宅建資格の取得を目指すのであれば“過去問学習は必須である”とよく耳にします。しかし具体的な勉強法も知らずにこの言葉を聞いても「過去問だけやっていればいいの?」「どのように勉強すればいいのか分からない…」と宅建初心者は特に悩んでしまうでしょう。
そこで今回は、過去問を完全攻略するために過去問学習が必要な理由や効率的な勉強法について紹介します。
宅建の過去問解答
毎年行われる試験の解答は、速報として試験当日に資格スクールのWebサイトなどで確認できますが、正式な解答は試験後の12月の第1水曜日または11月の最終水曜日に合否と共に発表されます。以下は令和3年度(2021年)10月の解答です。
各問題の正解番号と、何点以上が合格であるという合否判定基準が記されています。
ここで正しく自己採点するために、自身の解答を問題用紙の方に書き写しておかなければなりません。
解答用紙にマークをつけるのと同時に行うため、過去問学習で習慣づけておきましょう。
宅建に過去問学習が必要な理由
なぜ宅建資格を取得するためには過去問学習が必要なのでしょうか。その理由は以下のとおりです。
過去問から出される問題が多いため
宅建試験は過去に出題された問題の焼き増しが7割以上あると言われています。類題が非常に多いため過去問の内容が理解できれば解き方も理解でき、得点につながりやすくなります。したがって、仮に過去問学習を完璧にこなすことができれば35~40点という数字はかなり現実的となるでしょう。
当然、法改正などの最新の知識も頭に入れておかなければなりませんが、過去問が試験対策の重要な役割を果たしていることは間違いありません。
試験と同じ形式に慣れるため
過去問を試験と同じように解くことで、出題形式や時間配分など宅建試験の形式に慣れることができます。宅建試験の前に一度も模試や過去問を解かず、試験当日に初めて試験の形式を知るという人は恐らくいないでしょう。どのような問題の出し方をするのか構成を知り、1問にかけられる時間を導くには過去問を解いて把握するのが手っ取り早いからです。
また問題構成が変わることで、同じことを問われていても正解が分からなくなってしまうことがあります。そのような問題も過去問の中にさまざまなパターンが詰められているため、過去問を解くことで類題への対策を取ることができるのです。
知識を定着させるため
過去問を解くことで知識を定着させることができます。過去問学習は、テキストで覚えた内容をアウトプットする作業です。テキストを読んでどれだけ覚えているか問題を解いてみると、覚えたはずの内容を思い出せず間違えてしまうなんてこともあるでしょう。
以下のエビングハウスの忘却曲線でわかるように、人は何かを学んだとき1時間後には50%以上、1日後には約70%のことを忘れてしまいます。そのため一度テキストの内容を覚えて理解したつもりでも、アウトプットの作業で問題を間違えてしまうのです。
ただし、間違えることが多くても落ち込む必要はありません。この「間違える」という失敗にあたる作業は、記憶を強化してくれます。繰り返し問題を解くことと同じように、間違えることによって記憶に鮮明に残り、定着させることができるのです。そのため過去問学習は、間違えながらも繰り返し解くことで知識を定着させられる、宅建試験対策に適した勉強法と言えるでしょう。
また宅建試験ではひっかけ問題も出題されます。出題されるひっかけのパターンに慣れるためには、上記のような勉強法が効果的です。過去問学習で知識を定着させ、対策していきましょう。
宅建は過去問だけで合格できる?
過去問学習が重要であることは理解できるでしょう。一方で『過去問だけやっておけば合格できる』という言葉もよく聞きますよね。本当に文字通り“過去問集だけ”を使って合格できるかというと、結論はほぼ不可能でしょう。
過去問学習では、「過去宅建試験に出された問題を解き、採点してその解説を読む」という作業を繰り返し行います。そもそも知識がなければ問題を解くことはできませんし、過去問で基礎知識を習得できるのは解説部分のみとなります。解説1つずつをすべて読んで覚えていくのでは、膨大な時間がかかり重複している部分が多数あるため、圧倒的に非効率であり宅建試験に求められる知識を網羅するのは現実的に考えて難しいです。
ただし例外として、基礎知識がある人は除きます。不動産業に従事している人や、何度も宅建試験に挑戦し続けている人であれば、一部の勉強を省き過去問だけでも合格できる可能性はあります。
それでも実務以外に覚えなければならないことは山のようにあるので、合格できるとしてもごくわずかでしょう。
また、『(アウトプット教材として)過去問だけやっておけば合格できる』という意味であれば言葉に間違いはありません。この言葉には“インプット教材のテキストを用いて知識をつける”ことが前提にあります。
「アウトプット教材として使うのは過去問集だけで良い」という認識で、過去問集に頼りすぎないように注意しましょう。
宅建過去問の勉強法とは?
