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第171回 「マルチタスクのこなし方」

2023.09.11
  • 全国賃貸住宅新聞

    業務設計が仕事の8割

    段取り決めに5分確保

    前回の連載で、逗子の分譲マンションの敷地にある斜面が崩れて、下の歩道を歩いていた女子高校生が60トンの土砂に巻き込まれて死亡した事故について述べた。

     

    管理会社の社員が、事故の前日にマンションの管理人から「斜面に数メートルのヒビがある」と報告を受けたにもかかわらず、斜面が崩れた翌日の朝8時までに適切な対応を怠ったということで、業務上過失致死の疑いで書類送検されたものだ。

     

    遺族はマンションの住民と管理会社に総額1億円以上の損害賠償を求めている。

     

    管理会社のスタッフに実際にどこまで「予見の可能性」があったか、また「結果回避の可能性」があったかが焦点となるだろうが、これでもし起訴されたとしたらかなり厳しい判断と言わざるを得ない。

     

    検察の見解に注目したい。どちらにせよ今後は、管理会社のスタッフのリスクに対する「想像力」「処理能力」をより鍛えないといけないということになる。

     

    しかしながら、我々の業務の現場においては、「想像力」以前に「担当者が多忙で着手に遅れる、または忘れてしまう」、ということはよく起きているのではないか。

     

    クライアントから返事がまだない、あの件はどうなっている、とか怒られてはいないだろうか。賃貸経営管理会社では案件や細かい約束が多く、マルチタスクを管理する能力が求められる。

     

     

    図表は「マルチタスクをこなすために」日頃気をつけなければいけない習慣だ。

     

    1は「タスクは必ずアクションリストにメモをする」だ。

    とにかく「すべてメモをする」ことだ。

    「誰それに電話連絡をする」、というタスクが発生した直後に、自分の携帯電話が鳴って電話に出て一通りの会話をすると、もうタスクを忘れてしまうことがある。

    また直後に同僚に話しかけられても忘れてしまう。そういうことは誰でもあることだ。

    よって、とにかくすぐにメモをする習慣をつけよう。自分の携帯を取る前に紙片に殴り書きでもいいからとにかくメモをしたい。

    また、人は3つ以上のことは同時には覚えられないものだ。自分の記憶力を過信しないことだ。

     

    次は、2「アクションリストは同じもので統一する」

    まず、手帳などのアナログでいくのか、スマホのアプリ(マイクロソフトTODO等)などのデジタルを使うのかに分かれる。

    これは個人で好みが分かれるところだろう。手帳に手書きは、字の大きさや強さによってその場のノリ、強弱や重要度が表現できるところがいいし、紙の手帳はパッと開けるところがいい。

    スマホアプリは、字が綺麗で読み易いし、スマホは誰でもいつでも手に持っているので便利だ。

    タスクの順番を変えることも分類もし易いし、アナログのように紙がなくなることもない。

    大事なことは、あちこちメモを分散させないことだ。それでも分散してしまうことがあるが、そのときは、ひとつに統一する作業を定期的にしなくてはいけない。

     

    そして、3「アクションリストは毎日見返す」ことだ。

    私なども、思いついたアイデアをアクションリストに入れているのもあって、いつも150くらいのタスクがある。

    当然、全部をこなすことは出来なくて、優先順位をつけているが、見返さないとつい忘れてしまう。

    今日やらなくてはいけないことを思い出すためにも毎日見返すことだ。

     

    4「簡単なタスクはその場で処理をする」は、タスクを後回しにするとやはり忘れてしまう可能性が高まるし、タスクがどんどんたまってしまうのだ。重いタスクはすぐには対応できないが、簡単なものはその場で「打ち返そう」

     

    5の「タスク発生時に『業務設計』を5分で行う」は、4と違ってちょっと重い仕事は、まずタスクが発生したその時に、まず5分だけでいいので、このタスクをこなすのは何をしたらいいのか考えることだ。

    10日後にクライアントにある資料を作って説明するというタスクが発生したとする。

    その資料作成のためには、たとえば、この件について詳しい誰かに質問とか取材としたほうがいいなとか、あのデータを貰ったほうがいいなとか、タスク達成のための「段取り」をするのだ。

    「見通しをたてる」とも言える。何も考えずに、10日の締切直前になって慌てて考え始めても、時間が足らないとか、またどういう依頼だったかを忘れてしまうというようなことになってしまう。

    そうならないために、まず5分、そのタスクのことを集中して考える。

    業務設計が決まったらあとは「作業」をするだけだ。

    「段取り8分」という言葉があるが、仕事は「業務設計」ができればほぼ8割方終わったようなものだということだ。

    アパート・マンションの建物だって「設計図」がなければ、絶対に完成はしない。同じようにあらゆる仕事には「設計図」が必要だ。

     

    6の「『ボールは』はどちらにある?」は、今、クライアントからの返事待ちなのか、それともこちらが返事をしなくてはいけない状態なのかをしっかり把握しよう。意外にこれを間違えるものだ。

    相手の返事待ちだと思っていたら、クライアントがずっと返事を待っていて遅いと感じているということはよくあるものだ。

     

    7の「メールやLINEの返事はとりあえず一旦すぐに返す」は、簡単な返事ならすぐ返せるのだが、ちょっと重い質問を受けた場合など、準備や調査をしなくてはいけないので、もっと考えてから返事をしようとして後回しにして、そのまま忘れてしまうことがある。

    また、ぐずぐずしていて時間が経ってしまい、余計に返事しづらくなってしまったりもする。

    とりあえずメールやLINEを私は見ました、確認しています、という意思表示をすぐすればクライアントも「見てくれてはいる」、と安心するのだ。よって、「メール拝見しました、確認してお返事します」と「とりあえず」だそう。

    そして、そのタスクを必ず「アクションリストに入れる」ことだ。

     

    • 藤澤 雅義(フジサワ マサヨシ)/Mark藤澤
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。役職呼称を禁止にしている。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

      2001年、不動産会社向けコンサルティング企業であるオーナーズエージェント株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任。
      また、アメリカのIREM®(全米不動産管理協会)発行の国際ライセンスである
      CPM®(米国不動産経営管理士)の日本での普及活動にも尽力。IREM JAPANの創学メンバーである。

      著作に、
      ・『賃貸経営マイスター』(住宅新報社)(Amazonで購入
      ・『「収益改善」&「リニューアル企画」マニュアル』(総合ユニコム)(購入
      ・『200万円からはじめるマンション投資術』(主婦の友社発行)(Amazonで購入

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