そもそも、社員が疲弊していないか?
「SWOT分析」の前にやることがある
会社組織の状態を測るものさしに、「SWOT(スウォット)分析」というものがある。
10年前のこの連載でも取り上げたことがあるが、「強み/Strength」「弱み/Weakness」「機会/Opportunity」「脅威/Threat」の頭文字の4つの「SWOT」で構成されている。
会社の「内部環境」と、会社を取り巻く「外部環境」の両方を正しく把握し、それぞれに「プラス要因」と「マイナス要因」に分けて分析することで、ビジネス戦略に役立てようとすることである。
そのエリアにおける「外部環境」はプラス面といえるいろいろな「機会(O)」にも恵まれているが、マイナス面である「脅威(T)」にもさらされている。
図表に管理会社のSWOT分析の例をあげてみたが、ビジネスに追い風となることも発生しているが、危機を感じる現象もおきている。
読者の勤める管理会社はどうだろうか。それぞれこの表に書き足してみていただきたい。
内部環境においても、各管理会社でそれぞれ特徴が違うと思うが、冷静に自社の「実力」を「良い点」と「改善点」に分けて分析することが大事だ。
そして、強みを活かした営業戦略を練り、弱みを保管する施策を講じることが必要になってくる。
当社は、これまで全国の賃貸管理会社のSWOT分析を行ってきたが、エリアやビジネスモデルの違いによって、様々な分析がされる。
しかし、多くの管理会社に共通していることがある。
多くの管理会社では、図表の「弱み」で赤字にしている部分、つまり、「労務・人事・教育」の分野において、悩みを抱えていることが多い。
SWOT分析をして、ビジネス戦略を再構築しようとしても、結局、この赤字部分がうまくいっていないと、何をやっても進まないのだ。つまりひとまとめにいうが「社員の士気」が上がっていないのだ。
「社員の士気」が上がっていない組織とは、「社員が疲弊している」組織である。社員が、肉体的にも精神的にも疲れている。
いつまでたっても休みが少なく、残業が多く、給与が上がらなければ、やる気もでないし、良い人材も集まってこないどころか、離職も多いことだろう。
この部分をまず解決していかないと会社はうまくいかないのではないかと思う。
もし、これらの懸念があるのなら、経営トップの方は、まず「人事・労務・教育」の改善から手をつけられてはどうだろう。
中間管理職の方は、この連載記事をコピーして、経営トップにそっと手渡してみたらどうか。
少し前の話だが、ある地方の経営者の方からどうも人材が集まらなくて困っている。どうしたいいか、と相談を受けた。
私は年間休日は何日ですか、と聞いた。
すると100日程度だという。
100日ということは、1年は52週あるので、日曜日が52日+隔週土曜日休みで26日+祭日が16日、これで合計94日。
その他、正月、GW、夏休みのコア休みを追加して100日程度だ。
これでは人は集まりませんよ、完全週休2日にすべきです、その他正月、GW、夏休みは有給で取ってもらうようにしたらどうですか、と提案した。
つまり、「土日で52日✕2+祭日16日=120日が公休日+有給が取れる文化」である。
実質130日程度になるだろうか。その経営者の方はちょっと考えていたが、わかりました、そうしますと即決された。
休みを増やして売上が下がったらどうするんですか、と言われる方もいるが、それにはこう答えている。
社員さんに、「もし売上が下がったら、元の休日日数に戻す」といえばいいんですよ、絶対に売上は落ちませんよ、と。
不思議なもので、勤務時間が短くなると、集中するし、士気も上がる(家族に喜ばれる)から、売上は落ちるどころか上がるのである。
「残業」も同じ理屈だ。毎日、夜9時10時まで会社に残る文化があれば、9時10時まで時間を使うような仕事ぶりになってしまうものだ。
上司から率先して退社すべきだろう。やはり上がいると帰りにくいものだ。
そして、上に上がればこうやって残業しないといけないんだろうと思えば、出世意欲も失われる。
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