相談デスク

公開日:2021年5月13日

「どうせ建て替えるから」築古物件を修繕してくれないオーナーを賃貸管理会社はどう説得する?

「どうせ建て替えるから」築古物件を修繕してくれないオーナーを賃貸管理会社はどう説得する?
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敢えて放置するなんて!? 築古物件を修繕「する・しない」問題

管理物件の雨漏り。管理会社ならすぐにでも直さなければと思うところですが、

「雨漏り? どうせ建て替えるから修繕はしないよ」

オーナーからそう言われてしまうと、途端に対応が難しくなってきます。

今回寄せられた相談では、屋上からの雨漏りが見つかったにもかかわらず、建て替えを理由にオーナーが修繕を認めてくれない、というものでした。漏水箇所が運よく空室で、入居者にはまだ直接の被害はないそうですが、放置が長引けば被害が拡大するのは時間の問題。オーナーの言う建て替えの話も具体化していないうえ、全18戸中13戸が入居している状況です。

こんなとき、管理会社はどのようにオーナーを説得すればいいのでしょうか。

【相談ダイジェスト】

  • RC造の最上階にある空室から雨漏り。幸い入居者への被害は見られていない
  • 管理会社からオーナーに修繕をお願いするも「どうせ建て替えるから」と断られる
  • 物件は築40年。雨漏りは初めてで被害も軽いため、オーナーの危機感は薄い
  • 早急に修繕をしてほしいが、どう説得すればいいかと相談

専門家の回答

オーナーの判断を修正したいなら必要コストとリスクを提示。建て替えを望む「真の理由」を明らかにできれば解決は早い。

オーナーは早期に物件を建て替えるとは言うものの、現実には13戸も入居している状況です。これから立退き交渉を始めても、完了までまだまだ時間がかかりますので、その間に雨漏り被害が拡大するのは必至。管理会社が「すぐにでも修繕しなければ」と訴えるのも当然のことでしょう。

しかし、雨漏りを「修繕する・しない」の判断は、最終的にオーナーの意向に委ねられます。

そのため、管理会社にできるのは、オーナーが適切な判断を下せるよう、修繕する場合・しない場合で将来必要になるコストを正しく伝えること。「いま修繕をしたら出費はこうなる」「修繕しなかったら将来支払うコストはこれだけかかる」といった予想される全てのコストを提示するのです。

そのうえで、オーナーにそれぞれのコストを比較してもらいましょう。そして、どの選択が最もオーナーの希望に沿うのかを検討してもらうことになります。

修繕する場合・修繕しない場合のコスト

今回の相談で、オーナーに比較してもらうのは次の3つのコストです。

【1】今すぐ修繕する

【2】どうしても必要なら修繕する

【3】修繕しないで建て替えまで粘る

【1】今すぐ修繕する

RC造の築40年ですので、陸屋根の屋上防水はすでにぼろぼろの状態だと推測できます。修繕をするなら全面的にやり替える必要があるでしょう。また、仮に6階建ての物件だとしたら、屋上面積はひとまず120㎡程度と考えられます。

コストの一例として、シート防水を全面やり替える想定で考えてみましょう。シート防水の相場は約8000円(平米当たり)ですので、概算工事費は96万円(120㎡×8000円)となります。

【2】どうしても必要なら修繕する

では、被害が大きくなってから結局修繕をすることになった場合のコストはどうでしょう。結論から言うと、修繕費用は【1】の何倍にもふくれ上がることになります。というのも、雨漏り被害は気付かないうちに広がり、建物の各所にダメージを及ぼすからです。

・電気配線へのダメージ

雨水により電気配線が濡れると、漏電して停電・感電・火災などの被害に繋がります。事故を起こしかねないという点で非常に危険ですし、入居者からクレームが来るまで状態が悪化すると修繕費用も高額になってきます。

 

・入居者の家財道具の損失

雨漏りで入居者の家財がダメになると、入居者(または保険会社)からオーナーに損害賠償請求が行くことも充分考えられます。もちろん過失ですので、保険は下りないでしょう。

 

