「賃貸借と使用貸借の違いをサクッと理解したい」
「分かりやすい図解説明で難しい部分も押さえておきたい」
宅建受験生であれば、上記のように考えていることでしょう。
賃貸借および使用貸借はいずれも難しい分野ではありませんが、しっかりと理解しておかないと後々学習する「借地借家法」でつまずく恐れがあります。
今回は、「賃貸借」「使用貸借」を主なテーマとして解説します。
- 賃貸借契約とは、賃貸人が賃借人に目的物を貸し、賃借人から対価を受け取る契約
- 賃貸借契約の成立、解除・更新、譲渡・転貸を徹底理解できる
- 理解が難しい内容をわかりやすい図解説明している
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この記事で学べること
賃貸借契約とは
賃貸借契約とは賃貸人(貸す人)が賃借人(借りる人)に目的物を使用収益させ、賃借人から対価(お金など)を支払う契約をいいます。
なお、契約が満了した暁には目的物を賃貸人へ返却することを約束しなければなりません。
マンションを借りることはもちろん、レンタカーやDVDなどのレンタルサービスも賃貸借契約に該当します。
賃貸人はお金をもらって目的物を貸すことから、きちんとした目的物を貸す義務を負うと共に、目的物が壊れたときには修繕義務を負うことになります。
賃貸借契約の成立と存続期間
賃貸借契約は諾成契約であることから、当事者の合意のみによって成立します。そのため、建物の引き渡し等は契約成立の条件とはなりません。
賃貸借の存続期間は最長で50年と定められており、契約でそれより長い期間を定めたとしても50年が限度となります。
なお、期間の定めのない賃貸借契約も有効です。
【改正民法】
(賃貸借の存続期間)
第六百四条 賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。 2 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五十年を超えることができない。
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賃貸借の解除と更新
存続期間を定めて賃貸借契約を締結した場合、その期間の満了をもって賃貸借は終了します。
また、存続期間が特に定められていない場合には、各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができます。解約を申し入れた後、土地の賃貸借については1年、建物の賃貸借については3カ月、動産の賃貸借については1日の猶予期間を経て賃貸借が終了することもあわせて覚えておきましょう。
【改正民法】
(短期賃貸借の更新) 第六百三条 前条に定める期間は、更新することができる。ただし、その期間満了前、土地については一年以内、建物については三箇月以内、動産については一箇月以内に、その更新をしなければならない。
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一方で、存続期間が定められている場合にはその期間の満了をもって賃貸借が終了します。
とはいえ、存続期間が定められていたとしても期間満了の際に、当事者間で話し合いをしたうえで賃貸借契約を更新することが認められています。
また、当事者間で更新の約束がなかったものの、存続期間満了後に賃借人が目的物の使用や収益を継続しており、賃貸人がそれを知りながらも異議を申し立てなかった場合には、前の賃貸借契約と同条件で契約を更新したものとみなされます。この場合において、存続期間は定めのないものとなりますので注意しましょう。
【改正民法】
(賃貸借の更新の推定等)
第六百十九条 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第六百十七条の規定により解約の申入れをすることができる。 2 従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、第六百二十二条の二第一項に規定する敷金については、この限りでない。
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BさんがAさんの所有する物件を借りていたところ、AさんがCさんに建物を売却したとしましょう。つまり大家さんがAさんからCさんに変わります。
この場合において、CさんがBさんに出ていってほしいと告げた場合、Bさんは新しい所有者のCさんに対して賃借権を対抗することはできません。
ですが、Bさんが賃借権の登記を備えていればBさんはCさんに対して賃借権を対抗することができます。
賃借権の譲渡・転貸
賃借権の譲渡とは、賃借人の権利や義務を第三者に譲り渡すことをいいます。
賃借人は賃貸人の承諾なしに、賃借権を第三者に譲渡したり転貸(また貸し)することはできません。
万が一賃借人が無許可で第三者に譲渡あるいは転貸した場合、賃貸人は当該賃貸契約を解除することができます。
とはいえ、背信的行為と認めるに足りない特段の事由があるときは契約の解除を行うことはできません。
背信行為と認めるに足りない特段の事由とは、たとえば賃借人が重度の寝たきりとなり介護を要する場合において、介護を理由に同居する娘に賃借権を譲渡する場合などが挙げられるでしょう。
また、賃貸人の許可を得た上で転貸した場合において、賃貸人は賃借人にも転借人にも賃料を請求することができます。
しかしこの場合において、転借人に請求する金額は賃借料と転借料のうち安いほうになることも覚えておきましょう。
使用貸借とは
宅建試験において賃貸借との比較で「使用貸借」が問われることがあります。使用貸借とは借主がタダで物を借りることを指し、タダで借りていることから借主の立場は弱くなります。
よく比較される項目を順にご紹介します。
使用貸借契約の成立
使用貸借契約も賃貸借契約と同様諾成契約です。
よって、当事者の合意のみによって成立します。
使用貸借の対抗要件
賃貸借では登記を備えていれば第三者に対抗することができましたが、使用貸借では貸主が目的物を第三者に譲渡した場合において借主は第三者に使用貸借を対抗することはできません。
使用貸借の解除
【改正民法】
(使用貸借の解除)
第五百九十八条
貸主は、前条第二項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。
2 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
3 借主は、いつでも契約の解除をすることができる。
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賃貸借では、賃借人に背信的行為と認めるに足りない特段の事由があるときは契約の解除を行うことはできませんでした。
対する使用貸借では借主が無断で転貸した場合、貸主は理由の如何を問わず契約を解除することができます。
