毎年必ず出題される5問免除科目。宅建の本試験で問題を解く方と解かない方と分かれるこの分野は、いざ勉強するとなったら「どのように対策すれば良いかわからない…」という方も少なくありません。そこで今回は、5問免除科目の攻略法について解説していきます。やむを得ず登録講習を受けられない方は必見です!ぜひ参考にしてください。
[stken1]この記事で学べること
5問免除科目とは
宅建試験の4分野「権利関係」「宅建業法」「法令上の制限」「税・その他」の“その他”に該当する部分であり、例年46~50問目に出題されています。以下の内容から出題されます。
• 宅地建物取引業法施行規則 第8条第1号
土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること
• 宅地建物取引業法施行規則 第8条第5号
宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること
そしてこの分野は、事前に「登録講習」を受講し修了試験に合格することで免除され、この5問を除いた全45問の試験を受けることが可能になります。その分、試験時間は10分短縮されます。
試験では問題を解くことなく、点数に+5点加算することができるため、なんともありがたいシステムですよね。試験当日にはこれだけの違いがありますが、登録講習を受講する方も、当然勉強して修了試験を受けています。どちらにしても勉強から逃れることはできません。先にがんばるか、試験本番でがんばるかどちらかです。
過去の出題傾向
5問免除科目からは、名前のとおり5問出題されます。この分野は出題範囲が狭く、満遍なく出題される傾向にあります。過去の出題傾向と重要度は以下のとおりです。
項目 | 傾向・重要度(4段階) |
住宅金融支援機構 | ★★★★ |
公正競争規約 | ★★★★ |
土地 | ★★★★ |
建物 | ★★★★ |
土地・建物に関する統計 | ★★★★ |
頻出項目
過去10年間で毎年出題されている頻出項目は、5項目とすべてに該当します。逆にいうとすべての項目が毎年出題されるからこそ、免除科目となっているのでしょう。登録講習を受けて5問免除となるかどうかで、宅建試験当日のモチベーションは大きく変わります。5点が確実に取れるのかそうではないのか、合否を分ける重要な分野のため、登録講習の受講対象外もしくは5問免除とならなかった方は、出題される5項目を満遍なく学習しておきましょう。
攻略・学習法
5問免除科目は、ちょっとしたコツで驚くほどスッと理解できるようになります。どのような学習法が向いているのか、他の分野と違う点を理解してこの分野に合った対策を取っていきましょう。
迷ったら常識で考える
5問免除科目の問題は、常識で考えて判断できるものが多い傾向にあります。特に景表法や土地・建物は常識で考えて解けるものが多く、場合によっては知識以上に重要になることも。ただし、なかには常識だけでは解けない問題もあるため、その点は知識をつけてしっかり補えば問題ないでしょう。過去問で今までの傾向がわかるため、この分野も過去問学習を中心として良いでしょう。
試験直前の学習がおすすめ
得点を逃したくない分野ですが、この分野の学習に大幅な時間を割く必要はありません。「権利関係」「宅建業法」「法令上の制限」「税・その他」とあり、この5問免除科目は”その他”にあたる部分です。5問免除となる際の登録講習のスクーリングはおよそ10時間。重要な部分のみに絞って講習を受けられるとはいえ、何週間、何ヶ月かけてまで学習する必要はない、ということです。学習のタイミングは試験の直前一週間程度。さすがに本試験の前日に初見、となると時間が短すぎますが、直前期の学習で十分です。最新のデータが必要な「統計」もあるため、あわせて確認しておきましょう。
項目ごとの学習法
以下では、5問免除科目の項目ごとの学習法を解説していきます。登録講習受講者と大きく差がつく5点分です。項目ごとの特徴を理解し、コツを押さえた学習法で確実に得点を狙っていきましょう。
住宅金融支援機構(出題数:1問)
ここでは、住宅金融支援機構の業務内容について出題されます。業務の範囲としてどのようなものがあり、具体的になにを行っているのか、内容をざっくり理解した後は、繰り返し過去問学習をしていきましょう。繰り返し解いていく中で、正解できない問題が出てきたらテキストや講義動画で確認する、という作業が効率よく進められる方法となります。
