
第144回 2021年新春展望
- 全国賃貸住宅新聞
「コロナ後の働き方、オフィスのあり方、鍵はコミュニケーション」
コロナを機にオフィスを変身させてエンゲージメントを高める
2021年を迎えるにあたり改めて思うことは、昨年2020年という年は明らかに「分岐点」となる年であったと思うのだ。
世間では相変わらずコロナ騒動が続いているが、個人的には日本においてコロナは「騒ぎ過ぎ」であって、まったくナンセンスな1年を過ごしていると思うが、コロナのおかげでいろいろな変化が起きたことは不幸中の幸いだと思っている。
調査によるとほとんどの会社がテレワークを取り敢えず実施したようだが、やってみたら意外に出来てしまったという発見があったようだ。
デジタル環境さえあれば、仕事が出来ることがわかったのだ。賃貸仲介・管理もオペレーションも今後デジタル化され、つまり現場仕事が減り、「紙」がなくなることになる。
オンライン面談で接客し、内見はVR(仮想現実)で行い、電子申込み(PCかスマホ)をして、入居審査が通ればシステムで重説書類〜契約書は自動で作成され、オンラインで契約者に送って説明して契約となる。
いまは重説は「紙」がないとだめだが、政府もデジタル化を加速させるであろうから、早晩法律は改定されることだろう。
営業ですらリアルで行う回数が減り(Zoom面談である程度可能)、事務的な仕事は必要な人材は半分以下になるだろうし、「社員」がやらなくて外注で済ますことも可能だ。
また、オフィスにいる必要も低下するだろう。首都圏等都会では、通勤時間も長く満員電車はストレスなので、在宅勤務を週に2〜3回はあってもいいと答えるスタッフが多い。
そして、今後は、「オフィス」、「自宅」、「サードプレイス」の3箇所で仕事ができる選択肢を与えることになると言われている。
自宅で働くスタッフのために、腰痛などに何にくい良いチェアを支給したりする必要が出るだろう。また、自宅では集中して仕事が出来ないというスタッフのためには、自宅近くの「コーオフィス」等の使用料金を提供したりする必要がある。
11月号の連載でも述べたが、リゾート地で仕事をすることも可能だ。所謂「ワーケーション」である。通勤が減れば都心に住む必要がなくなってくるので、プライベート重視になって郊外に家を求めたり、「仕事場兼セカンドハウス」を確保したりということが既に起きているようだ。
熱海の温泉付き中古マンションがよく売れていると聞く。会社の近くに住むのではなく、海の近くがいいとか、大きな公園の近くとか、ゴルフ好きなら好きなゴルフ場の近くに住むとか、プライベート重視の生活環境を求める層が増えそうだ。
都会から環境の良い郷里に戻るような人も増えるかもしれない。自宅の実需だけでなく地方の不動産業者の方にもいろいろチャンスが増えるのではないか。
会社からの距離の問題ではなくて、子供や介護等があって家を離れられない人で優秀な方もいることだろう。そういう人を採用できるようになる。
また、エリアに関係なく県を跨いで人材を採用することが可能になるのだ。 さて、このようにオフィスにあまり出社しなくなるとどうなるか。
コミュニケーションが減るのだから、人間関係が希薄になり業務に支障をきたすようなことになるのではないか。
人は普段からコミュニケーションを取れていない人とはスムーズに仕事が出来ないのだ。数年前に人気ファンドマネージャーの藤野英人さんという方の話を聞いたことがあるのだが、大変興味深かった。
何人かのファンドマネージャーを組織しているのだが、毎朝一時間必ず集まって「雑談」をさせているというのだ。それから皆が散らばって取材に出かけるというのだ。
仕事以外の美味い店を見つけた話、趣味の話等、雑談をしてコミュニケーションを取っていないと相手を信用できなくなり、情報を共有しなくなるとのこと。

図表グラフにオカムラさんの調査があるが、「今後オフィスはどのような場になるか」というアンケートに対し、1位は「チームワークを高める場」、2位が「ワーカーどうしがコミュニケーションをとるための場」という結果であった。
また、今のオフィスに足らないものはなにか、という問いに「ミーティングスペースが足らない」という他の調査結果もある。
今後、オフィスは「フリーアドレス」にして、職位の上位下位など意識せず机に向かい、「ミーティングスペース」を増やしてブレーンストーミング等のミーティングがすぐできる環境をつくり、また「カフェコーナー」のようなリラックスできる環境で雑談を含めて仕事をして、コミュニケーションを図ってゆくようになる。
フリーアドレスなのだから、その日の気分で違う場所に座って仕事もできる。

図表は、「伝統的な島型オフィス」と「フリーアドレス」の比較だ。弊社はまたフリーアドレスにはしていないが、いまのオフィスに7年前に移ってから「島長席」は廃止している。マネージャーは皆の輪の中にはいっていくことが大事だ。そして、部下との「カベ」を作ってはいけない。
従業員の「エンゲージメント」が重要だということが最近よく言われる。
エンゲージメントとは、簡潔にいうと「つながり」だが、「スタッフが互いに信頼する気持ち」、「会社への思い入れ」、「愛社精神」というようなことである。
「スタッフが所属する会社に対して自発的に持つ貢献意欲」のことであり、それが「会社の成長に積極的に関わっていこうとする」ことにつながっていくと言われている。
エンゲージメントを構成する要素には、「報酬・福利厚生」、「評価」、「理念への共感」、「人間関係」、「成長の機会」等いろいろあるが、「オフィスのあり方や働き方」も大きな要素ではないかと思う。
労働環境が会社への思い入れを熟成するような気がしてならない。そして、エンゲージメントを高める一番の指標はなにかと問われれば、それは「会社の同僚が好きか?信頼できるか?」に集約されるような気がするのである。
スタッフ間のコミュニケーションを深めることで、人の良いところを発見したり、多様性を認めたりしてゆくことができるのだ。
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藤澤 雅義(フジサワ マサヨシ)/Mark藤澤オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役プロフィール:
オーナーズエージェント株式会社 代表取締役であると同時に、
賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役を務める。しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。役職呼称を禁止にしている。あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。2001年、不動産会社向けコンサルティング企業であるオーナーズエージェント株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任。
また、アメリカのIREM®(全米不動産管理協会)発行の国際ライセンスである
CPM®(米国不動産経営管理士)の日本での普及活動にも尽力。IREM JAPANの創学メンバーである。著作に、
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