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第108回 近未来予想

2018.01.15
  • 全国賃貸住宅新聞

    不動産テックで変わる賃貸業界

    タウンマネジメントと働き方改革も課題

    この連載も遂に10年目に入ってしまった。連載開始は2009年(平成21年)の1月であり、その当時の総理大臣はなんと麻生太郎氏だ。民主党政権の前である。そう思うと9年間は長いが、よくもネタが切れずに続いたと思う。私は賃貸管理業の実務をやっていて、その中でいつも今一番自分で興味があることを書いていったので、なんとか続いたのだと思う。全国賃貸住宅新聞の編集部もいつも好きに書かせてくれたのもよかったと思う。

     

    今回は、新春ということもあって、今後の未来予想というか、賃貸管理会社にとって重要なファクターとなるものを考えてみたいと思う。表①に10題上げてみた。

    ▲表1

    1は、「IT化促進、ネットで重説・契約」である。社会実験を終え、IT重説が解禁となり、次いで賃貸借契約も電子署名で済ます先進的な会社が出てきた。ユーザーにとっても便利であり、ネット上なら録画もできるので、安心である。これらのシステムは広がってゆくことだろう。これらに対応できない業者は「時代の変化についていけない業者」というレッテルをユーザーに張られることになる。淘汰されることになるだろう。

     

    2は「VR(仮想現実)内見が拡大、仲介業の意義が問われる」。持ち家の購入などと違って、賃貸は大体3〜4年が平均の居住期間である。実際に見なくても大体わかるからいいよ、という人も多いことだろう。「業者の営業パーソンによる物件案内」というものの意義は薄れていくのではないか。初めての部屋探しの方は案内してほしいと思う方も比較的多いかと思うが、アンケート調査(21C.住環境研究会)では、実質9割の人が一緒に同行してもらわなくてもいい、と答えている。私は8年前の2010年春から「仲介不要論」を説いてきたが、スマホを含めた技術革新が「人」のコストを減らす役割を果たし、ひいては「仲介手数料の無料化」が進むと思う。売買仲介だって基本的には同じ理屈だろう。賃貸においては、「先付け仲介」の意義が問われることになると思う。

     

    3は「IoT住宅の拡大、家電の遠隔操作」である。「IoT(Internet of Things)」つまり「モノのインターネット」と呼ばれるもので、冷蔵庫やエアコン、照明などの一般家電にまでインターネットにつなげて連携し利便性を高めるのだ。賃貸住宅においては、スマホのアプリで外部から遠隔操作をしたり、部屋の鍵のコントロールなどに応用されることが考えられる。

     

    4の「仲介から管理へ、賃貸住宅管理業法の成立?」であるが、「仲介から管理へ」の流れは皆さん、実感しておられることであろう。2020年あたりに「賃貸住宅管理業法」が成立するかもしれない。あくまで「可能性」だが。我々賃貸管理業のものは、宅地建物取引業法の範疇をはるかに超えた業務を行っている。そして、多額の金額を扱い住まいという大事な商品を扱っている。「仲介から管理へ」の流れのなかで、その業務を管理する法律ができてもおかしくない。そして、超大手がこの業界に参入する可能性がある。コンビニなどはその筆頭ではないか。うかうかしていられない。

    5は「民泊新法施行(6月)、管理会社が観光業へ進出」。6月に遂に民泊新法が施行される。稼働が180日以内と定められているが、自治体によって運用が違い、たとえば新宿区では150日以内で金曜昼から月曜昼までの稼働のみとのことらしい。これでは、ちょっと本格運用は難しいところだが、地域によっては、賃貸アパートで運用するより収益が上がるところも出てくるのではないか。我々にとっては、「人に部屋を貸す」という意味においては、3〜4年貸すのも1泊貸すのも同じようなものであり、賃貸管理会社が観光業に進出することは、それほど難しいものではない。いっそ、一棟ごと「簡易宿所」で届けて運用しても面白い。いま、弊社が企画しているのは、簡易宿所で運用するのだが、万一観光客相手での運用が難しくなったときに普通の賃貸アパートとして運用できるように、アパートとしての機能を最初から付けておくのである。これなら安心である。

     

    6は「管理会社の働き方改革、合理化推進」である。この連載でも取り上げている大事なテーマだが、とかくブラックなイメージの強い不動産業界であるのだから、余計に「残業が少ない」、「年間休日を120日以上」、「有給消化率100%」、といったテーマに取り組まないといけないと思う。その理由は大きく2つある。まず、そうしないと良い人材が集まらないということだ。

    二つ目は、しっかり休んでも収益をあげられる生産性の高い会社にしなければいけないということだ。二つ目は、割りと導入部分は簡単で、早く帰っていいんだよ、休みを取っていいんだよ、と経営陣が従業員に明示することだ。すると、皆早く帰るようになる。そして、売上は落ちることもない。ようするに、今までは、なんとなく皆が、上司がいるからだらだらと遅くまで仕事をしていただけなのだ。

    次の展開は、徹底的な合理化である。システムでできることはシステムにやらせる。またスタッフがやっていることで、アウトソーシングできることは徹底的にアウトソーシングする。そして、空いた時間でもっと儲かることをやるのだ。儲かることとは、「空室対策としてのリニューアル提案」、「資産運用設計(相続設計)」、「収益物件の売買仲介」等々、これらは我々のクライアントが望んでいることでもある。

    7は「タウンマネジメント推進、地域活性化がテーマ」であるが、首都圏ではまだピンと来ていないかもしれないが、地方においては既に切実なテーマとなっている。我々はいくら頑張って空室対策を行っても、そのエリア全体が衰退してしまったら意味がないのである。

     

    8の「コンパクトシティ推進、居住誘導地域の設定」もその流れであるが、人口の減るエリアにおいて、インフラを自治体が維持することが不可能になってきているのだ。人が住むエリアを限定して、そこに集中して住んで欲しい、となるのだ。線引きされ見捨てられたエリアは土地の価値が暴落することは明白である。また、我々不動産業者は地域に密着して、そのエリアのために働くことでようやく真の信用、ステイタスを得られるのではないか。誇り高い仕事になると思う。そして、不動産業者こそが、タウンマネジメント推進の中心となるべきプレーヤーだと思う。

     

    9は「シェアビジネスへの進出」。民泊とともに、急拡大の兆しを見せているのが、会議室やイベントスペース、古民家、駐車場といった施設の「時間貸し」のサービスだ。賃貸アパートの一室もお洒落にリノベベーションして個人の料理教室や女子会・ママ友の会場として貸し出すといった活用方法が検討できる。

    10は「民法改正、施行は2020年か?」である。120年ぶりの改正が行われる。連帯保証人の債務の極度額が定められたり、退去リフォーム工事の完全オーナー負担が明示され、また設備故障時の賃料減額が当然に認められるようになったりと、業務への影響が大だ。

    (筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2018.1.15 掲載)

    • 藤澤 雅義(Mark藤澤)
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役社長
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役社長であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役社長を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に豊ノ島・時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

      著作に、
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      ・『「収益改善」&「リニューアル企画」マニュアル』(総合ユニコム)(購入
      ・『200万円からはじめるマンション投資術』(主婦の友社発行)(Amazonで購入

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