宅建業法

宅建業免許と宅地建物取引士の「欠格事由」覚え方

投稿日:2022年5月20日 更新日:

「宅建業の欠落要件は暗記量が多くて覚えられない…」
「覚えるコツやポイントはある?」

宅建試験の中でも「 宅建士の欠格要件」は受験者にとって重要な項目ですが、記載事項が複雑で暗記量も増えるため、苦手とする方も多いでしょう。

しかし、欠格要件は試験だけではなく有資格者として活動するうえでも直接的に関わりのある内容です。

本記事では宅建士の欠格要件について、宅建業免許と取引士を比較しながら取り上げていきます。

本記事のまとめ
  • 宅建業免許・宅地建物取引士証の欠落要件について一目でわかる
  • 宅建業免許は宅建業者としてふさわしくないと判断された場合には取得できない
  • 宅地建物取引士証は不正手段で取得した場合には剥奪される
  • 宅建を取得できていない人は、まず宅建試験に合格するところから始めよう
  • 宅建士の資格を最短で取得するなら、勉強のモチベーション維持に特化したスタケンの利用がおすすめ
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宅建業免許の欠格要件について

宅建業免許は誰でも手に入れられるわけではなく、宅建業者としてふさわしくないと見なされた場合には宅建業の免許を得ることができません

欠格事由に該当する条件は宅建業法で定められているのですが、かなりのボリュームがあるため、ここではざっくりとグループ分けをしています。

具体的には、次のようなケースが挙げられます。

  1. 破産手続き開始の決定を受けて復権を得ていない場合
  2. 心身の故障によって宅建業を適正に営むことができない場合
  3. 一定の刑罰の対象となった場合
  4. なんらかの理由で免許取り消しの処分を受けた場合
  5. 役員等が欠格事由に該当する場合
  6. 暴力団員等の極悪人に該当する場合
  7. 未成年者の法定代理人が欠格事由に該当している場合
  8. 事務所に決められた人数の宅建士がいない場合
  9. 申請の虚偽がある場合

一つずつ見ていきましょう。

①破産手続き開始の決定を受けて復権を得ていない場合

破産手続きが開始され、復権を得ていない場合には「破産管財人」によって財産が管理・制限されることになります。

そのため、宅建業を営むだけの財力があるとはみなされず、免許を得ることはできません。

なお、復権とは破産宣告によって失った権利や制限された権利を取り戻すことを指します。

復権を得た場合は直ちに免許を受けることができます。

具体的には、このような問題が出題されます。

問題:破産手続開始の決定を受けた個人Aは、復権を得てから5年を経過しなければ、免許を受けることができない。(2009年問27ア)

答え:誤り

簡単ですね!しかしここから似たような問題が多くなりわからなくなってきます。一つずつ丁寧に覚えていきましょう。

②心身の故障によって宅建業を適正に営むことができない場合

心身の故障により宅建業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるものに該当すると免許を得ることができません。

従来は成年後見人や被保佐人の「制限行為能力者」と規定されていましたが、改正されました。

よって制限行為能力者でも国土交通省令が定めた基準に当てはまっていなければ免許を得ることができます。

逆に制限行為能力者ではなくても免許が得られない場合がありますので注意しましょう。

③一定の刑罰の対象となった場合

刑罰は科料→拘留→罰金→禁固→懲役→の順に重くなります。宅建では受けた刑罰の重さによって、免許を得られるか得られないか扱いが決まっています。

科料 犯罪名に関わらず、免許を得ることができる
拘留 犯罪名に関わらず、免許を得ることができる
罰金 通常の犯罪(過失傷害や道路交通法違反など):免許を取ることができる

宅建業法違反・背任・暴力系の犯罪:刑執行後

禁固 犯罪に関わらず、刑執行後5年間は免許を取ることができない
懲役 犯罪に関わらず、刑執行後5年間は免許を取ることができない

注目すべきところは罰金です。罰金は犯罪の内容によって免許を得ることができるかできないか変わります。

主に罰金の対象として出題される罪は下記です。

  • 宅建業法違反
  • 傷害罪
  • 背任罪

よく引っ掛け問題として出題されるのが過失傷害罪です。過失傷害罪は免許を得ることができない欠格事由の罪ではありません。なぜなら過失はわざと傷害を起こしたからではないからです。よく出題されるので覚えましょう。

科料も罰金もお金を払うことなのですが、2つの差は金額の差です。科料は1000円以上1万円未満、罰金は1万円以上です。ここまで細かくは出ませんが頭の片隅に置いておくと良いでしょう。

