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第103回  120年ぶり民法大改正は管理受託のチャンス

2017.08.11
  • 全国賃貸住宅新聞

    運営リスク請け負う管理会社の役割が増大

    賃料減額など入居者との折衝や現状回復費用の請求が複雑化

    保証の限度額を明記

    明治以来120年ぶりの民法の大改正が行われるという。施行は2020年4月くらいが濃厚とのこと。我々の実務にも影響がありそうだ。

     

    まず、①建物賃貸借契約等で連帯保証人を付ける場合に、契約書で極度額(連帯保証人の責任限度額)を定めることが義務付けられた。極度額とは、「保証額は最大でいくらまでですよ」、という意味である。それ以上の額になっても払わなくていいのだ。

     

    現在、建物賃貸借の契約で親や兄妹等、親戚や知人が連帯保証人になる場合、たとえば家賃が8万円として、保証額が500万円とか1000万円の額になることもあるとは一般には想定はしていないことだろう。家賃滞納の数ヶ月分程度、つまり24万〜48万円とかの保証額ならイメージしているだろうが、建物賃貸借契約での連帯保証は、家賃滞納だけではない。火事を起こしたときや、水漏れ事故を起こしたとき、数百万円になることは普通にある。もし保険に入っていなかったら入居者だけでは払えず、連帯保証人に及ぶことは十分にあることだろう。

     

    また、建物内で自殺をした場合もそうだ。火事はそうしょっちゅうはないが、自殺は数千戸も管理していれば、平均して年に1回はある。弊社でも経験があるが、当然、室内は床から壁から全面リフォームをする必要があり、また、当然同じ家賃では貸せず半額近くになるので、その分の損害分を何年分かは連帯保証人に保証してもらうことになる。数百万円になることはザラである。その他、殺人等の事件を起こした場合も同じである。

     

    法改正後は、連帯保証人として、あなたの極度額は500万円です、とかを契約書や連帯保証承諾書の中に明記しなければならない。もし明記していないと、保証契約はなんと無効になってしまう。500万円とか明記されている契約書や連帯保証承諾書を見せられて連帯保証人になる予定の人は、やはり躊躇することであろう。

     

    今後は、人的保証に頼らず保証会社による連帯保証が促進すると思われる。そうなると、保証会社は一般の不動産オーナーと直接取引をあまりしたくはないだろうから、当然、不動産業者を通して契約取引をしたい。そして、できれば、仲介専門や仲介中心の会社ではなく管理会社と継続的に取引をしたいだろう。仲介会社では、たまたまその部屋だけを仲介している可能性もあり、オーナーとの関係が希薄であったり、かつ保証契約の管理の面で不安があるからだ。となると、民法改正にともない、管理会社に任せないと賃貸経営は難しいということになってくる。これは管理拡大のチャンスではないか。

     

    そもそも、建物賃貸借契約及びその管理運営は不動産オーナーが自分で全てできるような内容ではもはやない。法律的にも複雑になってきているし、また入居者も法律論をかざして訴えてくるものもいる。よって、「空室リスク」以外の「運営のリスク」も徐々に大きくなっているのだ。

     

    また、今回の改正で、②賃貸建物の一部滅失などの場合の家賃の当然の減額が認められるようになる。今までは、一部滅失の場合に、「賃料減額請求権」が発生するとの定めであったのが、いきなり「減額できる」となったのだ。つまり、エアコンが故障していてこの夏2ヶ月間使えなかった、よって家賃を数万円減額せよと一方的に入居者に言われてしまうのだ。はっきりいって、どうしても一般消費者である「借り手」や「保証人」を守る方向に法律はシフトする。

     

    そして、仲介会社というのはどちらかというと「借り手」側の立場にたつものだ。しかり管理会社はオーナーの収益の最大化を図るためにある。ますます管理会社の重要性が高まっていくのではないか。
    ③つ目のポイントは、入居者の原状回復義務に通常損耗は含まないことが明文化されることである。いままでは、国交省のガイドライン(「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」平成10年に初めて公表された)上での「指針」であったり、裁判上の判例でしかなかったものが、約20年を経て明確に民法上の「法律」になるということである。

     

    現在では、かなりガイドラインの精神も浸透したとは言え、中にはまだ入居者からしっかりリフォーム代を取ってくれ、と昔の感覚でいうオーナーもいる。今後は、そういうオーナーに対して「法律違反になりますよ、やめてください」と言えるのである。

     

    また、ちなみにこれは強行規定ではなく、任意規定となるので、つまり強制性がないので、常識の範囲での当事者間での特約は有効ということになった。明文化してやりやすくなったと言えるし、また逆に入居者からの突き上げも多くなることが予想される。オーナーとの間にたって管理会社の調整がより必要になるのではないか。

    通常損耗では請求不可に

     

    最後に、この「原状回復義務」であるが、現場で退去リフォームを担当している人はさすがにご存知かと思うが、いまだに誤解していて理解しておられない人も業界には数多くいるのであらためて整理したい。この「原状回復」という文字からは、「元通りに戻す」という意味に取れてしまうが、そうではなく、これはいわゆる「損害賠償」と考えればわかりやすい。

     

    原状回復の定義は、「入居者の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、入居者の(a)故意・過失(b)善管注意義務違反、その他、(c)通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」とある(記号と下線は筆者)。

     

    つまり、普通に住んでいて、汚れてしまう壁クロスや床の絨毯のへこみは通常損耗とか経年摩耗と言って、入居者の負担するものではない、その修繕は家賃に含まれているとするのだ。この「原状回復」という言葉には、業界に二通りの意味があるので混乱する。

     

    上記の定義による「法律上の意味」とは別に、単に「退去リフォーム」全体を指す言葉としても使われているのだ。「原状回復工事を担当しています」とかいうではないか、この場合は「退去リフォーム工事を担当している」という意味だろう。

     

     

    また、「参考_表①」のグラフを正確に理解しているだろうか。

     

    これは、たとえ、(a)故意・過失や(b)や(c)の要因での入居者の責任における瑕疵であったとしても、「全額入居者に負担させてはいけないよ」という意味のグラフである。ものには「償却」というのがあるのだから、つまり経年で滅失はしていくものなのだから、その部分は請求できないのだ。故意・過失等であっても請求できるのは「今回のようなことがなければまだ使えたであろう期間に相当する部分(未償却分)」のみである。

     

    たとえば、耐用年数6年の壁クロスを新品に張り替えた時から2年間住んでいて、入居者の責任で壁クロスを張り替えないといけない状態になったとしよう。張替え代は6万円とする。その場合、入居者負担は残り4年分の4万円である。

     

    また、これはどうだろうか。張り替えたときから4年経ったときに入居して、1年間住んで退去、つまり張替えから5年経ったときに退去した場合だ。入居者の責任で張り替える必要が生じて、張替え代が同じく6万円であった場合には、負担は残りの1年分の1万円である。

     

    これらの計算と請求をオーナー自身が正確にできるだろうか、仲介会社ならいつの時点で張り替えたかの記録など持ってはいないだろう。ますます管理会社が活躍する時代がきたと言える。

    (筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2017.8.14 掲載)

    • 藤澤 雅義(Mark藤澤)
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役社長
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役社長であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役社長を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に豊ノ島・時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

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