戦略の実行の肝は疲弊していない社員
評価・研修制度の整備が重要
前回の連載で、会社のビジネス戦略を立てるために「SWOT分析」がいいと述べた。
内部環境における「強み(S)」と「弱み(W)」、外部環境における「機会(O)」と「脅威(T)」をそれぞれ書き出し、自社の実力を「良い点」と「改善点」にわけて分析し、強みを活かした営業戦略を練り、弱みを補完する施策を講じることができる。
自社を冷静に見ることができるという点で優れた手法なのだが、戦略がいくら良くても「実行」されなければ意味がない。この「実行」は、とても重要な概念で、かつ現実的には実行されないことが多いのも事実。
ラリー・ボシディ著の「経営は実行」によれば、戦略が「実行」されない理由としては、
①進捗管理をせずフォローをしていない
②経営者が実務に疎い
③リーダーが組織に情熱を持っていない
④人材の評価と報酬と採用に問題がある
⑤リーダーが現場にいっていない
等々いろいろ述べられている。とても良い本で納得する内容だ。
しかし、組織は「人」でもっていると考えるならば、リーダーはこれらの①〜⑤の姿勢を正し、それこそ実行するためには、まず社員を「やる気」にしなくてはいけないのではないかと思う。
社員が疲弊していたら、いくら旗を振っても何も動かないではないか。最近、このことをつくづく思う。
前回の連載で、図表2の1と2の「年間休日」と「残業」について述べた。
社員は休みをもっと欲しいとはなかなか経営者に言えないものだ。
本音は汲み取るべきだと思う。3の「給与のベースアップ」だが、うちも偉そうなことは言えないが、デイビッド・アトキンソン氏に2019年にお会いしたとき、「年間で3%程度のベースアップもできないような経営者は無能です」と言われたことを肝に命じたい。
また、4の「困った人」対策。これは2016年の11月の連載でも書いたが、書きにくいことだが、「困った人」というのは少なからず存在する。
100%悪い人というのは存在しないから、誰でもいったん仲間になってしまえば、それなりに評価されたりするのだが、何度同じことを注意しても改まらない人とは、一緒に仕事をしてゆくのは厳しいものがある。
また、会社より自分のステイタスや利益を優先するような人も思い切って排除すべきだ。法的には手順を踏まないと難しいが、組織にマイナスの影響を与える人がいることで、「良い人」までおかしくなってしまう。
5の「評価制度」。自分は正当に評価されていないと感じる社員が多ければ士気は低下する。
完璧な評価制度などないが、よりフェアであって、納得感があるものにしなくてはいけない。
それには、部署ごとの職務内容とその実行に必要なスキルと知識を、なるだけ具体的に可視化(文字化)するのだ。そして、各スタッフに対して項目ごとに点数を付けていけばいい。
点数は複数人で付ける。また、誰でも「つもりの自分(自己認識)」と「はた目の自分(他者評価)」のギャップがあるものだが、このギャップを埋めるような評価制度であれば、素晴らしい。
6の「社内イベントを重視」だが、私は仕事は楽しくなければいけないと思っている。そして、仲間とのコミュニケーションを通じて、会社への帰属意識も高まるものだ。
飲み会でもなんでもいいから、仕事以外のイベントを「真剣に」やりたい。7の「研修制度」だが、勉強しない社会人は不要であるし、またスタッフは「教えてもらうこと」を望んでいるそして、それは勤務時間内でなければならない。
8の「将来像」だが、大きくふたつある。プレーヤーとして立派な人になるのか、マネージャーとして貢献するのか、である。
不動産コンサルタントとして、活躍するのもよし、組織をうまくまとめる手腕によって存在意義を持つのか、どちらでもまたその両方でもいい。
9の「BPO」であるが、すべての業務を社員にさせるのは無理がある。ストレスもたまる。
コンピュターシステムによって、もしくは外部ベンダーに任せたりして、「選択と集中」を明確にすべきだ。管理会社にとって集中すべきは「空室対策」と「管理受託」であることは自明である。
10の「問題物件を離す」ことだが、2019年12月の連載でも扱ったが、信頼関係を気づけない不動産オーナーとはお別れをしてもいいと思う。その物件があることが社員のストレスなのだ。
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