供給量の低い今だからこそ早期成約が見込める
ペット不可からペット可への切り替え
オーナー提案のトークに役立つ小ネタ集「空室対策100選コラム」
今回、注目する空室対策は「ペット可」です。
空前のペットブームが巻き起こる昨今。クロス・マーケティングの調査によれば、2024年時点で日本国内のペットの飼育率は28.6%となっています。一方で、LIFULL HOME’Sの調査によると、掲載物件のうち「ペット可」の割合は、2022年3月時点の12.9%から2025年3月には19.3%まで上昇。4年間で6.4ポイントの伸びを見せていますが、それでも全体の2割には届いていません。ペットの飼育率と比較すると、物件の供給が明らかに追いついておらず、ペット可物件を探す人にとっては「早い者勝ち」の状態となっています。
なお、ペットを飼えない理由で最も多く挙げられたのは「集合住宅で禁止されているから」という回答。裏を返せば、「ペット可」に変えるだけで、この潜在需要にアプローチできるともいえるでしょう。
オーナー様にはぜひとも提案したい施策ですが、ペット不可からペット可への切り替えには越えなければならないハードルがあります。
焦って切り替えてクレームやトラブルにつながらないよう、以下の点に注意して丁寧な事前準備を行ないましょう。
既存入居者との合意形成や運用ルールの整備は丁寧に
■合意形成まで
切り替えの際には、ペット不可であった物件全体をペット可へ変更することになるため、既存入居者がいる状態で即変更するわけにはいきません。入居者の中にはペット可となることを望ましく思っていない人がいる可能性も十分にあり得ます。
一方的に変更に向けて話を進めてしまうと、こうした入居者の反発を招き、退去やクレーム、引っ越し代や立退料の請求など、かえってオーナー様の負担や損失につながるリスクがあります。可能な限り、入居者を対象にした「アンケート調査」などを実施し、切り替えにおけるリスクの大小を確認することから始めましょう。
なお、アンケートの反対理由に「動物アレルギー」が含まれる場合は特に注意が必要です。強引なペット可への切り替えが原因で健康被害が発生したと立証されてしまうと、貸主側の責任を問われる可能性もあります。この時は、変更の保留や該当する入居者への住み替えを検討する、住み替えまでの猶予期間を設定する、場合によっては引っ越し費用の一部負担などといった対応で、合意形成に向けた措置を進めていきましょう。
■契約段階でこそ決めておきたい飼育条件
無事に合意形成ができたとしても、気は抜けません。
途中でペット可に切り替えた物件で管理会社が後悔する原因の多くは、「運用ルール」の甘さにあります。後から条件を追加するのは難しいため、変更のタイミングまでに想定できるクレームやトラブルに対して防止策や対応策を設定し、契約書にまとめて落とし込んでおくのがポイントです。
契約書にまとめておきたい事項として、例えば次のようなものが挙げられます。
▼飼育頭数の上限を定める
飼育頭数が増えるほど、また飼うペットのサイズが大きくなるほど、鳴き声関連のクレームや、汚れ・キズによる原状回復費用が増える傾向にあります。猫・小型犬であれば1~2頭までと定めるのが一般的です。
▼ペット飼育承諾書など、提出書類を求める
入居者がどのようなペットをどう飼育するつもりかを把握するために、書面にて申請を求めましょう。ペット飼育承諾書には、種類・頭数・性別・生年月日・ワクチン接種歴・しつけ状況などを記入してもらいます。また、狂犬病ワクチンは年に1回の接種が義務付けられているため、新規申し込み時や更新時には「狂犬病予防注射済票」も提出してもらうよう契約条件に加えましょう。

▼原状回復費用確保のため、退去費用を明記する
ペットを飼育するとき、引っ掻き傷や排泄物・嘔吐物による汚れなど、室内のダメージは避けられません。場合によっては、下地(コンパネ)の張り替えや建具の交換などが必要になるほどお部屋に深刻なダメージを残すことも。オーナー様の心理的には、膨大な原状回復費をなるべく多く借主に負担してほしいところでしょうが、国土交通省が定める「原状回復ガイドライン」によれば、借主が修繕費を負担するのは、通常損耗を超える故意過失によるものに限られます。無理な請求をしてトラブルに発展してしまわないよう、ガイドラインの範疇で請求を行いましょう。
また、ペットを飼育する新規入居者には敷金へ家賃1~2ヶ月分を上乗せする、敷引き特約を設けるといった内容をあらかじめ契約書に盛り込んでおけば、ペット不可物件よりも高額になりがちな原状回復費がスムーズに精算できるため安心です。
費用負担について入居者と事前の約束をしておくことで、オーナー負担への軽減と退去費用にかかわるトラブル回避が見込めます。
■運用ルールの作成
