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第110回 ナレッジ・マネジメントはITを駆使して

2018.03.11
  • 全国賃貸住宅新聞

    「頑固な職人魂」の気分を持ち合わせてはいないだろうか

    「ナレッジ・マネジメント」とは何か?

    それは『個人のもつ「暗黙知」を「形式知」に変換することにより、知識の共有化、明確化を図り、作業の効率化や新発見を容易にしようとする企業マネジメント上の手法』、と定義されている。「暗黙知」とは、「経験や勘に基づく知識のことで、言葉などで表現が難しいもの」のことであり、たとえば自転車に乗る技術は、何度も練習して、いつのまにか身体で覚えているもので、そのやり方を言葉で表そうとしてもなかなか難しいものだ。そこまで表現が難しいものでなくても、仕事上のコツやノウハウや情報等を会社のスタッフが個人的に持っていて、他のスタッフと共有されていないことはよくあることだ。

     

    それらの知識・情報を可視化、つまりわかりやすく文章化、図表化、数式化する(形式知に変換)ことによって、それらを「明確化」することができ、その結果、皆でそれらを「共有」することができるのだ。そのようにして企業の労働生産性を上げようとすることをナレッジ・マネジメントという。

     

    個々に培ったノウハウや情報は貴重なものであり、一個人の枠内に収めていてはいけない。組織にそれを拡散することが必要だ。以前、サラリーマン時代だが、ある会社に転職したとき、ある古い社員の記憶力がよいものだから、まわりの社員が管理物件のオーナーの情報について逐一口頭で聞いていたのをみて驚いたものだ。なぜ、それを文字化して共有しないのか。その社員が病気かなにかになって会社に来なくなったらどうするのか、と疑問が湧いたことがある。大なり小なりそんなことは今でもあると思う。

     

    弊社では、社歴が長い社員が退社するときは、「特別インタビュー」を実施している。以前は、個人が持っている情報を文字化して記録を残していって欲しい、と頼んでいたのだが、個人に任していたらたいして情報を残していってくれないので、「ヒアリング会」を実施するのだ。インタビューする人と、ノートPCにその内容を打ち込む人と本人との3人で行う。また録音もしておく、そうすると退社する人は、口頭で話すだけなので負担が少なく、たくさんの情報を引き出せることができる。また、自分はこうやって営業成績をあげてきたとか、その人なりのノウハウも話してくれるのだ。

     

    また、昔の職人風でいえば「俺の背中を見て盗め」といった伝統文化の継承法があるが、はたして合理的だろうか。数年前、ホリエモンこと堀江貴文氏が、「寿司職人が10年もかけて修業するのはバカだ。問題はセンスであり、数ヶ月で一人前になってもいい」というような発言をして賛否両論で話題になった。「飯炊き3年、握り8年」とかいう言葉もあるようで、その長い修業の過程を重んじる思想が、寿司業界には存在しているようだ。

     

    業界の重鎮に言わせればおそらく、とんでもない!という発言だろうが、私はホリエモンの意見に賛成だ。大事なことからいきなり教えていけばいいではないか。その大事な「センス」さえも、形式知化できないものだろうか、とさえ思う。我々はこの「頑固な職人魂」のような感覚をどこかで肯定する気分を持ち合わせてはいないだろうか。新人に対して、まずはこの過程を越えてきてもらわなければ、一人前とは認めない、本当のノウハウを教える気にはならない、などと思ってはいないだろうか。

     

    弊社には残念ながら過去に存在していたと思っている。ナレッジ・マネジメントの実施には、そんな精神的な阻害要因もあるのではないか。生産性をあげるためには、新人(若い給与コストの低い人が、と言い換えてもいい)が、ベテランと同じような働きをしてもらったほうがいいではないか。

     

    マニュアルを作成することもナレッジ・マネジメントであるし、スタッフに研修の機会を与えて座学の学習をしてもらうこともそうである。そして、知識・情報を明確化し、皆で共有するという作業をする場合、多くの場合、IT(インフォメーション・テクノロジー/情報技術)の力を借りるのが、はるかに効率がよく、「紙のファイル」などでやっていた場合にくらべて、格段にその効果が表れるようになったのは言うまでもない。

    ▲表① 社内ルール掲示板

    ▲表② 社内用語集

     

    弊社の事例でいうと、グループウエアはサイボウズを長年使っている。スケジュール管理(130名の全社員がお互いの過去・現在・将来の行動を把握できる)が主(因みに、スマホと同期しているので、私はスケジュール手帳を持たない)であるのは当然だが、「社内ルール掲示板(表①)」「社内用語集(表②)」「プロジェクト進捗管理(表③)」「相談デスク(表④)」などをリンクしている。入社した新人に、こまかな社内ルールを手取り足取り教える手間が省け、また弊社独特の言い回しに最初は戸惑うであろうから、「社内用語集」も用意した。

    ▲表③ プロジェクト進捗管理

    ▲表④ 相談デスク

     

    「サブリ」というのは、「サブリーダー」のことで、プロジェクトごとのリーダーが指名する人のことだ。「アープロ」といえば、「アートプロパティ」という仲介業者向け非公開空室一覧のサイトのことだ。プロジェクトメンバー間で利用する「プロジェクト進捗管理」も大変有要だし、「相談デスク」はいままでいろいろな質問を受けたとき、トラブルがあったときの解決法を随時記録に残していっている。なにかあったら、まず過去に同じ事例がないか見ればいいのだ。

     

    ティーチミービズ(表⑤)」も大変便利だ。マニュアル作成が簡単にできて写真を多用できるので、閲覧し易い。

    ▲表⑤ ティーチミービズ

     

    また、CRM(Customer Relationship Management/カスタマー リレーションシップ マネジメント)としては、営業系のスタッフは「セールスフォース」を使用している。顧客管理のデータベースは必須といえる。

     

    他にも、自社開発したソフトやアプリで業務の効率化を図っている。特に、研修素材としては、通称「スタケン」こと、宅建合格アプリが活躍中だ。E-ラーニング素材だが、通勤途中でもスマホで宅建講師の研修を動画で受講でき、試験問題に答えることができるものだ。弊社では男性社員の8割が宅建資格を保有しており、持っていないと恥ずかしいという社風であることも功を奏している。

    さて、「知識・情報の共有」とはコミュニケーションのことでもある。ITを用いたコミュニケーションは革新的だが、人と人との生のコミュニケーションを蔑ろにしてはいけないことも付け加えたい。それは、知識・情報の共有にはその基本として人としての信頼がないとダメだからだ。信頼できない人からの情報には耳を塞いでしまうものだ。

    (筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2018.3.12 掲載)

    • 藤澤 雅義(Mark藤澤)
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役社長
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役社長であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役社長を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に豊ノ島・時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

      著作に、
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