権利関係

宅建<権利関係>攻略法

投稿日:2022年6月8日 更新日:

「 権利関係 の勉強が難しくてなかなか進まない…」
「どう勉強すれば権利関係で点を取れるの?」

権利関係は宅建学習の中でも、多くの方が苦手とされる分野です。そのわりに出題数が多く、みなさん勉強の途中で頭を悩ませてしまいますよね。私が宅建の試験勉強をしていたときも、勉強を諦めたわけではありませんでしたが試験では散々な結果でした。

宅建試験までにこの分野を完璧に克服することは難しいかもしれませんが、少しでも苦手意識をなくせるよう、今回は権利関係の攻略法について掘り下げて解説していきます!

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権利関係とは

権利関係は、「契約に関すること・契約から生まれる権利・義務に関すること」の学習が中心となります。具体的には以下の項目を学習していきます。

  • 民法…物と人、人と人の間での売買・賃貸借などの契約に関する基本的なルールを定めた法律です。原則や例外などの考え方が重要になってきます。民法からは10問出題されます。
  • 借地借家法…「借地」「借家」の文字通り、土地を借りることや、家を借りる際のルールを定めた法律です。借地から1問、借家から1問の計2問出題されます。
  • 区分所有法…「マンション法」とも呼ばれる区分所有法は、分譲マンションの区分所有等に関するルールを定めた法律です。マンション管理や区分所有者(住民)同士の決まり事をつくり、トラブル防止を図りマンションの運営・保護を円滑にすることを目的としています。区分所有法からは、1問出題です。
  • 不動産登記法…不動産の登記に関するルールを定めた法律です。登記の申請義務のある人や項目、申請までの期間、掲載される情報などが決められています。不動産登記法からは1問出題です。

全体の問題数50問から権利関係の分野は14問出題され、この分野でどれだけの点を確保できるかが重要になってきます。権利関係の学習は、理解することがとにかく大事です。ただし、すべてを理解しようとすると泥沼にハマってしまいます。

法律はとても奥が深いので、狭く、やや深く学習していくのが無難。民法に関しては法改正が度々されているため、最新の内容をしっかりチェックしておくと良いでしょう。

過去の出題傾向

権利関係における過去の出題傾向を押さえておけば、難しいこの分野を攻略できる近道になります。権利関係全体としては問題文が長く、言い回しが難しく、なにを答えなければならないのかが分からない、というような傾向があります。

また、項目ごとの傾向としては以下のとおりです。細かい項目に分けた出題傾向と重要度を表にまとめています。

項目 傾向・重要度(4段階)
制限行為能力者制度 ★★
意思表示 ★★★★
代理 ★★★★
時効 ★★★★
条件・期限・期間
不動産物権変動 ★★★★
所有権・共有、地役権等 ★★★
担保物権
抵当権、根抵当権 ★★★★
連帯債務・保証債務等 ★★
債権譲渡 ★★★
売買 ★★★★
債務不履行・契約の解除 ★★★★
弁済・相殺 ★★★
賃貸借 ★★★★
その他の契約
不法行為 ★★★
借地関係 ★★★★
借家関係 ★★★★
区分所有法 ★★★★
不動産登記法 ★★★★

頻出項目

以下の項目は、過去10年で毎年出題されている頻出項目です。権利関係が苦手な方も、最低限の理解を深められるよう、以下4つの項目についての学習に注力しましょう。

  • 相続
  • 借家関係
  • 区分所有法
  • 不動産登記法

攻略・学習法

権利関係を全体的にどのように学習していけば良いか、攻略するためのポイントがあります。以下のポイントを項目ごとの学習法に活かしていくことが重要です。

〈POINT〉
1.図示をして事実関係の整理をする
2.民法の学習を重点的に行う
3.暗記をしようとしない

図示をして事実関係の整理をする

権利関係は問題文が複雑で、ただ読むだけでは理解するのが難しいものが多いです。そのため事実関係を整理するために図示をすれば、見てイメージしやすくなり頭が整理されるので、内容も理解しやすく解答のスピードも上がってくるでしょう。

民法の学習を重点的に行う

民法の出題数が多いということもありますが、民法は他の項目・分野における基礎的な考え方となります。

“民法ではこのような考え方である”
“この場合は民法よりこの法律が優先される”

などと基準にされることが多いため、重点的に学習することをおすすめします。民法がなんとなく理解できれば、権利関係の民法以外の特別法がより解きやすくなるでしょう。

暗記しようとしない

まず事例と結論を丸暗記するのは、ほぼ不可能です。また、過去問の問題がそのまま出題されることも少ないため、問題文や回答、解説を丸暗記したところで、他の問題が出たときに対応できません。そのため、やはり「理解」することが重要で、その法律の目的をよく考えて解くようにしましょう。

項目ごとの学習法

以下は項目ごとの学習法です。上記のポイントをしっかり頭にいれた上で、項目ごとの学習にもコツがあるので参考にしてみてください。

民法(出題数:10問)

民法は、私たちが生きる資本主義経済社会での原則を規定としています。権利に関することや法律行為、相続関係など、ふだん法律に触れることが少ない方にとってはとても難しい内容であり、勉強を始めるのも億劫になってしまうのではないでしょうか。学習量も膨大になり、なにから手をつければ良いか分からない!という方は、出題頻度の高い上述の「頻出項目」から学習を始め、力をつけていくと自信につながるでしょう。

