権利関係

宅建試験の「借地借家法」のポイントを解説!【宅建権利関係】

投稿日:2022年5月13日 更新日:

宅建受験者の中でも、苦手とする人が多いのが「借地借家法」の分野です。宅地建物取引に関する実務に携わっていたり、法律を学んでいない限り、条文はもちろん聞き慣れない法律用語が理解できず、苦手意識を持ちやすいでしょう。

しかし、宅建で合格するためには、不得意とする人が多い権利関係を克服し皆と差をつけることが重要です。この記事では、少しでも苦手意識をなくせるよう、借地借家法のポイントについて解説します。

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借地借家法とは

まず借地借家法とはざっくり説明すると土地や建物を借りる時のルールです。

土地や建物を借りるとき、知識の少ない借主側がどうしても不利な立場に置かれてしまうことが多いです。そこで作られたのがこの借地借家法です。

基本的に借主に有利に作られている法律なので問題の解き方がわからなくなったら「借主に有利な方が借地借家法!」と言うことを念頭に置くとわかりやすくなります。

次に具体的に借地借家法とはどんな内容なのか説明します。借地借家法は大きく下記4つの内容にわかれて定められています。

建物賃貸借契約 建物を借りるときに契約する
定期借家権 一定の期間で建物を借りるときに発生する権利
借地権 建物を建てるために土地を借りる権利
定期借地権 50年以上の期間を借地権を設定するときに適用される権利

とても簡単にまとめるとこのような感じです。それぞれの詳しい内容や適用範囲などを説明していきます。

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借地借家法-借家の場合

借地借家法における「借家権」とはいわば建物の賃借権のことを指しており、該当となる建物は居住用に限定されておらず、店舗や倉庫でも適用されます。

ただし、以下の場合には適用されないので気を付けましょう。

  • 使用貸借契約
  • 建物の一部を間借りする場合(独立性もない場合)
  • 一時使用の目的で利用する場合

存続期間

借地借家法における存続期間は、次の通りです。

  • 最長:制限なし
  • 最短:制限なし

参考:借地借家法29条二項

※ただし1年に満たない場合には、期間の定めがないものとみなされる(借地借家法29条1項)

期間の更新について

契約期間の更新については、存続期間の定めがあるものとないもので異なります。

期間の定めがある場合

たとえば、家を10年間借りるという契約をした場合、契約期間を満了しても契約を更新するのが原則です。

もし賃借人が契約を更新したくないのであれば、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、賃貸人に関して更新拒絶の通知を行う必要があります。

賃貸人が更新を拒絶するときも期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、賃借人に関して更新拒絶の通知を行う必要があります。しかし、正当事由が必要です。

正当事由は以下のような事情を総合的に考慮したうえで、判断されます。

  • 建物の使用を必要とする事情:居住のために必要など
    →賃貸人が使いたいので出て行って欲しい
  • これまでの経過:賃貸契約に至るまでの流れや各やり取り状況
  • 建物の利用状況:建物を適切に利用してきたかどうか
  • 建物の現況:今現在の部屋が荒れ果てていないか、きれいに保たれているか
    →賃借人が契約に関して、建物の使用について良くない行いをしているため出て行って欲しい