ただし、ペットの引き起こすトラブルは、契約書だけではカバーしきれないことも多いもの。日々の暮らしに関するルールは別途「運用ルール」として整備し、入居者に周知しておきたいものです。
例えば、無駄吠え防止の努力義務・共用部内での排泄禁止・室内での排泄物の管理の徹底・共用部でのペットの移動は入居者が抱きかかえること・バルコニーやベランダでの飼育を禁止する…などの項目を飼育ルールとして明文化しておくと安心です。
こうした決まり事は、入居時だけではなく、契約更新のタイミングでも入居者に改めて周知・確認してもらうよう案内をすることで、ルールを守る意識が薄れてしまうことを防ぎます。
より詳しく知りたい方は、こちらのコラムも参考にしてみてください。
一歩踏み込んで「ペット共生型物件」へのリフォームも
冒頭で紹介したLIFULL HOME’Sの調査によれば、掲載日数で見たとき、ペット不可物件が平均83.4日で成約に至るのに対し、ペット可物件は平均66.8日と、16.6日ほど早く決まるデータが出ています。早期成約が見込めるとなれば、長期空室に悩むオーナー様におすすめするには十分な理由になるでしょう。
また、「リフォームをしたり、設備を導入してでも今の空室を埋めたい」というオーナー様がいらっしゃるのであれば、単なる「ペット可」の提案に留めるよりも、一歩踏み込んでより差別化が狙える「ペット共生型」を提案する選択肢もあります。
「ペット可」はほぼ初期費用ゼロで始められるのが最大のメリット。ただし、部屋の損耗は避けられないため、築古物件など「間口を広げて入居者を確保したい」という場合に向いている空室対策です。
一方で、ペット共生型賃貸とは、「人間とペットが一緒に快適に暮らすことを前提に設計・管理されている賃貸住宅」のこと。単にペットの飼育が許可されているペット可物件とは違い、ペットと飼い主がストレスなく過ごせる工夫が施されていることから、ペット飼育者への強力なアピールが可能となり、家賃アップも狙えます。
ただし、共生住宅は、実現のために設備投資が必要になるうえ、「ペットとの暮らし」を重視する入居者がメインターゲットになるため、実質的には募集時の間口が狭まります。訴求力アップと需要数減のバランスに注意しましょう。
ちなみに、ペット共生型へリフォームする際には、次のような設備を導入したり、ソフト面の配慮を行なうと、ペット飼育者への有効なアピールとなります。

・足洗い場
散歩から帰ってきたペットの足を洗えるような設備を用意すれば、共用部や室内に砂や泥を持ち込まれることもなく清潔が保てます。この際、シャワーヘッドはマストで取り付けましょう。
・排泄物専用ゴミ箱
犬の糞はたんぱく質が多く、トイレに詰まりやすいため、可燃ごみとして捨てることが一般的です。この点、共用部にペットの排泄物専用のゴミ箱を設置すれば、散歩後に処理をすることができ入居者に喜ばれる便利な設備となるでしょう。
ただし、設置する場合は、廃棄物処理業者と契約するなど回収・廃棄にコストがかかる旨をオーナー様と確認しておきましょう。
・リードフック
一時的にリードを繋いでおけるフックは、郵便受けやオートロックパネルのあるエントランスに設置すれば手が塞がることがありません。さらに、各住戸の玄関ドアの脇や室内側の玄関などにあると、鍵を出す・鍵をかけるときに便利です。
・ペット対応床材
滑りやすい床を歩いたペットが股関節を脱臼してしまうことも珍しくありません。床材を選ぶ際には、傷が付きにくく汚れが落ちやすいだけではなく、クッションフロア、カーペットタイル、防滑ビニルなど「滑りにくい」素材を採用しましょう。
・ペット対応クロス
ペットの飼育には引っ掻き傷や排泄物の汚れなどは避けられません。クロスには防キズ加工、消臭機能付き、抗菌作用付きフィルムが施された機能性のある特殊クロスを採用しましょう。ただし、傷や汚れが付くのはおもに下の方と決まっているため、下半分のみを張り替えるようにできれば退去時の原状回復費用を抑えることができます。例えば、見切り材を入れて上下に分け腰壁風にすれば機能性とおしゃれが両立できるでしょう。
・キャットウォーク、キャットタワー
飼育できる動物を「猫」に限定したペット共生型物件なら、差別化策としてキャットウォークやキャットタワーなどを室内に設置する方法も。なお、施工場所や耐荷重、取り付け強度は事前にしっかり確認しておく必要があります。
ペットが家族の一員として受け入れられている今の時代。ペットを飼いたい、ペットと一緒に暮らしたいという入居者のニーズは、今後も高まっていくでしょう。こうしたニーズに応えることは、空室解消や競争力強化につながります。
まずはオーナー様のお考えや予算をヒアリングし、そのご意向と照らし合わせたうえで、「ペット可」と「ペット共生型」の選択をはじめ、物件にとって最適な形を見極めながら提案してみましょう。
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