この項目は少し難しそうな内容に思えるかもしれませんが、民間の金融機関との業務の違いがあったり、同じ業務内容のものもあったりするので、私たちの住宅の購入時などに役立つ内容が詰まっています。単純に「なるほど!」と興味を持って勉強を進めていけるかもしれません。
例題・解説
独立行政法人住宅金融支援機構(以下この問において「機構」という。)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
①機構は、子どもたちを育成する家庭又は高齢者の家庭に適した良好な居住性能及び居住環境を有する賃貸住宅の建設又は改良に必要な資金の貸付けを業務として行っている。
②機構は、証券化支援事業(買取型)において、債権者又は債務者の親族が居住する住宅のみならず、賃貸住宅の建設又は購入に必要な資金の貸付けに係る金融機関の貸付債権についても譲受けの対象としている。
③機構は、証券化支援事業(買取型)において、バリアフリー性、省エネルギー性、耐震性、耐久性・可変性に優れた住宅を取得する場合に、貸付金の利率を一定期間引き下げる制度を実施している。
④機構は、マンション管理組合や区分所有者に対するマンション共用部分の改良に必要な資金の貸付けを業務として行っている。
―平成28年度【問46】
誤りは②です。機構は、「賃貸住宅」の建設又は購入に必要な資金の貸付けに係る金融機関の貸付債権については譲受けの対象となっていません。譲受けの対象となっているのは「申込者本人又はその親族が居住する住宅」です。
景品表示法(出題数:1問)
不動産業者が行う広告や景品の提供に対しては、「景品法」とこれに基づく「公正競争規約」によって規制がかけられています。そして出題されるのは、ほとんど「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」からとなります。これは、賃貸や売買で物件の広告を出す際の取り決めがあり、使ってはいけない用語や明示義務のある内容をしっかり把握しておかなければなりません。
実務でも非常に役立つ重要な部分ですが、比較的「常識」で考えて解けるような内容が多いです。2~3回テキストに目を通して、あとは過去問や一問一答で慣らしていきましょう!
例題・解説
宅地建物取引業者が行う広告に関する次の記述のうち、不当景品類及び不当表示防止法の規定によれば、正しいものはどれか。
①土地を販売するに当たり、購入者に対し、購入後一定期間内に当該土地に建物を建築することを条件としていても、建物建築の発注先を購入者が自由に選定できることとなっていれば、当該土地の広告に「建築条件付土地」と表示する必要はない。
②新聞折込チラシにおいて新築賃貸マンションの賃料を表示するに当たり、すべての住戸の賃料を表示することがスペース上困難な場合は、標準的な1住戸1か月当たりの賃料を表示すれば、不当表示に問われることはない。
③リフォーム済みの中古住宅については、リフォーム済みである旨を必ず表示しなければならない。
④分譲住宅について、住宅の購入者から買い取って再度販売する場合、当該住宅が建築後1年未満で居住の用に供されたことがないものであるときは、広告に「新築」と表示しても、不当表示に問われることはない。
―令和元年度【問47】
正しいのは④です。わかりづらいかもしれませんが、新築とは「建築後1年未満」であることに加え「居住の用に供されたことがないもの」に限ります。この2つを満たしているため、新築と表示しても不当表示とはなりません。知識をつけておかなければなかなか解けない問題なので、テキストなどを使ったインプット作業も忘れず行いましょう。
土地/建物(出題数:2問)
土地と建物から1問ずつ出題されます。専門的な知識や難しい言葉が多く使われているため、少し勉強しづらく感じることもあるかもしれません。また学習範囲も狭いようで広いため、対策がなかなか立てづらいです。勉強を進めていく際には、こちらも「常識」で考えていくと答えが見えやすくなってくるでしょう。
- 土地:宅地としてどのような土地が適しているのか?
- 建物:どのような材料や工法で建物が建築されているのか?地震や災害が起こったときにも崩れにくい建物にするには?
難しい問題にぶち当たってしまったときは「常識」で考えて解いてみると、わりと答えに近づけるようになります。過去問を使って、考える練習をたくさんしていきましょう!