また、定められた期間が経過しても、特に何もない場合は自動的に更新したものとみなされます。このことを「法定更新」といいます。

賃貸人が更新拒絶をしても期間満了後に賃借人が建物を継続して使用している場合も「法定更新」になってしまいます。正当事由があったとしてもです!注意してください。

法定更新が行われた際は、これまでと同一の内容で契約が更新されたものとみなしますが、期間については「期間の定めがないもの」と扱う点に注意しましょう。

期間の定めがない場合

期間の定めがない場合には、当事者はいつでも解約の申し入れをすることができます。その際、賃貸人は6カ月前に、賃借人は3カ月前に申し入れをします。

ただしこの場合も賃貸人が解約申し入れをする場合は正当事由が必要です。期間の定めがある場合とない場合の違いは問われやすいので暗記しましょう。

借家権の対抗力

民法では、第三者に対して借家権を対抗するために登記が必要でした。しかし、借地借家法では、建物の引き渡しが第三者に対する対抗要件となります。

ちなみに鍵の受領や、家具を入れていれば引き渡しとみなされます。建物を借りるときにいちいち登記しませんよね。このように場面をイメージしながら覚えましょう。

借賃増減請求権

住んでいる建物の賃料が経済状況の変動により、近隣の建物と比較して不相応である場合には増減請求を行うことができます。

増額について協議が整わない場合

増額に対する協議が整わないとき、増額が正当であると裁判で認められるまでの間は相当と認める額を支払えばよいものとされています。

増額が正当であると確定し、すでに支払った賃料に不足がある場合には年1割の割合による支払期後の利息をつけて支払わなければなりません。(借地借家法32条3項)

減額について協議が整わない場合

この場合も、減額が正当であると裁判で認められるまでの間は、相当と認める額を請求することができます。

しかし、減額が正当であると確定し、すでに受け取った額に超過が生じている場合は利息をつけて支払う必要があります。

造作買取請求権

賃借人が賃貸人の許可を得て、エアコンなどを取り付けた場合には、退去時に賃貸人に対してエアコンの買取請求をすることができます。このことを「造作買取請求権」といい、造作買取請求権を認めないとする特約は有効です。

「造作買取請求権を認めない特約が有効?賃借人に不利な特約だから無効じゃないの?」と思うかもしれません。しかし下記の例のような状況があるので、賃借人に不利な特約とは言えません。

例えば賃借人が部屋にエアコンがないので付けたいとします。そこで賃貸人が「買い取りたくないからエアコンを付けないでくれ!」と言ったとします。

もし造作買取請求権を認めない特約が無効だったら、賃借人はエアコンをつけることができず暑い部屋で過ごさなければなりません。

造作買取請求権を認めない特約がついていた場合は、賃借人が自費でエアコンをつけることができます。

賃借人が死亡した場合

賃借人が死亡した場合、居住用建物については賃借権が相続されます。相続人がいない場合は一緒に住んでいた事実上の夫婦、親子関係にあった同居者がその後賃借権を承継することができます。

細かいところですがこちらもたまに出題されるので覚えておいてください。

借家の転貸と譲渡

賃借人が借りている家を転貸、建物借家権を譲渡する場合は民法が適用されます。借地借家法ではありませんが一緒に問題になることが多いので説明します。

転貸や建物借家権を譲渡するには、賃貸人の承諾が必要になります。

無断の場合は賃借人は契約を解除できます。(背信的行為と認めるに足りない事情がある場合は解除することができない)

転貸借があった場合は賃貸借契約の終了の原因によって、転借人が賃貸人に対抗できるか決まります。

期間満了 賃貸人が転借人へ通知、6ヶ月経過後終了
合意解除(賃貸人と賃借人が解除に合意した) 原則転借人は対抗できる
債務不履行(賃借人が家賃を滞納してる等) 転借人は対抗できない

賃借人の債務不履行以外転借人が原則保護されます。

定期建物賃借権

通常の借家権だとあまりに借主に有利で、貸主が家を使いたくても正当事由がないと追い出せないことから貸し渋りが起こる可能性があります。

そこで定期建物賃借権があります。定期建物賃借権は公的証書による等書面によって契約した時に限り、期間満了で正当事由がなくても更新しない旨の契約をすることができます。

また公的証書による等書面によって契約の他に、契約期間満了で更新しない旨の書面を交付して説明する必要があります。

これがなかった場合は無効になります。※定期建物賃借権は借賃増減請求権がありません。

定期建物借地権はこのように出題されます。

問題:定期建物賃貸借契約を締結しようとする場合、賃貸人が、当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了によっては終了することを説明しなかった時は、契約の更新がない旨の定めは無効となる。(2014年問12-4)

答え:正しい

借地借家法-借地の場合

借地権とは、建物を所有する目的で土地を借りる場合に適用されます。

そのため、単に青空駐車場として借りたり、資材置き場などの名目で借りたりする場合などには適用されません。また、明らかに一時使用目的であると判断された場合も同様です。

その場合は借地法ではなく民法が適用されますのでこの後説明します。

存続期間

最初に借地権の設定契約をする際、借地権の最低存続期間は30と定められています。そのため、30年未満の期間を設定した場合であっても、30年の契約であるとみなされます。(期間の定めをしなかった場合も30年とみなす)

