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第105回  社長さん、あなたは部下を指導しているか?

2017.10.11
  • 全国賃貸住宅新聞

    ベテラン社員にも指導する仕組みづくりを

    定期的なマネージャー会議での評価と個人面談を実施

    間違った人選で人材の課題実感

    企業は人が全て。今回の原稿は、経営層トップの方向けの内容だと思う。社長さんに是非読んでもらいたい。最近、私にとってはとても衝撃的なことがあった。

     

    ひとつの失敗事例でもある。あるプロジェクトで、紹介されて50歳代のコンサルタントを雇ったのだが、その人のいる業界では大手に勤めていた方という触れ込みで紹介された。しかし、段取りが悪くて仕事は遅い、間違える、センスはない、指示が曖昧でよくわからないので現場が嫌がる、お金をごまかす(コンサルタント料を払っているのに、自分の利益を乗せた商品を私に売ろうとする)、失敗を人のせいにする、といった今までで、あまりお目にかかったことがないレベルの人材だった。

     

    正直、いい年をしてこんな人がいるのかと思うほどだ。彼を見ていて考えさせられた。我々とは全然違う業界の仕事であったので、人を頼って紹介してもらったのだが、私でも知っているその業界では大手の会社にいたという経歴で過大に期待してしまった。大手にいて数多くの仕事に携わったというから、優秀な人だろうと思ってしまったのだ。その会社に20年いたというのだが、はっきり言って、その会社は彼をどう指導してきたのだろうか。大いに疑問である。

     

    彼をよく知っている業者の方に聞くと、大手なので、彼ができなくても、まわりの人間がフォローしてなんとかなってしまっていたというのだ。だから、彼は本当は自分の実力で仕事ができていたわけではないのに、自分の実力だと「勘違い」をしていたのではないだろうか。

     

    また問題なのは、そういう状況があり、同じ会社の同僚や上司や部下の人も、彼の真の姿を知っていたはずなのに、それについて彼に対して誰もしっかりした指導をしてきていかなったのではないか、ということだ。20年くらい勤務する古株社員だったとのことで、ということは、まわりの社員が彼に対してものを言いにくい状況であったろうことは容易に想像がつく。ということは、彼に唯一ものが言えるトップの社長自身が指導をしっかりする必要があったはずだ。それを怠ったということだ。20年もいて、最後はその会社とトラブルを起こして辞めることになった。

     

    これは実はよくあるパターンで、古くからいる社員を社長が甘やかしてしまうのだ。会社が小さいときからいるので、社長も可愛く思ってしまって、「情」が強くなってしまっている。社長自身がそうなのだから、他の社員が注意できるわけもない。

    そして、タブー視されアンタッチャブルな存在になってしまう。そして、その社員はそれにあぐらをかく。自分は何も悪くないと思っている。それどころか自分は昔からいるから「エライ社員なのだ」、と自負があったりする。社長とも親しいんだぞ、と思っていたりする。

     

    失敗事例にみる古株社員への対応

    私も実は同じ失敗を以前したことがある。古株社員でよく頑張っていてくれたので、結果としてついつい甘やかしてしまった。彼は、ちょっとおかしなところがあって、自分本位の身勝手な考え方をするところがあり、強調性もなく一匹狼的な存在だった。私も忙しいこともあって指導が面倒になり、部下を与えず1人でできる仕事をさせ、結果的に放置したのだった。そして、しばらくして彼は勘違いをしたまま辞めていった。そして、退職後うちに対してあり得ない行動を取った。法に触れることをやった。

     

    私の反省は、放置せずもっと彼と接触し指導をしっかりすべきだった。彼を叱るべきだった。その指導で彼が改心したかどうかはわからない。したかもしれないし、変わらなかったかもしれない。しかし、変わらない場合は早くに辞めていくことになったと思う。ふたつにひとつだ。

    昨年の11月に「困った社員」の対処法について書いたが、違和感のある社員をスルーしてはいけないと思う。たったでも1人の違和感のある社員の存在をゆるせば、それは、この程度の行動をとってもうちの会社は容認する、というまちがったサインをまわりのスタッフに与えることになるのだ。たとえば、営業成績はいいけど、書類提出はいい加減でまわりに迷惑をかけている人を、成績がいいからといって容認していたら、成績がよければ何をしてもいいということになってしまう。また、大きな損害に繋がることもある。

     

    なにか少しでも「ひっかかる」部分があれば、それをスルーしないことだ。「ちょっとした違和感」にフタをしないことだ。それを指導する体制を作らなくてはならない。

    人事・評価制度で良い人材を育成

    では、指導をする仕組みをどうつくるか。結局は、会社の人事制度、評価制度の問題だろう。定期的なマネージャー会議での評価と個人面談が必要だ。

     

    弊社は現在、半年毎のミッションを設定し、それを上司が2ヶ月1回程度は進捗をチェックし、達成を促している。ミッションは、自分の今の実力レベルにちょっと負荷をかけるタスクであったり、新たな業務・仕組みづくり、成長するための努力であったりする。「日常ミッション」、「改善ミッション」、「成長ミッション」と呼ばれているものだ。

     

    マネージャー諸君には「マネジメントミッション」も付加される。そして、「職務要件定義書」に従って単に仕事をこなせばいいというわけではなく、スタッフとのコミュニケーションや協調性を測る「基礎要件」というものもチェックされる。そこで、ひっかかることや違和感がある行動があれば、上司は率直に部下に言わなければならない。

     

    私がマネージャー諸君にいつも言っていることは、「自分のことを棚に上げていい」、そして、「役」として言っているのであって、自分ができていなくてもいい、「指導する役」を演じているのだから、臆せず指導をしてほしい、である。1対1の上司と部下の面談の中で言いにくい場合もあるかもしれない。

     

    しかし、最終的な評価、つまり給与の額は「課長以上全員が参加するマネージャー会議」によって、全員のディスカッションにおいて決まる。よって、その場で、直接の上司がある部下のことを高評価しても、他のマネージャーが、いやひっかかることがあった、その点を改善しなくては給与を上げることは賛成できないと意見して、みながそれを了承したら、給与を上げることはできない。そして、個人面談においてマネージャー会議でこういう意見が出た、と率直にその上司は部下に伝えなくてはならない。そういうことを繰り返してゆく必要がある。

     

    誰しも欠点がある。しかし、自分のことはなかなかわからないものだ。他人に指摘してもらわなければいい年になっても、欠点を抱えたままな「イタイ大人」になってしまう。

    弊社もここのところスタッフを毎月採用していて、勤務5年以内のスタッフが4分の3もいて,2年以内が2分の1という状態。ベテラン社員は少数派で、自動的に「エラく」なってしまっている。そして、ベテラン社員の指導は社長しかできない。

    (筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2017.10.9 掲載)

    • 藤澤 雅義(フジサワ マサヨシ)/Mark藤澤
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。役職呼称を禁止にしている。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

      2001年、不動産会社向けコンサルティング企業であるオーナーズエージェント株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任。
      また、アメリカのIREM®(全米不動産管理協会)発行の国際ライセンスである
      CPM®(米国不動産経営管理士)の日本での普及活動にも尽力。IREM JAPANの創学メンバーである。

      著作に、
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