ただがむしゃらに過去問を解くだけで合格できるわけではありません。以下のような勉強法で効率的かつ確実に知識を固めていきましょう。
過去問は過去10年分解く
おすすめは過去10年分解くことです。3年分、5年分など過去問集によって年数はそれぞれですが、3~5年分の場合、解ける問題数は150~250問とあっという間に終わってしまいます。それに比べて10年分は問題数500問と、倍以上の問題を知ることができます。
過去問から出される問題が7割以上と言われている宅建試験なので、より多くの問題を知っておいた方が類題に対応でき有利になります。また、数年おきに出題される問題などもあるため、3年よりも前に出題された問題がその年に問題になる可能性もあり、そのような場合にも対応できます。
たくさんの問題を知ることはマイナスにはならないので、過去10年分は経験しておくと良いでしょう。
最低3周する
過去問学習の際は、決めた年数分を最低3周しましょう。3周しなければ内容を覚えることができず、過去問学習の意味がなくなってしまいます。1周ごとに以下のようなことを意識して勉強を進めると効果的です。
1周目 | まずは1年分ずつ本番と同様に問題を解いていきましょう。採点後、問題ごとに「正解した問題」「間違えた問題」「正解したけどその理由が分からなかった問題」の区別をつけ、後者2つについては解説を読んで理解するようにしてください。 |
2周目 | 1周目と同じ内容を繰り返します。この時点で、「正解して解説までできた問題」については復習する必要はありません。 |
3周目 | 本番どおり問題を解き、解説までできない問題を徹底的に勉強していきます。 |
間違えた問題は解説できるようになるまで繰り返す
一度でも間違えた問題は、正解するだけでなく解説までできるように繰り返し解きましょう。個人差はありますが、同じ問題を2周3周すると問題や解答を覚えてしまいます。そのため前回間違えた問題が正解して、「解けるようになった」と勘違いしてしまうことがよくあるのです。
宅建あるあるですが、これは内容を理解できているわけではなく問題を覚えてしまっているだけです。問題の形式が変わったときに対応できなくなってしまうため、正解が分かっている場合でも「こういう理由だから答えは〇」というように解説しながら解き、採点時に解説を読み直して理屈が合っているかどうかを確認しましょう。
また、同じ問題を何度も間違えてしまう場合は、苦手に感じている分野の可能性があります。その場合はテキストから読み直し、理解して解くことを繰り返し行うと良いでしょう。
宅建過去問学習の注意点
過去問学習をする際に注意すべき3つのポイントがあります。
- 最新版を購入して使う
- 自分が読みやすい本を選ぶ
- 解説も必ず読んで理解する
以下でそれぞれ詳しく解説します。
最新版を購入して使う
テキストと同じですが、過去問集は最新版を購入しましょう。「過去問は問題が変わらないのにどうして?」と思うかもしれませんが、内容が変わってしまうのは“解説”です。法改正によって、法令の解釈や解答自体が変わってきます。
そのため過去問の中でも「この年は1が正解だったけど、法改正後の今は3が正解になる」ということもあり得ます。最新版であれば、そういった内容も解説で表記されているため対応ができます。たった1年古いという場合でも使用は避け、最新版を購入しましょう。
自分が読みやすい本を選ぶ
こちらもテキスト同様、自分が読みやすいと感じるものを選びましょう。過去問集にもさまざまな種類があり、出版社によって文字の大きさや解説の文字量、レイアウトなどが異なります。また解説がすべて後半のページに集約されているもの、あるいは1問ずつ問題の直後に解説があるものなど構成が異なる本もあります。解説の読みやすさだけでなく、“自分が勉強しやすい流れになっているか”で選ぶのも検討材料の1つです。
「たくさんある中でどの過去問集を選べば良いか分からない」という人は、まずテキストと同じシリーズのものを確認してみると良いでしょう。
解説も必ず読んで理解する
過去問は解説まで読んで理解するようにしましょう。問題を解いて正誤を知るだけでは何の対策にもならず、同じ問題が出ても間違えてしまいます。「なぜ間違えたのか」「なぜ正解したのか」をきちんと自分で説明できなければ理解できているとは言えません。
解説にはなぜその解答になるのかが述べられているため、しっかりとそこで理解して類題が出た際にも対応できるようにしておきましょう。解説の内容が難しいと感じた場合は、テキストで同じ分野を見返すと言葉が砕けて理解しやすくなります。
過去問学習とあわせてやるべきこと
過去問学習で試験勉強を完結させると、合格できる確率はまだ70%程度といったところです。どのような問題にもすぐ答えられるよう瞬発力や応用力を習得することも必要です。以下では、本番で実力を発揮するために必要な取り組みを紹介します。
模試を受ける
宅建試験の直前対策としてよく挙げられますが、模試を受けることは非常に重要な試験対策となります。
模試は本番試験のシミュレーションができることに加え、模試で出題された問題が本番にも出る可能性があるなど、模試を受けることで本番に活かせるメリットが複数あるからです。
模試を受ける数は多ければ多いほど良いです。1回受けるだけでも得られるものがありますので、模試を受けて合格に近づけていきましょう。
スマホアプリの活用
スキマ時間を使って勉強できるスマホアプリを活用しましょう。スマホアプリでは過去問や模試の問題を解けるだけでなく、一問一答形式や四択形式の問題を解くことができます。そのためより多くの問題を解くことができ、正しい答えを即時に導くための瞬発力が身に付きます。
また、勉強時間や正答率など自身の勉強内容を把握できる分析機能があったり、ライバル(仲間)と情報を共有できる掲示板があったりするのでモチベーション維持にも有効です。
スキマ時間を有効に活用でき、やればやるだけ知識が定着しやすくなるため、効率的に勉強することを重視するのであれば、スマホアプリを使うことをおすすめします。
まとめ
宅建試験の勉強に過去問は欠かせない存在であり、ほとんどの人が過去問学習に重きを置いています。ただし過去問に偏りすぎてしまうと知識も偏ってしまう可能性があり、勉強を過去問のみとするのは試験対策として不十分でしょう。
他の勉強法と組合せるなど、合格に近づけられる正しい勉強法で過去問を活用するのがベストです。

Saaya

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