次に注意すべきところは禁固と懲役です。禁固以上の刑に処されると刑執行後5年間は免許を得ることができません。刑執行後というところがポイントです。有罪判決を受けても、控訴・上告中は免許をもらうことができます

控訴・上告後、無罪や他免許を得られることができない罪ではなくなる可能性があるからです。

また、判決に執行猶予がついている場合には、執行猶予期間中は免許を受けられないことも覚えておきましょう。執行猶予期間が満了すれば直ちに免許を受けることができます。

④なんらかの理由で免許取り消しの処分を受けた場合

ここは少し複雑なので、繰り返し学習して理解を深めるようにしてください。

まず、以下に該当したために免許を取り消された場合には、取り消しから5年間は免許を得ることができません。

  • 不正な手段で免許を取得した
  • 業務停止処分中に違反を重ねた
  • 業務停止処分に至った事由がとくにひどい場合

なお、法人が上記の理由で免許取り消し処分を受けた場合、聴聞(事情聴取のこと)の公示日前60日以内にその業者の役員だった場合は、免許取り消しから5年間は免許を得ることができません。

ここでいう「役員」には取締役や相談役も含まれ(常勤、非常勤は問わず)、政令で定める使用人(お店の店長など)や使用人(店で働く従業員)、監査役は含まれません

そして、聴聞の期日や場所が公示されたあと、処分が下される前に自ら廃業の届け出をした元業者についても、届出を出した日から5年間は免許を得ることができません

逃げ切ろうと慌てて廃業をしても、意味がないよ!ということになりますね。

また、ここで該当するのは「免許の取り消し処分」の聴聞であり、「業務停止処分」の聴聞の場合には5年間も待つ必要はありません。

なお、聴聞前に廃業の届け出を出したケースに加え、相当な理由なく合併消滅したケースにおいても、公示日前60日以内にその業者の役員だった者は、免許取り消しから5年間は免許を得ることができないことも併せて押さえておきましょう。

このような問題が出題されます。

問題:宅地建物取引業者Cは、業務停止処分の聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日又は当該処分をしないことを決定する日までの間に、相当の理由なく廃業の届けを行った。この場合、Cは、当該届出の日から5年を経過しなければ、免許を受けることができない。(2009年問27ウ)

答え:誤り

業務停止処分による場合は受けることができます!できないのは免許の取消処分による場合です。

問題:A社は、不正の手段により免許を取得したことによる免許の取消処分に係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分がなされるまでの間に、合併により消滅下が、合併に相当の理由がなかった。この場合においては、当該公示日の50日前にA社の取締役を退任したBは、当該消滅の日から5年を経過しなければ、免許を受けることができない。(2015年問27-1)

答え:正しい

「免許の取消処分」「公示日の60日前」「取締役or役員」がキーワードです。

他にもこのような問題が出題されます。

問題:C社の政令で定める使用人Dは、刑法第234条(威力業務妨害)の罪により、懲役1年、刑の全部の執行猶予2年の刑に処せられたあと、C社を退任し、新たにE社の精霊で定める使用人に就任した。この場合においてE社が免許を申請しても、Dの執行猶予が満了していなければ、E社は免許を受けることができない。(2015年問27-2)

答え:正しい

これを許していたら、上のように「同じ会社(または合併した会社)で免許が受けられないなら、新しい会社を設立しよう!」「違う会社で働けばいい!」という抜け道ができてしまいます。この抜け道を塞ぐためにこのような内容になっています。

罪を償っていない(執行猶予期間を満了していない)人を雇うこともダメということです。

⑤未成年者の法定代理人が欠格事由に該当している場合

宅建業を営むにあたり、成年者と同一の行為能力を有しない未成年者は、法定代理人が欠格事由に該当している場合において免許を得ることができません。

なお、婚姻等により成年者と同一の行為能力を有するとみなされた未成年者は成年者と扱うため、法定代理人が欠格事由に該当しているかどうかは関係ないので注意してください。

このような問題が出題されます。

問題:宅地建物取引業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有する未成年者Dは、その法定代理人が禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わった日から5年を経過しなければ、免許を受けることができない。(2009年問27エ)

答え:誤り

成年者と同一の行為能力を有する未成年者には法定代理人の欠格事由は影響しません。

問題:営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であるFの法定代理人であるGが、刑法第247条(背任)の罪により罰金の刑に処せられていた場合、その刑の執行が終わった日から5年を経過していなければ、Fは免許を受けることができない。(2015年問27-3)

