相談デスク

公開日:2020年12月1日

屋根からの落雪で入居者の車が凹んだ!大家の主張「落雪くらい予想できたはず」は通じるの?

屋根からの落雪で入居者の車が凹んだ!大家の主張「落雪くらい予想できたはず」は通じるの?
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屋根から落ちた雪の事故。責任の所在はどこにある?

いよいよ師走を迎え、年末の足音も大きくなってまいりました。

空気もすっかり冬のものとなり、地域によっては本格的な降雪も始まっているかと思います。

そんな冬の代名詞である「雪」。あまりなじみのない地域の方には「楽しいもの」でも、雪国の方にとっては決してそうではありません。その重くて冷たくて厄介なカタマリは、時として損害賠償請求の原因となる可能性も!

…とはいえ、雪の絡んだ損害賠償、責任は誰が負うんでしょう?

自然災害だから免責ですか? それとも誰かが責任を取りますか?

【相談ダイジェスト】

  • アパートの屋根からの落雪により、下に停めてあった入居者の車が凹んでしまった。
  • オーナーに修理費の支払いをお願いしたところ、「落雪くらい予想できたはずだから払わない!」と。
  • 車の修理費は10万円ほど。入居者も自分の自動車保険は使いたくないと言っている。
  • 管理会社として、どちらをどのように説得すべきか?

専門家の回答

原則として工作物責任を負う占有者・所有者の負担。ただし、屋根の安全性や天候、入居者の過失によって判断は変わる。

建物自体、たとえば老朽化した「壁」が剥落して誰かの財産に損害を与えた場合、その責任は建物(工作物)の占有者または所有者が負うことになります。

これを「工作物責任」と呼ぶことは、以前も「ブロック塀」のコラムで説明しました。

民法 第717条1項
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

復習になりますが、工作物とは建物や倉庫や塀といった、いわゆる人工的な建築物を指しましたね。

さて、今回は「屋根からの落雪が入居者の車をへこませた」というトラブルでした。となると、車に損害を与えたのは「雪」なので、一見するとこの工作物責任が適用されないようにも感じます。

しかしこの場合、注目すべきは「建物の屋根」です。見方を変えれば、降り積もった雪がどうなるかは屋根の構造次第、あるいは、屋根の管理の方法次第であるとも言えます。つまり、これもまた「建物(工作物)」の問題です。

よって、屋根からの落雪が他人に損害を与えたのなら、その責任は屋根という工作物の責任。屋根の安全性を確保する必要のあった占有者または所有者が責任を負うべきである、という話になるのです。

瑕疵の有無、そして天候の判断によっては免責も

とはいえ、工作物責任の考え方から所有者・占有者に責任を求めるのは、あくまで原則としてのお話です。

実際には様々な要因によって「落雪」そして「車のへこみ」が発生しているはずで、状況によっては所有者・占有者も責任を免れることができます。

こちらも「ブロック塀」のコラムで説明がありましたが、717条1項の序盤に「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、」という条件が付されている通り、工作物責任を追及されるのは、あくまで「設置又は保存に瑕疵がある」場合です。

では、落雪に関する「瑕疵」とはなんでしょう?

物理的なものでいえば、まず落雪事故を防止するための仕組みです。たとえば豪雪地帯では、屋根に「雪止め金具」や「融雪ネット」を設置することが常識となっている地域が少なくありません。そうしたエリアにおいて、雪止め設備の設置が行われていなかったとしたら、それは「設置又は保存の瑕疵」と見なされる可能性が高いと言えます。

また、落雪が予想できたにもかかわらず、落雪への注意喚起などを行なっていなかった場合にも瑕疵と判断される可能性があります。改めての例になりますが、豪雪地帯では行政から「落雪範囲」を見越した建物建築/建物運用が指導されているケースが多くあります。これを無視し、「落雪範囲」で駐車場運営をしていた結果としての事故であれば、所有者が責任を問われる可能性も高くなるということです。

また、所有者・占有者の責任の有無を左右する要因がもうひとつあります。「天候」です。

原則として、地震や台風といった災害・天変地異による損害は、誰も損害賠償責任を問われません。たとえ所有する建物(工作物)が他人に損害を与えたとしても、原因が自然災害であれば(そして工作物に瑕疵がなければ)免責となります。

