賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「受託営業の商談」です。
受託営業が目指すものは何か、を考える
なぜ商談機会を活かせないのか
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
管理受託営業において、集客(DM・セミナー・メルマガ・受託用サイト構築等)に重点を置いて時間とコストを注いでいる会社は多いものです。
しかし話を聞いてみると、やっとの思いで集客し獲得したオーナーとの商談機会を成約に持っていけない、と悩んでいる会社も多いですね。高品質の管理メニューを用意しているのに成約率が悪い、そんな時は、商談の進め方そのものを見直す必要がありそうです。
受託営業はセールスではなくコンサルティング
よく言われることですが、成績の良い営業社員は商談時に「営業をしない」そうです。
具体的には、まずヒアリングに徹したうえで、①現状把握と課題抽出、②理想や目標の確認、③課題解決・目標達成のための提案、という流れで商談を進めるといいます。
全ての営業に通じることと思いますが、理想の商談とは、成約(受託)ではなく顧客の課題解決こそを目的とした、セールスというよりコンサルティングに近いスタイル。①~③を詳しく見てみましょう。
①現状把握と課題抽出
最初のフェーズで最も大事なことは、オーナーの課題を整理して商談の焦点を決めることです。
その商談が管理会社の変更や、物件購入に伴う管理会社の選定を目的に始まっているなら、オーナーは既に何かしらの課題を持っているはず。まずはヒアリングによって、オーナーの解決したい課題を明らかにしましょう。
ヒアリング時のポイントは、前もって内容を聞いていたとしても、商談の場で改めて悩みを話してもらうこと。
オーナー自身に課題を明確にしてもらうことが目的ですが、自分の口で悩みを語ることで、オーナー自身が自分の課題を整理できるという効果もあります。この整理ができると、商談の焦点がピタッと定まり、オーナーの求めに対して管理会社として何ができるかを的確にアピールできるようになります。
営業担当はオーナーの言葉を聞くためにも、「確か◯◯でお困りなんですよね」といったYES/NOの回答しか引き出せないクローズドクエスチョンは避け、オーナーが自由に回答できるオープンクエスチョンを使いましょう。
②理想や目標の確認
オーナーの課題を把握できたら、次は解決策の提案…といきたいところですが、もう少しヒアリングを進めてみましょう。なぜなら、洗い出したつもりの課題の先に、より根本的な課題が潜んでいる可能性があるからです。
私も以前、空室に困っているというオーナーの相談を受けたら、真の課題はぜんぜん違った、という経験をしたことがあります。てっきり空室対策を求めているものと思ったのですが、詳しく内情を聞いてみると、そもそも物件購入時の収支想定が甘いうえに借入金利も高く、このまま長期で保有を続けるメリットが見当たりません。いくら空室対策をしたところで焼け石に水、物件の保有そのものが課題という状態だったのです。
頃合いを見て売却することを勧めると、売却の手伝いを依頼いただくとともに、他の所有物件の収支も見てほしいとまとめて管理を任せてもらえました。後で知ったことですが、オーナーは知識ゼロで不動産投資を始めたことを後悔していたそうです。売却を勧められたことで肩の荷が下りました、という言葉が印象的でした。
このような真の課題は、オーナーの将来の理想や目標を聞いてみると見えてくることが多いです。オーナーにビジョンがないようなら、質問をしながら一緒になって組み立ててみるといいでしょう。
③課題解決・目標達成のための提案
課題を十分に抽出できたとなれば、いよいよ自社の説明と提案のフェーズです。
しかし忘れてはならないのが、あくまで賃貸経営の主役はオーナーであるということ。説明時は、営業資料を一から順に辿るような形式的・自己満足的な説明ではなく、オーナーの課題や関心事を優先した説明をするべきでしょう。
自社の強みを伝えるにしても、企業規模やFCネットワーク、地域密着性などを一方的にアピールするのではなく、オーナーがベネフィットを感じられるような具体的な話をするのが望ましいですね。
また、数字を使ったアピール材料があると強い武器に。エリアのシェア率が高いのなら「仲介件数」「管理戸数」「店舗来店数(集客力)」などの実数値を伝えるのもいいですし、「退去後の工事が平均7日で完了」「平均稼働率96%」など、オーナーが管理会社に期待する迅速力・客付力をアピールするのも有効です。
主役たるオーナーのアシストこそ管理会社の役目。課題の解決と賃貸経営の成功をゴールに見立て、オーナーがゴールに近づくためにどんなサポートができるかを逆算して考えてみると、十分なヒアリングと的確なアピールを伴った精度の高い商談が自然と構築していけるはずです。