるかもしれない。体調が思わしくない人もいるかもしれない。ではあっさりとおばあさんを見捨てるか。

     

    さて、どうするか。

    急いているひとだけタクシーで先に行ってもらうか、そのコストはどうする。では、急いでバスを離れ、おばあさんに駆け寄りおんぶしてバスに乗せるか。乗客に説明をして、あくまで乗客を説得するという選択肢もあるかもしれない。

    たかが1分だ。

    この討議の中である小学生が、いっそ今後は高齢者はどこでバスを停めてもいいことにしてはどうか、と言ったらしい。これは素晴らしいアイデアだ。実用化に向けて協議したい内容だ。このような内容の授業が今後日本では行われるのだ。たくましい子どもたちが生まれそうだ。

     

    仕事においては「知識と経験」も無論大事だ。私は、本を読む習慣がないような人はスタッフとして雇いたくはない。知識というバックボーンがなければ、問題解決のための「判断」もできないだろう。

     

    「新しいアイデアを生む」ときも、既存のAとBを結びつけるのがアイデア発想の基本であるから、知識すなわち情報は必要である。情報量はロボットにはかなわないが、このAとBを結びつけるという行為はロボットにはなかなかできないものであるようだ。そして、「相手を説得する」という行為もロボットにはできない。

     

    説得するためにはロジカルであることは無論、プレゼン力も必要だし、情熱が重要になってくる。「場の空気を察して」ものごとを進めるということもできないだろう。つまり、それは「コミュニケーション能力」のことである。今後、我々は「真の実力」を身に着けないと食べていけない時代がやってきそうだ。

    (筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2017.7.10 掲載)

    • 藤澤 雅義(Mark藤澤)
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役社長
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役社長であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役社長を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に豊ノ島・時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

      著作に、
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