「オフィスを飛び出しやってみた。」
このコーナーは、普段PCの前にはりついてばかりのマーケティングチーム(MT)が、賃貸管理の現場を知るべく、PM会社「株式会社アートアベニュー」のスタッフについてまわる企画です。
【レポート】家賃滞納の果て…強制執行の現場を目撃
強制執行とは
督促に応じず家賃が一定期間支払われない場合、貸主は借主との間の信頼関係の破綻を理由に契約解除を申し立てることができます。
契約解除の通知は内容証明郵便にて行いますが、しかし、通知をしただけでは、なかなか退去とならない借主が多いのが現状です。
オーナー様や管理会社としては、一刻も早く出て行ってもらいたいところですが、強制的に部屋から追い出したり、鍵を交換して建物に入れないようにしたりする「自力救済」はNG。明け渡しを求めるなら法的な手段に則らなければなりません。
明け渡しまでには以下のような手続きを踏みます。
明け渡しまでの流れ
- 提訴し明け渡し訴訟へ(この段階でも督促は続きます)
- 判決で明け渡しが言い渡される
- 明け渡しの催告(お部屋を訪問し、強制執行の日を告知。強制執行の約1か月前)
- 強制執行へ
今回強制執行で訪れたのは…
2019年10月某日、この日訪れたのは神奈川県内の築32年、5階建てのマンション。
対象となったのは3DKのお部屋。連帯保証人は立てずに、保証会社を利用した契約でした。
このお部屋を契約していたのは50代の男性。
広めの間取ですが、家賃が比較的安めということもありお一人で住まわれていたようです。
家賃滞納発生より、実に10か月近くが経っていたこの日。いよいよ強制執行です。
現場に着くと、残置物を詰め込み運搬する大型のトラックがスタンバイ。
お部屋に向かい明け渡しの瞬間に立ち会ったわけですが、ご本人はおらずでいわゆる夜逃げの状態でした。
管理会社・保証会社・執行官・立会人と関係者が集まり、執行官による在宅確認と説明の後、鍵を開けて早々と数人のスタッフが部屋の荷物を運び出していきます。
家賃が滞納されていた部屋はどんな部屋?生活が見えてきた!
残念ながら作業中の写真撮影はNGでしたが、部屋に残されていたのは大量の漫画にパソコンやその周辺機器。荷物が趣味を物語っていますね。
米などの食品や洗剤といった日用品からは生活感が漂ってきましたが、電気&ガスは供給が止まっていたようです。
ちなみに、よく聞く「ゴミ屋敷になっていた」「ビールの空き缶が散乱している」といったことはありませんでした。
「1人暮らしだからあまり荷物はないだろう」と踏んでいましたが、部屋の面積が広い分、残置物が多く、予想以上に時間がかかりました。
残置物は一定期間保管され、借主による引き取りを待ち、引き取られなかった場合は競売に売却されるのが一般的ですが、今回は催告時に残置物の所有権放棄を書面で交わすことができていました。
引き取り保管というひと手間が省けて、コストカット実現ですね。残置物の所有権放棄はぜひとも同意を得ておきたいところです。
そうこうしているうちに全ての荷物が運び出され、お部屋は空っぽに。
数年に渡り人が住んでいた部屋ということで、家具や大型家電を設置していたと思われる箇所にはたっぷりと埃が溜まっていましたが、特に汚れが目立っていたのはお風呂場。随分と傷んでおり、クリーニング代が高くつきそうです。
最後は督促担当のスタッフが華麗なドライバーさばきを見せながら手際よく鍵交換。
これにて一連の作業は終了です。
家賃滞納の末路
さて、今回強制執行がなされましたが、今後どのような影響が出るのでしょうか。
まず、信用の問題。利用していた保証会社によっては、滞納の記録をデータベースに登録させることになっています。このデータは他の賃貸保証会社や金融機関の審査に使用されるため、この先ローンを組むといった場面で審査が通りにくくなるでしょう。
うーん、大変だ。
また、今回はすでに退去済みでしたが、もちろん、住む場所もなくなってしまったわけです。
実家に帰れればいいですが、今後新たに部屋を借りるのもハードルが高いでしょうね。
というわけで強制執行の現場に行き、レポートをお届けしているわけですが、作業としては淡々と進んでいった印象。
ですが、この日に至るまでには、再三に渡る督促や法的手続きを踏んできたんだなぁと思うと考えさせられます。
積み重なった滞納額もですが、裁判費用など数十万、数百万円もの費用も発生しているわけですし。
その一方で、家賃を滞納し続けてきた借主にもそれなりの事情があったのではないかと推測すると少しばかり胸が痛むのも事実。
ほろ苦い取材となりましたが、なかなか顔の見えない貸主と借主であっても、両者の間の信頼関係の大切さを感じさせられました。