これは積雪についても同様で、例えば「観測史上最大の積雪」「ゲリラ豪雪」といった状況であれば、その悪天候が斟酌されます。たとえ雪止めなどの設備があったとしても、雪が多すぎればその機能を十全に発揮できないケースが出てきますし、運用のうえでも「これほど短時間で積もるとはだれも予想できなかった」といった状況であれば、対応が間に合わないケースが出てくるからです。

よって、今回のトラブルでまず確認するべきは次の3点でしょう。

 

  1. 建物(賃貸住宅)の屋根は、地域の状況に見合った適切な落雪防止設備が設置されていたか。(地域によっては不要)
  2. 落雪が予想できたか。予想できていたなら注意喚起はされていたか。
  3. 当日の天候は、通常想定される範囲を逸脱するほどの荒天だったか。

 

屋根自体やその運用に瑕疵があったのなら、やはり車の修理費用は建物所有者が支払うべきでしょう。

また、物理的な瑕疵がなかったとしても、その日の天候が「通常想定される範囲内」であったなら結果は同じです。運用方法に瑕疵があったとして、やはり所有者が工作物責任を問われることになりそうです。

被害を受けた人にも過失があれば、「過失相殺」という選択肢

工作物が他人に損害を与えた場合、被害者に対しては所有者・占有者がその損害を賠償する責任を負う、と定められている工作物責任。

ここまで「瑕疵」そして「天候」によっては責任の比重が変わってくる、というお話をしてきましたが、実はもうひとつ、所有者・占有者の責任を左右する要素があります。

それは、「被害者の過失」です。

所有者側に責任のすべてがある場合は仕方ないにしても、双方に不注意があったにもかかわらず、加害者がすべての賠償責任を負担するのでは公平とはいえません。被害者側にも責任がある場合には、被害者側の過失について考慮されて然るべきです。

この「考慮」について定めているのが、民法722条2項、いわゆる「過失相殺」の条項です。

 

民法 第722条2項
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

 

今回の件、オーナーさんも「落雪くらい予想できたはずだから払わない!」と主張されていますが、もし落雪が誰の目にも明らかであったとしたら、また、落雪が起こりそうな位置以外に車を停める選択肢があったのだとしたら、わざわざその落雪地点に車を停めた入居者にも過失があったと言えるかもしれません。

民法ではこのように「被害者に過失があったとき」には、それを勘案して、加害者の賠償責任を減額できるよう定めています。

実際に事故が起こっている以上、工作物責任(落雪事故が起こらないよう安全を確保する責任)について、所有者・占有者の責任が軽減されることはありません。しかし、損害の公平な負担の観点から、その損害賠償「額」について、双方の過失を相殺できる権利が裁判所には与えられているのです。

よって今回の件、もし被害者に過失が認められる場合には、全額を被害者負担とするのは難しいにしても、何割かを相殺して所有者の賠償額を軽減できる可能性があります。屋根に瑕疵がなく、運用のうえでも十分な注意がなされた状態であったとしたら、その割合も大きくすることができるでしょう。

ただし――、この過失相殺、一点だけ問題があります。

それは、相殺を考慮できるのがあくまで「裁判所」であるという点です。

つまり、過失相殺を適用して賠償額を減らすためには、トラブルを「裁判沙汰」にまで発展させる必要があるのです。

 

そうなると、今回の損害額10万円のトラブル、果たして過失相殺を持ち出してまで減額させるべきかという疑問が生まれます。

納得できる・できないの問題が残りますが、訴訟や示談までの金銭的・時間的・精神的なコストを考えれば、オーナーさんは今回の件、素直に費用を負担したほうが得策と言えるのではないでしょうか。

そして、このような負担を二度と強いられないためにも、オーナーさんは今後に備えて「施設賠償責任保険」に加入するべきです。施設賠償責任保険は、

・所有や管理する施設や設備などの不備によって第三者に身体障害や財物損害を与えた場合
・業務活動中のミスにより第三者に身体障害や財物損害を与えた場合

このような損害、中でも「建物や設備が誰かに損害を与えてしまった場合」をカバーしてくれる頼もしい保険です。

火災保険料を節約しようと付帯させない方も多いのですが、年間の保険料はアパート一棟でも数千円程度。もし落雪が「人」に当たっていたら10万円では済まないのですから、是非とも保険を活用し、安定経営のためのリスクヘッジを図っていただきたいものです。

※この事例は2020年2月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。


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