賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「滞納督促の手順と注意点」です。
賃貸につきものの「家賃滞納」、どう対応する?
滞納督促の手順と注意点を確認
皆さんこんにちは。コンサルタントの金井です。
管理物件の空室をいかに埋めるか、皆さんも日々試行錯誤されていると思います。いろいろな空室対策を試してようやく申し込みが入ったときは本当に嬉しいものですよね。しかし、入居が決まったからもう安泰かと言うと、そうでもありません。賃貸にはつきものの「家賃滞納」が待っているかもしれないからです。
最近は保証会社の利用を入居条件とする管理会社も増えていますが、連帯保証人のみの契約もまだまだ多く存在します。もし、そうしたお部屋で家賃滞納が起きれば、督促に動くのは皆さんでしょう。
そこで記事では、滞納督促を行なうにあたり管理会社が押さえるべき督促の手順と注意点について確認していきます。
督促で大切なのは初動スピード!
滞納督促で何よりも大切なのは、滞納が起きてから初期対応を行なうまでのスピードです。支払い期日を過ぎ、入金がないと分かってから、どれだけ早く最初のアクションを起こせるかで回収率は変わってきます。
なぜなら、滞納者にも毎日の生活があるからです。時間が経てば経つほど、彼らは他のことに手元のお金を使っていきます。例えば、給料などのまとまったお金が手元に入っても、それを家賃に充てずにカードの返済に使ってしまったり、パチンコや競馬などのギャンブルにつぎ込んでしまったりするケースは珍しくありません。督促時にはすでに支払うお金が残っていないことだってあるのです。
だからこそ、滞納者がまだお金を持っているうちに迅速な滞納督促をすることが重要となります。
慌ただしい月末月初ということもあり、滞納督促が後回しになりがちな会社もあるかもしれません。しかし、滞納者を放置するほど督促業務の負担も増し、管理会社自身の首を絞めることになります。家賃の振込日に入金がなかった場合はすぐにでも行動を起こしましょう。
管理会社にできる督促手法には、大きく次の4つが挙げられます。
滞納督促の4つの手法
【1】ショートメール
滞納者の数が一番多い月初など、特に活用したいのがショートメールです。一括送信サービスを使えばコストを抑えつつ、督促の手間を大きく減らすことができます。家賃の支払いをうっかり忘れていただけの入居者には、ショートメールのような簡単な通知をするだけで済むケースがほとんど。集金管理をするならぜひ導入してみてください。
【2】電話
督促手段の定番と言えば電話です。滞納時期や期間、金額によって話す内容は異なりますが、未納の事実を伝え、支払いを催促したり、支払い期日の約束をさせたりと、メールだけでは対処できない滞納者には積極的な電話連絡が効果的です。
<連絡時のポイント>
①初めての連絡は「お支払い状況の確認」という名目で
滞納者が「うっかりしていただけ」「残高不足で引き落としがかからなかっただけ」という場合、いきなり「滞納」という言葉を使うと、逆に入居者を怒らせてしまうケースも。
また、行き違いで支払っていた場合に備え、最初は下手に出るのが無難です。
(電話例) |
②支払日は滞納者自身に指定させる
こちらがいくら支払期日を押し付けても、お金がなければ払えないものは払えません。入居者自身に現実的な支払い時期を考えさせ、確実に行動に移してもらうためには自分の口から期日を指定させることが大切です。もし約束が破られ、2回目以降の督促をすることになった場合でも、「〇日に払うと、あなたが自分で言いましたよね」と優位な立場で交渉を進めることができます。
× : 10日までに支払ってください。 |
③支払日の約束は「具体的な日付」で
管理会社の「いつ払えますか?」という質問に対し、多いのが「すぐ払います」というその場しのぎの回答です。
「今日払えるのか」「今日が無理なら明日(明後日)は?」というように、具体的な日付で支払いを約束させましょう。入居者への意識づけはもちろんですが、管理会社側も期日を確定させないと次のアクションを起こすタイミングがつかめませんので忘れずに設定したいですね。
仕事をしている方であれば給料日、生活保護受給者や年金暮らしの方は支給日をあらかじめ確認しておき、確実に家賃を支払える日に合わせて督促することも大切です。
【3】督促状を送る
ショートメールを送っても返信がない、電話もつながらないという相手には、金額・支払方法・支払期日を記載した書面を郵送します。届くまでに数日かかり、行き違いで支払ってくる可能性もあるため、1回目は「賃料等未収納のお知らせ」といったように、文面はソフトなものにしましょう。2回目以降は「督促状」と文面も強いものに変えていきます。
【4】訪問
メールも電話も督促状も効果がない場合は、直接訪問するしかありません。現地に足を運べば入居者の生活状況も把握できますし、無断での転貸や同居、ペット飼育などを発見できる場合もあります。手間はかかりますがメリットの大きい手段です。
また、入居者が部屋から出てこない場合は要注意。外出中や居留守の可能性もありますが、夜逃げ・室内での孤独死・自殺の恐れもあります。早期発見のために、訪問時には次のことをしておきましょう。
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次回の訪問時、メーターの数値に変化がない、蝶番に貼ったテープがねじれていないということになれば、長期にわたって人が部屋に出入りしていないことが分かります。室内で倒れている(亡くなっている)可能性もあるため、その際は安否確認のための入室も検討しましょう。
特に、いつもは滞納しない高齢者が突然滞納したうえに連絡も取れないような場合には、何かあったと考える方が自然です。早めの訪問を心がけましょう。
自力救済はNG
なお、ご存じかとは思いますが、出入りが確認できた場合でも以下のような行動はNGです。
- 督促状をドアに貼り付ける
- 鍵を勝手に交換する
- 鍵を開けて部屋の中に入り様子を確認する
これらの行動は名誉棄損や、自力救済禁止の原則に違反した不法行為となる恐れがあります。
過去には「督促状」という表記が見える状態でドアに貼り付けたり、勝手に鍵を交換したりした家賃保証会社が、借主から訴訟を起こされ損害賠償請求が認められたケースもあります。皆さんはくれぐれも気をつけましょう。
▶【関連動画】家賃滞納督促の現場に密着!!
迅速な対応で家賃滞納の“常習化”防ぐ
どんなに管理会社が気をつけていても、家賃滞納は一定数発生してしまいます。
大事なのは初動をできる限り早くし、滞納を常習化させないこと。最近では、LINE等の新しいツールを使った督促も増えているようですので、さまざまな工夫を凝らして入居者と早期にコンタクトを図れるよう努めましょう。
今回紹介した督促手法は一般的なものがほとんどですが、これらの積み重ねが滞納を減らすための一番の近道です。
ただし、どれだけ督促をしても改善がみられず、長期滞納に陥ってしまうと、残念ながら正常に戻ることは困難です。場合によっては法的手続きで強制的に退去させることを検討しなければなりません。
そちらの対応については別の記事でまとめていますので、ぜひご確認ください。