  • 30年以上:定めた期間
  • 30年未満:30年
  • 定めなし:30年

期間の更新について

借地権は当事者の同意によって更新ができます。また、以下の場合には借地上に建物がある場合に限り、借地契約が更新されます。

  • 期間満了時:借地権者が契約更新を請求した場合
  • 期間満了後:借地権者が土地の利用を継続している場合

※上記の場合でも借地権設定者が正当な異議を申し立てた場合には、更新されません。

なお、合意により更新する場合の存続期間は次の通りです。

  • 最初に更新するとき:最低20年以上
  • 2回目以降で更新するとき:最低10年以上

なお、合意により更新する場合の存続期間は次の通りです。

  • 最初に更新するとき:最低20年以上
  • 2回目以降で更新するとき:最低10年以上

更新の存続期間について定めがない場合は

  • 最初に更新するとき:最低20年
  • 2回目以降で更新するとき:最低10年

になります。

建物が期間満了前に滅失した場合

期間満了前に建物が滅失した場合の期間の延長は、更新前か更新後によって異なります。

契約更新前中(最初の30年)に建物が滅失した場合、借地権設定者の承諾があれば期間を延長することができます。

しかし承諾がない場合は延長できません。しかし、借地権がなくなる訳ではないので、建物を再築することは可能です。契約更新後(最初の30年が終わった後)に建物が滅失した場合も借地権設定者の承諾があれば期間を延長することができます。

しかし承諾がない場合は延長できませんし、再築もできません。

承諾がない場合再築ができるかできないかが大きな違いになります。

借地権の対抗力

借りている土地の所有者(借地権設定者)が変わって、新しく土地の所有者となった人に「土地を明け渡せ!」と言われたらどうでしょうか。

この場合、借地上にある建物に借地権者本人の名義で登記がなされていれば、借地権者は新しい借地権設定者に対抗することができます。

また、もし対象となる建物が何らかの理由で滅失してしまった場合には、土地に以下の3つを記載した看板を立てておくことで滅失した日から2年が経過するまでの間は対抗力を備えることができます。

  • 建物を特定する事項
  • 滅失した日
  • 再築の旨

借地上の建物の転貸・譲渡

借地上の建物を第三者に賃借する際は借地権設定者の承諾を得る必要はありませんが、借地上の建物を譲渡する場合は借地権設定者の承諾を得る必要があります。

もし借地権設定者の承諾が得られない場合には、借地権者は裁判所に承諾に代わる許可をもらわなければなりません。

この際、裁判所に申し立てを行う人が売買と競売のそれぞれのケースで以下のように異なります。

  • 売買:借地人が裁判所に申し立てを行う
  • 競売:競落人が裁判所に申し立てを行う

定期借地権

借地権は通常の普通借家権の他に主に3つの借家権があります。

  • 長期の定期借地権
  • 建物譲渡特約付借地権
  • 事業用定期借地権

これらについてもよく問題が出題されるので違いを意識して頭に入れましょう。

◇普通借地権 ◇長期の定期借地権 ◇建物譲渡特約付借地権 ◇事業用定期借地権
契約方法 書面不要 書面必要 書面不要(口頭でも可) 書面(公正証書)必要
期間 30年以上 50年以上 30年以上 10年以上50年未満
法定更新 あり なし なし なし
買取請求権 あり なし なし なし
減額しない特約 不可

契約方法と期間の違いが鍵になります。

このように出題されます。

問題:事業用に供する建物の所有を目的とする場合であれば、従業員の社宅として従業員の居住の用に供する時であっても、事業用定期借地権を設定することができる。(2010年問11-1)

答え:誤り

事業用はあくまで事業用です。細かいところまで聞かれるのでもれなく覚えましょう

借家と借地がごちゃごちゃしてきたのではないでしょうか?繰り返しテキストを見ながら解いて身につけましょう。

まとめ

今回は、「借地借家法」についてお伝えしました。

「借主に有利な法律で、借主に不利な特約は原則無効!」と覚えればだいたい理解できると思います。

借地、借家いずれもとても大切な内容ですので、しっかり復習をし、過去問演習も繰り返し行いましょう。

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