スタケンブログをお読みになっているみなさん、こんにちは。
前回、民法改正の前編と称して民法改正の概要と 宅建士試験 に影響のある範囲から「錯誤」と「消滅時効」についてお伝えしました。
再三のお伝えとなりますが、民法は宅建士試験で出題される問題のうち約3割を占めることから、民法改正をきちんと抑えることができているかどうかが合否を分けるカギといっても過言ではありません。
今回は前回に続き、宅建試験に影響のある出題分野についてまとめているので、さっそく見ていきましょう。
[stken1]
この記事で学べること
2020年度民法改正解説
前回は「錯誤」と「消滅時効」についてお伝えしましたが、ここでお伝えするのは以下の4つです。
- 債権譲渡
- 相続
- 賃貸借契約
- 契約不適合責任
債権譲渡
そもそも「債権」という単語自体、あまり聞いたことがないという方も多いですよね。
債権とは、ある人が他人に対して一定の給付を要求できる権利のことを指します。
たとえば、AさんがBさんに対して20万円の現金を貸したとしましょう。
すると、Aさんは当然Bさんに対して貸した20万円を返してくれと求める権利、すなわち「債権」を持つことになります。
反対に、BさんはAさんに20万円を返す義務を負うことになり、Bさんは「債務」を有していることになりますね。
そして、AさんがBさんに対して持つ債権(20万円を請求する権利)を第三者であるCさんに譲渡することを「債権譲渡」と呼びます。
現行法では、この債権譲渡を「禁止する特約」を設けることができたのですが、改正後は債権者の債務者の間に譲渡禁止特約があった場合でも債権を譲渡できるようになりました。
ただし、債権を譲り受けた人(Cさん)が悪意又は重過失である場合には、債務者(Bさん)はCさんに対して弁済を拒絶することができるほか、Aさんに対して弁済することを主張することができます。
譲渡禁止特約自体が無効となるわけではない点に注意しましょう。
相続
相続で抑えておきたいポイントは次の3つです。
- 配偶者居住権遺言の第三者への対抗要件
- 遺留分
- 配偶者居住権
配偶者居住権とは、「相続が発生する前から配偶者が住んでいた建物は、配偶者がその建物の権利を有していなかったとしても、ずっと住んでいていいよ!」といった権利のことを指します。
現行法では制度化されていなかったのですが、改正によって制度化されたことで上記の権利を終身に渡って得ることができるようになりました。
遺言の第三者への対抗要件
現行法では、遺言さえあれば第三者に対して建物の所有権を主張できるとされていましたが、改正後は遺言に加えて登記を備えることが必要となりました。
遺留分
遺留分とは、一定の範囲の法定相続人に認められる、必要最低限の財産取得分のことを指します。
改正によって、遺留分における遺留分減殺請求が金銭によって解決することができるようになりました。
賃貸借契約
賃貸借契約における主な改正点は、次の2つです。
- 賃貸借における目的物の返還義務
- 賃貸借の存続期間の延長
賃貸借における目的物の返還義務
現行民法の規定をベースに改正民法601条では
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
と、賃貸借の終了によって賃借人の目的物返還義務が生じる旨が明記されることとなりました。
賃貸借契約が終了すれば当然に当該賃貸物を賃貸人に返す必要があるものの、現行法ではきちんと明文化されておらず、改正によって明記されています。
あくまで判例を条文化したに過ぎず、内容自体はなにも変わっていないので安心してくださいね。
賃貸借の存続期間の延長
現行法においては、建物の所有を目的としない土地の賃貸借については借地借家法が適用されませんでした。
賃貸借の存続期間は20年とされ、それ以上使用する場合には都度賃貸借契約を更新する必要があったのですが、今回の改正で賃貸借の上限期間が20年から50年に延長されることに。
この改正によって、建物の所有を目的としない賃貸借であっても50年を上限とする賃貸借契約を締結することができるようになりました。
実際の過去問で確認しよう
平成20年 13問
Aが所有している甲土地を平置きの駐車場用地として利用しようとするBに貸す場合と、一時使用目的ではなく建物所有目的を有するCに貸す場合とに関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 AB間の土地賃貸借契約の期間は、AB間で60年と合意すればそのとおり有効であるのに対して、AC間の土地賃貸借契約の期間は、50年が上限である。
2019年まで:誤り
2020年から:正しい
契約不適合責任
この度の民法改正でこれまで「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものが、「契約不適合責任」という名称に変わりました。
契約不適合責任とは主に売買契約において、商品に不良品があったり別の品物であった場合など、なんらかのミスが生じたときに売主が買主に対して負う責任のことを指します。
現行法では特定物売買の場合には「瑕疵担保責任」、不特定物売買の場合には「債務不履行責任」と区別が設けられていました。
しかし、改正によって特定物売買か否かで判断することをやめ、一律「契約不適合責任」という呼称を用いることにしたのです。
また、現行法において買主は「解除」と「損害賠償」といった手だてを講じることができたのですが、改正後は「追完請求」と「代金減額請求」もできることになりました。
まとめ
今回は後編と称して、宅建士の試験範囲で民法改正の影響を受ける分野についてご紹介しました。
宅建士を勉強するうえで条文や判例を一言一句覚える必要はありませんが、改正前と改正後で効力の及ぶ範囲が異なっていたり、名称が変わっていたりする場合には注意が必要です。
特に、瑕疵担保責任でいままで勉強をしてきた方は契約不適合責任という名称に変わったことに加え、買主が講じることのできる手段も変わっていますので間違えないようにしてくださいね。
過去問を解きつつ、知識を定着させていくように心がけましょう。
[stken2]