賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「厄介な空室を決める策」です。
厄介な空室こそ繁忙期で決め切る
さまざまな要因が絡むからこそ、冷静な分析・丁寧な対話を
こんにちは、コンサルタントの萩原です。
前回のコラムでは、繁忙期に稼働率を上げる意義をお伝えしました。稼働率が上がって空室が減れば、日々の業務負荷が下がるためオーナー面談や提案の機会が増え、結果的に管理物件の収益改善や管理解約の抑止、そして会社の価値の底上げに繋がる――、だからこそ、繁忙期は空室解消に全力を注ぐ価値がある、そんな内容でした。
しかし、気合いだけでは埋まらない空室もあるものです。
条件が悪い? 設備が古い? それとも担当者の提案が甘いのか、オーナーが首を縦に振らないのか。さまざまな要因が絡み合う“厄介な空室”にこそ、冷静な分析と丁寧な対話が欠かせません。
「100項目分析」で全角度から提案

厄介な空室について「なんで決まらないと思う?」と上司に問われた際、「ネットには出してます」「内見はあるんですが」と答えるだけでは「じゃあ、なんで決まらないの?」と突き返されて終わりです。私も若手時代は毎週のように、決まらない原因を1件ずつ上司に詰められていました。管理会社の社員にはまず、空室原因を冷静に見極める“目”を鍛えることが求められます。今となっては上司の詰めも貴重な経験ですが(笑)、当時は必死でした。
しかし、繁忙期の最中においては、上司の詰めに耐える心の余裕など若手も持ち合わせていません。上司や会社も、若手の成長を待つだけの時間的猶予がありません。それでも厄介な空室は繁忙期で決めなければならない…、そんな時に役立つのが「空室対策100項目分析シート(図1)」です。
このシートは、室内設備や外観、共用部、条件面など、空室解消に役立つ100項目を網羅したチェックリストで、1番から順に入力していけば誰でも抜け漏れのない改善提案ができるようになるツールです。対象物件での各対策の有効性を「導入済・◎・○・△」等で評価し、担当者の意見を添えてオーナーに提案します。
膨大な数に思えますが、慣れてしまえばそこまで時間はかかりません。一方で、物件を全方向から分析したうえでの提案には、非常に高い納得感が備わります。また最大の利点は、冒頭で示した「目の鍛錬」が無理なく進むこと。要チェック項目と評価基準を定めて社内のノウハウを見える化すれば、ベテラン社員でも見落としがちな改善ポイントに誰でも気づけるようになり、自然と若手社員の育成にもつながるのです。
「物件評価シート」で認識のズレを解消

ただし、厄介物件の空室原因は物件にあるとは限りません。渾身の改善提案をオーナーに「うちの物件がそんなに悪いわけがない」と跳ね返されることもあります。担当者がいくら冷静に分析して提案したとて、オーナーとの間に“認識のズレ”があると、弱点改善・空室解消は大きく遠ざかります。このズレの解決に有効なのが「物件評価シート(図2)」の活用です。
このシートは「募集条件」「間取り」「立地・住環境」「物件の格」「設備機能」など10項目について5段階評価を行い、総合点とランク(A~E)を算出することで、物件の競争力を見える化するツールです。
また、このシートを担当者とオーナーが別々に入力すると、両者の“認識のズレ”が見える化される点が便利です。例えば、担当者が物件について「立地や日当たり」はとてもよい、「条件や設備機能」はあまりよくないと判定し、総合61点・Cランクと評価したとしても、オーナーは「条件や設備機能」をよいと認識しており71点・B評価をつけたりします。なぜ担当者とオーナーとでギャップが発生したのか、この点を近隣事例等の資料を用いて話し合うと、両者の評価が感覚的なものから市場のリアルに近づくと共に、担当者もオーナーの価値観を尊重しながら具体的な改善策を提案できます。
強い愛着や節約志向から「自分の物件は問題ない」「設備はまだ使える」と考えるオーナーには極めて有効なツールです。
即効性ある提案に絞って繁忙期の勝負
とはいえ、どちらのツールを用いた場合も相応の時間と労力を要します。できるだけ丁寧な分析・提案は心がけたいですが、繁忙期の今は「リノベ」のような中長期策ではなく、“即効性”のある対策を採用してもらえるよう提案を調整しましょう。
具体的には、期間限定でフリーレントやADをつける条件調整や、原状回復のついでで出来る低コスト設備の導入、また内見時の交渉準備として、一定の家賃減額や入居時期調整、老朽設備交換(エアコン等)などの事前承諾の提案を優先します。そしてもちろん、自分たちは募集写真やコメントの工夫、仲介店への営業、空室の匂い・汚れチェックなど、できることを全て実施しましょう。
管理をしていれば必ず現れる厄介な空室。繁忙期で決め切れなければ、次のチャンスは半年、あるいは1年後かもしれません。この状況を打破するのは、結局は地道な分析とオーナー提案の積み重ね、最後は「決めたい!」という気持ちです。かつての私も、厄介な空室を前に「あと1週間で絶対決める!」と意気込み、ギリギリまで対策に奔走していました。ゴールはもう目前。最後まで粘り強く、チーム全体で「決め切る」意識をもって春を迎えたいですね。
















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