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第152回 テレワーク対応の賃貸住宅

2021.11.08
  • 全国賃貸住宅新聞

    テレワーク対応の賃貸住宅

    コロナ後の生活で問われる住宅の質

    在宅勤務で集中できる環境を重視で

    日本におけるワクチン接種率(2回目以上が66.3%)は、あっという間にアメリカを抜き、多数の死者をだしたイギリスやイタリアに並んでいる。

     

    そろそろこの「コロナ騒動」も終わりに近づいていると思う。個人的には「日本における」コロナへの対応は「騒ぎ過ぎ」だと思っているし、後世の日本人はこの2020年〜2021年の2年間を検証して、「間違った対応をした時代」と総括することだろう。

     

    しかし、コロナのおかげで良いこともあった。我々ビジネスパーソンに「働き方」に大きな影響を与えたのだ。

     

    「コロナ後」は「コロナ前」には戻らないのではないか。「テレワーク」「出来てしまう」ことがわかったのだ。特に都市圏のビジネスパーソンにとっては長い通勤時間がなくなることは歓迎である。

     

    テレワークとは「自宅」及び「会社以外の場所」での勤務を指すが、「在宅での勤務」がメインだと思う。毎日でなくても三分の一程度、つまり週1〜2日、月に7日程度の在宅勤務が可能なだけでも嬉しい。家族は喜ぶし、からだも楽だ。

     

    通勤時間がそれほど長くない地方のビジネスパーソンにも徐々に浸透するのではないだろうか。

     

    もちろん、テレワークが出来ない、向かない職種もあり、全国平均でいうと現在2〜3割の実施率(日本生産性本部調査)ではある。

    地域によっても差はあるが、総務省も「生産性の向上」「人材確保」「コストの削減」「地域活性化」「多様で柔軟な働き方の確保」等の効果をもたらすと言っている(図)。

     

    現場の肌感覚としては「採用」に良い影響があるのは間違いないだろう。我々の業界でも、重説や契約が電子化されて「紙が無くなる」ことになれば、在宅でも仕事はできる。

     

    仲介営業も「非対面営業」「バーチャル案内」も進むことだろう。

    そして、我々はこれらの時代の変化に対応した賃貸住宅の新築・リニューアル企画において力を発揮できるのではないか。企画提案のチャンスではないかと思う。

     

    「アフターコロナの賃貸住宅の変化の予想」に示したように、まず、1の「テレワークスペースの確保」は今後多く出てくることだろう。

     

    机やカウンターを用意したり、ファミリータイプなら写真1のような半畳ほどの扉付きの小部屋を用意しておくのも良いだろう(この写真は実は当社のオフィス内に最近設けた「集中ブース」である)。

     

    また、モニターが2台置けるスペースを確保したいところだ。「ダブルウインドウ」は業務効率を上げる。

     

    2は「ネット回線」である。最近では「IPv6」という規格も出てきているが、当然ながら速度が重視されるし、通信途中で回線が切れるのはストレスだ。

     

    3は「間取り」である。単身タイプなら、今までのような狭いワンルームではワークスペースの確保が難しいし、第一「自宅に居る時間が多くなる」ことは、5,6でも述べるが、「住宅の質にこだわる」ことに繋がるのではある。

     

    「快適な住まい」を求めるのである。昨今、当社管理エリアの東京では家賃10万円以上の単身タイプの空室が目立つ。

     

    10万円出すなら、職場から離れてもいいからもっと広い部屋が欲しいという人が増えているのだろう。

     

    当社スタッフでもテレワーク中心の人は都外に引っ越したりしている。ファミリータイプでも、小さい部屋でいいので「書斎」が欲しいということになり、部屋数が多いものが好まれるだろう。30平米前後の面積の企画でも、ベッドルームを狭くしてその分ワークスペースを確保する動きが出るだろう。

     

    「ベッドルームはベッドが入ればいい」とするのだ。3畳程度にして、その分リビングが広い1LDKが良いだろう。

     

    4は「備え付けの本棚」である。これまでは読書好きの人でなければ「本棚」は必要でなかったかもしれないが、自宅がプチ「オフィス」になるのなら、ペーパーレスとはいえ、ちょっとした資料の置き場は欲しくなるだろう。

     

    5は、あらためて「防犯・セキュリティ」を問いたい。「自宅に居る時間が多くなる」ことは、昼間の訪問者(宅配業者等)に対応することにもなる。

    夜間にインターフォンが鳴ることも怖いが、昼間だって怖いのではないか。

    モニター付きのインターフォンが欲しいところだ。オートロックや防犯カメラもそうだ。

     

    6は、「環境」である。先に延べたようにテレワーク推進は「住宅の質にこだわる」世帯を増やすことに繋がると思う。

     

    同じ共同住宅の他の入居者の騒音等、振る舞いも気になってくるし、「物件周辺の環境」にも敏感になるだろう。なにせ平日の昼間に「家に居ることが多くなる」のだから、たとえば隣に学校等があれば、ちょっとうるさいなとか、夜間や休日には気にならなかったものが見えてくる。

     

    「部屋からの眺望」もあらためて重視する向きも聞こえてくる。また、「室内エアコンの調子」が悪く効きが弱いとなれば、クレームに繋がるのだ。

     

    最近、NTTのニュースが世間を賑わせた。コロナ後も働き方において「テレワークを基本として、転勤や単身赴任をなくしてゆく」というのだ。あの元「国営」であったNTTがこういうことをいう時代になったのだ。

     

    企業DXの推進が叫ばれているが、「ITの推進によってより良い生活を実現する」というDXの本来の意味を捉えている気がしている。注目したい。

     

    • 藤澤 雅義(フジサワ マサヨシ)/Mark藤澤
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。役職呼称を禁止にしている。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

      2001年、不動産会社向けコンサルティング企業であるオーナーズエージェント株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任。
      また、アメリカのIREM®(全米不動産管理協会)発行の国際ライセンスである
      CPM®(米国不動産経営管理士)の日本での普及活動にも尽力。IREM JAPANの創学メンバーである。

      著作に、
      ・『賃貸経営マイスター』(住宅新報社)(Amazonで購入
      ・『「収益改善」&「リニューアル企画」マニュアル』(総合ユニコム)(購入
      ・『200万円からはじめるマンション投資術』(主婦の友社発行)(Amazonで購入

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