答え:正しい

簡単ですね!成年者と同一の行為能力を有しない未成年者には影響します。

よって免許を得られない罪の背任罪により罰金の刑に処せられた場合は刑の執行が終わってから5年経つまで免許を受けることができません。

⑥役員等が欠格事由に該当する場合

ここについては、基本的に欠格者のいる会社は免許を得ることができないと覚えておきましょう。役員はもちろん、政令で定める使用人(お店の支店長など)も免許を得ることができません。

なお、使用人(従業員)は欠格事由せず、免許を得ることができます

ここの問題は免許を得られるor得られない刑罰の種類の問題とあわせて出題されます。

問題:免許を受けようとするA社に、刑法第204条(傷害)の罪により懲役1年(刑の全部の執行猶予2年)の刑に処せられ、その執行猶予期間を満了した者が役員として在籍している場合、その満了の日から5年を経過していなくとも、A社は免許を受けることができる。

答え:正しい

執行猶予期間を満了していれば免許を受けることができます。執行猶予が出てきたら、「期間が満了ならOK」と覚えましょう。

問題:免許を受けようとするD社に、刑法第209条(過失傷害)の罪により科料の刑に処せられた者が非常勤役員として在籍している場合、その刑の執行が終わってから5年を経過していなければ、D社は免許を受けることができない。

答え:誤り

科料は免許を受けることが可能です。たとえこれが罰金であっても免許を受けることができます。

過失傷害は免許を受けられない罪に当たらないからです。このようにどこがどのように間違っているかを確認することが大切になります。

⑦暴力団員等の極悪人に該当する場合

ここは条文をまず確認しましょう。

6.この法律若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したことにより、又は刑法第204条(傷害罪)、第206条(障害現場助成罪)、第208条(暴行罪)、第208条の2(凶器準備集合および結集罪)、第222条(脅迫罪)若しくは第247条(背任罪)の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

7.暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者

8.免許の申請前5年以内に宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をした者

9.宅地建物取引業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者

つまり、以下の3つの場合には免許を得ることができません。

  • 暴力団員または暴力団員でなくなってから5年間を経過していない場合
  • 免許の申請前5年以内に宅建業において不正や著しく不当な行為をした場合
  • 宅建業について、不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな場合

このような問題が出題されます。

問題:H社の取締役Iが、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員に該当することが判明し、宅地建物取引業法第66条第1項第3号の規定に該当することにより、H社の免許は取り消された。その後、Iは退社したが、当該取消の日から5年を経過しなければ、H社は免許を受けることができない。(2015年問27-4)

答え:誤り

該当者が辞めていれば業者は免許を受けることができます。

5年経過しないと免許が受けられないのは、以下の3点ののみです。

  • 不正な手段で免許を取得した
  • 業務停止処分に違反
  • 業務停止処分に至った事由が特にひどい場合

⑧事務所に決められた人数の宅建士がいない場合

宅建業法では事務所ごとに5人に1人以上の割合で成年である専任の宅建士を置く必要があります。

この人数を満たしていない場合は免許を得ることができません。

⑨申請の虚偽がある場合

免許申請に虚偽があったり、重大な点の記載が欠けていると免許を得ることができません。

宅地建物取引士証の欠格要件

さて、宅建業の免許における欠格要件を見てきましたが、宅地建物取引士証の欠格要件もほとんど同じことが規定されています。

そのため、ここでは宅建業免許の欠格事由と異なる部分を取り上げてみました。

まず、両者に共通する未成年の欠格事由は次の通りです。

【1】
1.不正手段で登録した者
2.不正手段で取引士証の交付を受けたもの
3.名義貸し、取引士証交付前の重説
4.事務禁止処分に違反
上記4点に該当し、登録消除の処分の聴聞の期日および場所が公示された日からその処分をする日またはその処分をしないことを決定する日までの間に登録消除の申請をしたもの(相当の理由がある者を除く)でその登録が消除された日から5年を経過しないもの【2】事務禁止処分を受け、その禁止期間中に、本人の申請によりその登録が消除され、まだその期間が満了しないもの

これに加え、宅建業免許では未成年者の欠格事由において、以下のように定められていました。

  1. 成年者と同一の行為能力を有する未成年者:免許を得ることができる
  2. 成年者と同一の行為能力を有しない未成年者:法定代理人ならびに未成年者本人が欠格事由に該当しない場合には免許を得ることができる

対する取引士証については上記「1」の場合だけ登録することが認められており、「2」に該当する場合はそもそも登録することができません

なかなかややこしいですが、試験に出ることがあるのでしっかりと覚えておいてください。

まとめ

本記事では、宅建士免許と宅地建物取引士証の欠格要件を比較し、お伝えしました。

いずれも大きな違いはありませんが試験によく出るため、欠格要件について正確に理解し、両者の微妙な違いについても押さえておきましょう。

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