例題・解説
日本の土地に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
①国土を山地と平地に大別すると、山地の占める比率は、国土面積の約75%である。
②火山地は、国土面積の約7%を占め、山林や原野のままの所も多く、水利に乏しい。
③台地・段丘は、国土面積の約12%で、地盤も安定し、土地利用に適した土地である。
④低地は、国土面積の約25%であり、洪水や地震による液状化などの災害危険度は低い。
-平成25年度【問49】
答えは④です。低地は国土面積の約13%、この数値がわからずとも洪水や地震による液状化などの災害危険度が高い土地であることは想定できます。初めて出る問題ですが、④が不適当であることは常識で考えれば解答できるでしょう。
統計(出題数:1問)
この項目では、地価公示や住宅着工統計・法人企業統計等の各種統計データと、これに関する各省庁のコメントから出題されるため、とにかく「最新データ」を取得しなければなりません。まずはデータを調べるところから始めていきましょう。データは、国土交通省や財務総合政策研究所などのHPに掲載されています。毎年7~8月頃には統計データが公表されているので、先に勉強しておきたいのであれば早めに確認しましょう。
例題・解説
次の記述のうち、正しいものはどれか。
①建築着工統計(令和3年1月公表)によれば、令和2年1月から令和2年12月までの新設住宅着工戸数は約81.5万戸となり、4年ぶりに増加に転じた。
②令和3年版土地白書(令和3年6月公表)によれば、土地取引について、売買による所有権移転登記の件数でその動向を見ると、令和2年の全国の土地取引件数は約128万件となり、5年連続の増加となっている。
③令和3年地価公示(令和3年3月公表)によれば、令和2年1月以降の1年間の地価の変動を見ると、全国平均の用途別では、住宅地及び商業地は下落に転じたが、工業地は5年連続の上昇となっている。
④年次別法人企業統計調査(令和元年度。令和2年10月公表)によれば、令和元年度における不動産業の営業利益は約5兆円を超え、前年度を上回った。
-令和3年度【問48】
正しいのは③です。問題を見てわかるとおり、その年の統計データを見ていなければどれが正解かわからない内容です。必ず学習過程と試験直前に確認しておきましょう。
5問免除の登録講習は受けるべき!?
5問免除の登録講習を受けられる方には、受講することを強くおすすめします。登録講習修了者になることで試験勉強の負担が減り、合格率もUPするからです!たかが5問、されど5問。
そもそも勉強しなければならない項目が多く時間がかかる宅建学習において、5問分でも学習範囲が減ると気持ち的にすごく楽になりますよね。勉強によるストレスは体力的にも精神的にもしんどいものです。5問免除になることで、少しですが気持ちに余裕が生まれるでしょう。また50問の一般受験者よりも5問免除を受けている受験者の方が、合格率が高いのです…!2021年10月実施分の宅建試験の合格率は以下のとおりです。
受験者(人) | 合格者(人) | 合格率 | |
一般受験者 | 160,868 | 27,152 | 16.87% |
登録講習修了者 | 48,881 | 10,427 | 21.33% |
※一般財団法人 不動産適正取引推進機構「令和3年度宅地建物取引士資格試験(10月実施分)結果の概要」より算出
なんと登録講習修了者の合格率は、一般受験者の合格率よりも4.46%も高かったのです。勝ち組になるために、ぜひ登録講習は受けるようにしましょう!
⚠誰でも受講できるわけではありません
試験の一部(5問)が免除される「登録講習」は、宅地建物取引業に従事している方(従業者証明書(業法第48条第1項)をお持ちの方)のみ受講することができます。一般の方は受講できません。
受講要件や申込期限もありますので、事前に内容を確認しておきましょう。
まとめ
〈5問免除科目 攻略POINT〉
●過去問を繰り返し解く
●「常識」や「基本」を考えて解いていく
●「最新データ」を取得する
●暗記力を発揮する
●試験直前の勉強がおすすめ
以上、5問免除科目の攻略法について解説しました。この科目は学習範囲から満遍なく出題されるので、しっかり結果が伴ってくる部分になります。勉強すれば、5点満点はほぼ確実となるでしょう。そのため、登録講習を受けられず一般受験となったとしても、登録講習修了者との差や合格率について心配する必要はありません。登録講習修了者との差を感じさせないくらい、余裕で解答できるようになっているはずです。本試験でも自信をもって解けるように、しっかり準備していきましょう!
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