
第124回 少子化とタウンマネジメント
- 全国賃貸住宅新聞
街の活性化に欠かせない雇用の確保
地域に貢献する働きがいのある仕事創出
ここのところ、弊社では稼働率が順調だ。東京23区でいえば、97%後半から98%を維持している。また、この繁忙期では、再募集時に従前の賃料より値上げが出来た物件が35%となった(昨年は15%)。「かぼちゃの馬車事件」、「スルガ銀行不正融資時間」の影響で不動産融資が抑制され新築アパートの供給が減ったせいであろうか。みなさんのエリアはどうだろうか?東京は特別で、まだ現時点ではいいのだが、マクロでみた場合の日本経済は、「人口減問題」「少子化」が重くのしかかっている。当然、我々の業界にも大きく関わってくる。賃貸住宅においては、「若い人」が主なるターゲットであり、年齢でいえば、大体20歳〜34歳のくくりになる。

▲図表①
表①は、20歳〜34歳の人口の推移予想である。厚労省の外郭団体である国立社会保障・人口問題研究所の予測を基に、全国各地の23都市の推移を分析してみた。2040年には2015年ベースで大体どこも20%以上減少する予想となっている。我々のターゲットであるこの年代はまさに子供を産む年齢層でもあるわけで、この世代が20%減るということは、子供も自動的に20%以上減ることになる。そして、このままのペースでいくと、100年後に人口は3分の1の4,000万人程度になってしまうという。
女性が一生のうちに産む子供の数を表す合計特殊出生率は、現在1.43(2017年データ)である。男性は当然産めないから、男女のカップルから2.0人以上(厳密には2.07以上と言われている。女性の早期死亡等もあるから)で、現状維持ということになる。ちなみに東京は1.21、大阪は1.35だ。

▲図表②
表②では、このままでいくと、2110年に人口が4,286万人になるという予想と、合計特殊出生率が2030年に1.8程度、2040年に2.07程度に上昇した場合の予想が表されている。上昇した場合には、9,000万人から1億人の人口が維持される。少子化を抑えるためには、何をしたらいいかも難しい議論で、結婚している夫婦の子供の数(有配偶出生率)は実は、それほど悪くなってはいない。

▲図表③
表③を見てみよう。有配偶出生率は下がっていないのに、合計特殊出生率は下がり続けている。それは有配偶率が下がっているからだ。そもそも結婚する人が少なくなっているから子供が産まれていないのだ。21世紀政策研究所の試算によると、1990年以降未婚率が下がっていなかったとすると、合計特殊出生率は1.80を維持できているはずとのことだ。現在39歳まで独身の率が男性で3分の1、女性で4分の1まで上昇しており、30歳未満では男性は7割、女性で6割だ。この割合は今後も上昇すると言われている。なぜ、結婚しないのだろうか。「草食男子」が遠因などと言われているが、あまり関係がないと思う。いろいろ要因は考えられるが、一番はずばり、収入の安定への不安だろう。非正規雇用者の非婚率も高いとのこと。年収が200万円や300万ではたして家族を養っていけるのか、と誰しもが思うことだろう。収入の格差が非婚化を後押ししている、と言えると思う。
現実の問題として、少子化・人口減はある程度避けられない。そして、将来、全国各地で「維持される街」と「衰退する街」に二極化する。20%若い人が減るというのは、あくまで「平均」であって、すべてのエリアで「平均的に」人口が減るわけではないのだ。よって、我々不動産業者は、自分の働いている地域の「タウンマネジメント」が必要なのだ。自分の街が滅びないように対策しなくてはならない。私は、タウンマネジメントによって、少子化を止める効果があると思っている。すなわち街を維持するということは、雇用が確保されるということである。何か一過性のイベントをやって、1日〜2日盛り上がるのがタウンマネジメントではない。それらのイベントも含めてそのエリアの特徴を活かした「体験」を通して、街のブランド化を進め、人を呼び込む、観光客を呼び込むことで雇用が生まれるのだ。幸い、日本は観光資源に恵まれた国だ。今後インバウンドはますます増えていくことだろう。私はそのうち世界で「日本ブーム」が起きるのではないかと思っている。その特異な精神性もあいまって注目される時が来るような気がしている。
ヨーロッパでは、「ワークライフバランス」の「ライフ」の真の意味は、家族と「地域」に貢献することだと聞いた。単なる「プライベイトを大事する」というような意味ではないとのこと。崇高な理念ではないか。自分の住む「地域に貢献する」というのは、とても身近なことであり、「家族を愛する」の次に来る感情だと思う。誰しも、自分が育った故郷を想う気持ちがあるように。地域活性化の仕事、それは、直接観光に連なる仕事でもいいし、間接的な仕事もあろう、しかし、エリアに貢献する働きがいのある仕事を創出して、やりがいと収入を確保してもらい、結婚を推進することで少子化を抑えることができるのではないか。また、当然女性が職場復帰できる環境を作ることで、共働きを前提とすることができ、結婚後の世帯収入の安定をイメージできることは、結婚に乗り出す若者を増やすことに繋がるのではないか。これは、まだ地方は東京などに比べて遅れているような気がする。
都会に人が集中しているのは、職を求めてのことではないか。しかし、満員電車に1日往復2時間以上も揺られ、競争の激しい都会での生活に疲れている人も多いはずだ。地域と人の役に立つ仕事があり、そのコミュニティで生きがいを感じることができ、愛する人と出会えば、環境豊かな地方で生活するのも悪くないはずだ。自分の街に誇りを持ち、心身ともに健康で、人間らしい情緒豊かな生活ができる街を日本の全国各地に作ってゆくべきだ。
タウンマネジメントが日本を救う道だと思う。
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藤澤 雅義(フジサワ マサヨシ)/Mark藤澤オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役プロフィール:
オーナーズエージェント株式会社 代表取締役であると同時に、
賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役を務める。しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。役職呼称を禁止にしている。あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。2001年、不動産会社向けコンサルティング企業であるオーナーズエージェント株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任。
また、アメリカのIREM®(全米不動産管理協会)発行の国際ライセンスである
CPM®(米国不動産経営管理士)の日本での普及活動にも尽力。IREM JAPANの創学メンバーである。著作に、
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