
第126回 入居者ニーズアンケート調査の解説
- 全国賃貸住宅新聞
ウェブ申し込み、利用したいが半数弱
仲介サービスに期待することは条件交渉が1位
私が幹事をさせていただいている「21C.住環境研究会」の、第8回目の「入居者ニーズアンケート調査」の結果が発表された。この勉強会は、もう25年続いているもので首都圏の賃貸管理会社20社強が年に数回集まって勉強している。3年に1回、「リクルート住まいカンパニー」と共同編集でそれぞれ自社の賃貸管理物件の入居者にアンケートを実施、発行しているものだ。毎回、1,000人以上の入居者に実施しているが、今回は1,237人の入居者に聞いたもので、この手のアンケートでは最大級のものと自負している。全部で37問の質問に答えてもらっているのだが、いくつか印象に残る設問を解説したい。

▲図表①
■ WEB利用での申し込み、契約について
部屋探しにおけるネット環境の影響については業界的には関心が高い事柄だが、「お部屋を決めた後に賃貸借契約を結ぶ際に、WEB上でTV電話などを活用して来店せず契約できるとしたら、利用してみたいか?」という問があった(図1)。申し込みや契約ともにWEBでいいとする人が、44.5%もいたのだ。また、申込みはWEBでいいが、契約は対面で行いたいとする人が、32.3%であった。WEBは活用したくないとする人が23.1%であった。入居者がどこまでWEB申し込みや契約の具体的なイメージができていたかはわからないが、約半分の人はWEBでの契約まで全部OKであり、4人に3人は、WEBを利用する説明や行為を肯定していることになる。「WEBで契約」の内容を問の中では触れなかったので、もっと詳しく「TV電話上で対面で行う」とかにすれば、もっと肯定的な意見が多くなったかもしれない。ちなみに今回のアンケートの回答者の平均年齢は30.7歳であった。ITリテラシーは高い世代といえる。

▲図表②
■ ネットで探した物件でそのまま契約
次に、契約した部屋をどう探したのか、という問だ。これは2012年、2015年、2018年と3回目の設問(図2)である。6年前から変わらず、「ネットで見た物件にそのまま契約した」人が約4割いる。「ネットで見た物件を扱っていた不動産会社の他の物件」に契約した人を入れると、今回は75.7%(新規契約の入居者への設問)である。’12年は67.9%、’15年は72.5%であったので、徐々に増えてきているといえる。4分の3はネット経由で知った物件に契約し、逆にいうとまだ4分の1は、ネット経由でなく契約しているともいえる。それは「情報誌やチラシ等紙媒体を見て」、「不動産屋さんに飛び込んで」、「街を歩いていて募集看板を見て」、「友人の紹介で」等であろう。それらもまだ活きているし、今後なくなることもないのであろう。 因みにこのアンケート調査は、首都圏の「管理会社」の物件に契約した入居者を対象に行っている。よって、ネットに掲載する場合も、仲介専門業者にありがちな「店舗への誘導のための広告」としてではなく、本気でその物件に契約してほしいとして掲載している度合いが高い。

▲図表③
■ 仲介手数料の価値
この連載では、私はなんども「賃貸仲介」というものへの意義を問うているし、「仲介手数料」がはたして今後取得できるものなのかどうか懸念を投げかけているが、今回のアンケートでは「仲介手数料の価値」について聞いている。「仲介手数料を支払っても良いと思うサービスはなにか?(図3)」と聞いてみたのだ。1位は、「条件交渉を管理会社や大家さんと実施してくれる」であった。部屋探しのユーザーは、オーナー側への条件交渉を期待しているのだ。家賃をまけて欲しいとか、賃料発生の日を少し送らせて欲しいとか、エアコンが付いていないが、付けてはくれないか等ということだろう。2位は、「契約などの事務手続きをサポートしてくれる」、3位は「気に入った物件の内見手配をしてくれる」と続き、4位でようやく「自分にあった物件を紹介してくれる」とある。これをどう捉えるかだが、本来はこの4位の「物件紹介」がダントツで1位に来るべきなのではないだろうか?賃貸仲介店とは「お部屋探しのためのお店」ではなかったか。しかし、図1、図2の設問からもわかるように、既にネット上で部屋探しはほぼ終わっているし、ネットで契約できるという層が確実に存在する。これらの潮流が今後、我々のビジネスモデルに大きな変化を起こすことになることは間違いないと思う。
-
藤澤 雅義(フジサワ マサヨシ)/Mark藤澤オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役プロフィール:
オーナーズエージェント株式会社 代表取締役であると同時に、
賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役を務める。しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。役職呼称を禁止にしている。あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。2001年、不動産会社向けコンサルティング企業であるオーナーズエージェント株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任。
また、アメリカのIREM®(全米不動産管理協会)発行の国際ライセンスである
CPM®(米国不動産経営管理士)の日本での普及活動にも尽力。IREM JAPANの創学メンバーである。著作に、
さらに詳しく見る
・『賃貸経営マイスター』(住宅新報社)(Amazonで購入)
・『「収益改善」&「リニューアル企画」マニュアル』(総合ユニコム)(購入)
・『200万円からはじめるマンション投資術』(主婦の友社発行)(Amazonで購入)
導入事例紹介
サービス紹介
-
ベーシックサポート - 賃貸管理事業の土台を築く
オーナーズエージェントが提供する最も基本的な支援サービスです...
-
業務コンサルティング - 賃貸管理の悩みを解決
オーナーズエージェントのコンサルティングは、ビジネスの成功を...
-
プロコール24 - 賃貸管理会社専用コールセンター
入居者からの電話対応が業務を圧迫しているとお気づきですか?<...
-
スターカレッジ - 不動産会社が学ぶeラーニング
スターカレッジは、日本で唯一の『賃貸管理特化型eラーニング教...
-
オンライン宅建講座-スタケン
講座視聴から過去問演習まですべてスマートフォンで完結する「ス...
-
オリジナル会報誌 - オーナー向け会報誌制作代行
月々1万円からはじめる情報発信。オーナーズエージェントの会報...
-
簡単PDFメーカー ピトパ - 報告・提案業務を効率化
ピトパは、スマートフォンだけで完結するクラウド型の報告・提案...
-
空室対策100選 - オーナーへの企画提案支援ハンドブック
いつでも・どこでも・誰であっても空室対策の提案できる環境を。...
-
管理受託パンフレット - サービス内容を見える化
オーナーズエージェントの管理受託パンフレットは、不明瞭になり...
-
管理受託ホームページ - WEBでの見える化戦略
Webからオーナーにアプローチすることを目的としたホームペー...
-
セミナー講師派遣 - 大家さん向け賃貸経営セミナー
実力派の講師陣を派遣し、魅力的な講演はもちろんセミナー運営ま...
-
社員研修運営代行・講師派遣 - 賃貸管理スタッフ育成
オーナーズエージェントの研修は、「明日使えなければ意味がない...