・家賃減額による収益減

借主にはお部屋を使用収益する権利があります。そのため、雨漏りでお部屋を使用できなくなった割合で、家賃は当然に減額されることになります。

 

・入居者の仮住まい代の出費

修繕が完了するまでの間、ウィークリーマンションやホテルなど、オーナーは入居者が仮住まいするため費用を負担することになります。

 

さらに言えば、RC造の物件ですので、コンクリート内部に雨水が染み込むと爆裂(鉄筋露出)を起こし、コンクリートが地上に落下する危険も高まります。事故リスクが高まってからようやく修繕するとなると、何をするにもコストが膨らみがち。高額な修繕費用を背負う覚悟が必要でしょう。

【3】修繕しないで建て替えまで粘る

修繕せずに建て替えまで粘る場合、【2】で挙げたコスト以外に「立退料」が加わることになります。立退料の額に相場はありませんが、一般的に家賃6~10ヶ月ほどを支払うことが多いようです。

今回の物件だと全18戸中13戸が入居中ですので、仮に家賃が5万円とすると、少なく見積もっても480万円。加えて、【2】のコストがかかってくる恐れがありますので【1】より安くなることはなさそうです。

 

オーナーが後悔のない判断をするためには、このように予想されるコストを全て提示する必要があります。そのうえで修繕「する・しない」について、改めてオーナーに比較・検討をお願いしていきます。

管理状況によっては建て替えを遅らせる選択肢も

「修繕する・しない」問題について比較したうえで、今度は物件を本当に建て替えるべきか、この先の賃貸経営についてもオーナーと見直しを図りましょう。

そもそも管理状況によっては、物件を急いで建て替えるのが勿体ない可能性もあります。特に今回の物件は、築40年で初めて雨漏りが起きたとのこと。管理状況は悪くないことが予想されます。RC造の耐用年数は一般的に47年に設定されていますが、あくまで目安で、状態が良ければ建て替え時期を遅らせて長く収益を上げることができるかもしれません。

仮に、現状の13戸から毎月の家賃5万円を回収できたとすると、1年間の家賃収入は780万円(13戸×5万円×12ヶ月)となります。

もちろん空室損や築年が古いことによる出費も考えられますが、築40年で銀行へのローン返済が終わっていると推測すると、築年の割りにきれいに管理されてきたこの物件は、まだまだ稼ぎ時。なかなかの収益があると分かります。

 

ただ、もしかしたらオーナーは「それでも建て替えたい」と言うかもしれません。そのときは、そもそも建て替えの真意がどこにあるのか確かめたいところです。オーナーの建て替えたい理由が分かれば、その後の解決も早まるかもしれません。

いずれにしても建て替えありきで考えず、どうするのがオーナーにとって最良かを確かめることが大切です。比較材料を提示し、オーナーの「こうしたい」を明確にしたうえで、建て替え時期や、直近の「修繕する・しない」問題について結論を出していきたいものです。

常日ごろからの情報発信が大切

今回、オーナーが建て替えを理由に雨漏り修繕を断ったのは、雨漏りを放置した後に発生するコストを正しくイメージできていないことが大きかったでしょう。加えて管理会社も、「修繕した方がいい」とオーナーに勧めたものの、耳を傾けてはもらえませんでした。

こうした事態を防ぐためにも、管理会社はオーナーに対して、常日ごろから賃貸経営に役立つ情報発信をすることが大切です。「管理会社の意見は聞く価値がある」とオーナーに思ってもらえれば、雨漏り修繕についても、もっとスムーズに話が進んだかもしれません。

情報発信の手段としては、たとえばオーナー向けセミナーを開催したり、賃貸経営に役立つ記事を定期的に発信したりといった方法があります。弊社でも、オーナー向け情報発信ツールとして「オリジナル会報誌」サービスを展開していますので、ぜひご参考になさってください。

定期的な情報発信は、オーナーの啓発だけでなく、コミュニケーションツールにも、ロイヤルティ向上にも役立ちます。この機会に活用を検討してみるのもいいかもしれません。

※この事例は2021年4月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。


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