また、借主が借用物を受け取る前だとこのようになります。
【改正民法】
(借用物受取り前の貸主による使用貸借の解除)
第五百九十三条の二 貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。
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使用貸借は、無料で貸すことですが書面で契約を締結した場合「やっぱやめた〜」はできないので注意が必要です。
(書面によらない贈与の解除)
第五百五十条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
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使用貸借は無償での契約なので贈与の条文が適用されます。
使用貸借における必要費
使用貸借では、借主は貸主に対して必要費の償還請求を行うことができません。しかし有益費は一定の基準で償還請求が認められています。
よって有益費以外の借主は目的物の保管・保存に必要な通常の費用は自ら負担しなければなりません。他にも荷物の撤去や現状回復のために費用を払う必要があります。
【改正民法】
(借主による収去等)
第五百九十九条
借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
2 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。
3 借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
第六百条 契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
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使用貸借で借主が死亡した場合
【改正民法】
(期間満了等による使用貸借の終了)
第五百九十七条
当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
2 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
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賃貸借では賃借人が死亡した場合、相続人が賃借人の地位を引き継ぎます、それに対し、使用貸借では借主が死亡した時点で使用貸借契約が終了します。
使用貸借は当事者間の関係に基づいて行われるので、相続者は他人という判断になり相続のの対象になりません。他にも使用貸借には借主・貸主を守る法律、借地借家法の適用がありません。
使用貸借と賃貸借との違いについて理解できましたか?具体的にどのような問題が出るのか下記の過去問を解いてみてください。
問題:AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物につき、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約(負担付使用貸借契約ではない)を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1.Bが死亡した場合、①では契約は終了しないが、②では契約が終了する。
2.Bは、①では、甲建物のAの負担に属する必要費を支出したときは、Aに対しその償還を請求することができるが、②では、甲建物の通常の必要費を負担しなければならない。
3.AB間の契約は、①では諾成契約であり、②でも諾成契約である。
4.AはBに対して、甲建物の契約不適合について、①では担保責任を負う場合があるが、②では担保責任を負わない。(2015年問3)
答え:4
1.Bが死亡した場合、①では契約は終了しないが、②では契約が終了する。
→賃貸借では権利が相続されるので、Bが死亡しても契約は終了しません。
一方使用貸借では貸主と借主の間の密接な関係により発生した契約なのでBが死亡すると終了します。よってこの選択肢は正しいです。
2.Bは、①では、甲建物のAの負担に属する必要費を支出したときは、Aに対しその償還を請求することができるが、②では、甲建物の通常の必要費を負担しなければならない。
→説明したそのままです。賃貸借では必要経費を請求できますが、使用貸借はできません。よってこの選択肢は正しいです。
3.AB間の契約は、①では諾成契約であり、②でも諾成契約である。
→諾成契約とは当事者同士の合意によって成立する契約です。よってこの選択肢は正しいです。改正前は使用貸借は以前は実際に物を引き渡すことで契約が成立する要物契約でした。気をつけてください!
4.AはBに対して、甲建物の契約不適合について、①では担保責任を負う場合があるが、②では担保責任を負わない。
→賃貸借はもちろん契約不適合があれば担保責任を追う必要があります。
また使用貸借も担保責任を追う必要があります。(特定した時についていた傷については追う必要はない。)使用貸借は贈与扱いになります。
(贈与者の引渡義務等)
第五百五十一条 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。 2 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
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無料なので責任がないとよく勘違いしがちな点ですが、責任を追う必要があります。
まとめ
本記事では、「賃貸借」と「使用貸借」についてお伝えしました。
賃借権 | 使用貸借 | |
第三者に対抗できるか | 登記があればできる | できない |
必要費 | 一定の基準で請求できる | 原則できない |
借地借家法の適用 | あり | なし |
借主が死亡した場合 | 相続される | 終了 |
賃貸借には借地借家法の知識が必要であったり、使用貸借には贈与の知識も必要になります。
このあたりを勉強すると知識が繋がってきますが、1つわからないことがあったら、なし崩し的に後の知識がわからなくなってしまいます。
さほど難しい内容ではありませんので、過去問を解きつつ知識を定着させていくようにしてください。
仮に、本記事で賃貸借と使用貸借について把握しきれなかった場合、スタケンの受講をおすすめします。
スタケンはプロの講座を受講しつつ、独学での勉強でもモチベーション維持が可能な資格講座です。
まずはスタケンのサービス内容から知りたいという方は、「スタケン®のサービス内容|合格圏内を突破する勉強法も徹底解説」の記事を参考にしましょう。
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