例題・解説

抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

①債権者が抵当権の実行として担保不動産の競売手続をする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要があるが、対象不動産に関して発生した賃料債権に対して物上代位をしようとする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要はない。

②抵当権の対象不動産が借地上の建物であった場合、特段の事情がない限り、抵当権の効は当該建物のみならず借地権についても及ぶ。

③対象不動産について第三者が不法に占有している場合、抵当権は、抵当権設定者から抵当者に対して占有を移転させるものではないので、事情にかかわらず抵当権者が当該占有者に対して妨害排除請求をすることはできない。

④抵当権について登記がされた後は、抵当権の順位を変更することはできない。

ー平成25年度【問5】

正しいのは②です。
建物のみ手に入れても、敷地が利用できなければ意味がありません。また、借地権付き建物の場合、「借地権と一体となることで建物の価値が初めて生じる」ことを忘れてはいけません。

借地借家法(出題数:2問)

借地借家法は人が生活の基盤としていることに直接関係している、とても重要な内容になっています。したがって、民法の規定だけでは妥当な結論を得ることができない場合もあるため、「賃借人(借主)の保護を目的」に作られた法律なのです。

この項目は重要かつ内容も濃いのでしっかり勉強しておきたいところですが、出題される問題数は少ないのです。そのため、民法と借地借家法との違いについて、意識して勉強しておくと良いでしょう。

例題・解説

AがBに対し、A所有の甲建物を3年間賃貸する旨の契約をした場合における次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか(借地借家法第39条に定める取壊し予定の建物の賃貸借及び同法第40条に定める一時使用目的の建物の賃貸借は考慮しないものとする。)。

① AB間の賃貸借契約について、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書による等書面によって契約すれば足りる。

② 甲建物が居住の用に供する建物である場合には、契約の更新がない旨を定めることはできない。

③ AがBに対して、期間満了の3月前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、その期間は定めがないものとなる。

④ Bが適法に甲建物をCに転貸していた場合、Aは、Bとの賃貸借契約が解約の申入れによって終了するときは、特段の事情がない限り、Cにその旨の通知をしなければ、賃貸借契約の終了をCに対抗することができない。

ー令和元年度【問12】

正しいのは④です。
賃貸人のAは、転借人のCにその旨の通知をしなければ、対抗することができません。何も知らない善意のCを保護するための考え方です。

区分所有法(出題数:1問)

区分所有法は先述のとおり、マンションに関する法律です。マンションは、一戸建てのように土地も建物も個人が所有できるわけではなく、土地や建物全体を、マンションの一室を所有している区分所有者のみんながそれぞれの割合で所有しています。みんなで共有して所有しているため、マンション内での決め事や管理・変更などは全体で統一した意思決定をしなければなりません。そのために法律で基準が示されています。

ルールを話し合うために集会が開かれるのですが、その際の「決め方」「数字(例:何分の何以上)」を特に意識して覚えるようにしておきましょう。

例題・解説

建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

① 区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して議決権を行使することができる。

② 区分所有者の請求によって管理者が集会を招集した際、規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、管理者が集会の議長となる。

③ 管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。

④ 一部共用部分は、区分所有者全員の共有に属するのではなく、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。

ー平成25年【問13】

誤っているのは①です。
賃借人のような、区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者でも、①のとおり集会に出席して意見を述べることは可能。ただし、議決権を行使することはできません。

不動産登記法(出題数:1問)

不動産登記とは土地や建物を所有している権利を明確にし、その不動産に関する物理的現況や権利関係を見えるものとして公示する目的で作られた登記簿への登記です。不動産業の実務ではこの登記簿と触れる機会は多々あります。物件の情報を調べるには登記簿謄本を取得するのが一番早いからです。

具体的にどのような内容が登記されているかというと、

・所有者(名前、住所)
・所有者がいつその不動産をどのように所有したのか(売買で取得したのか、相続で取得したのかなど)
・土地や建物の所在、面積など
・抵当権(銀行などからお金を借りてその不動産を購入した際に記録されるもの)など

一部ですがこのような内容が記されており、以下の見本のようなものです。実物を見ると理解が早いので、機会があればぜひ見てみてください。

例えば近くの法務局へ行き、自分が住んでいる住所や実家の登記簿謄本を取ってみても良いでしょう。実際の登記簿は、その不動産の歴史を見ることができ、不動産ごとに異なる記載がされています。掘り下げていくと、なかには読み解くのが難しいものもありますが、宅建試験の対策としてはそこまで深く理解する必要はありません。出題も1問なので、テキストに記載されている基本事項をしっかり理解し、過去問を完璧にしておけば問題ないでしょう。

例題・解説

不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。

① 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、所有権の保存の登記を申請しなければならない。

② 登記することができる権利には、抵当権及び賃借権が含まれる。

③ 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から1月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

④ 区分建物の所有権の保存の登記は、表題部所有者から所有権を取得した者も、申請することができる。

ー平成28年度【問14】

誤っているのは①です。
所有権取得の日から1月以内に申請の義務があるのは、「所有権の保存登記」ではなく「表題登記」です。「所有権の保存登記」は任意となっていますので、要注意。

権利関係におけるちょっとした裏技

「どうしても理解できないし問題も繰り返し間違えてしまう…」

そんな方はこのように考えてください。「法律は弱い立場の人を守るためにあるのだ!」と。そのように考え問題を解くと、比較的正解に導きやすくなっています。

例えばこのような問題の場合、

AがA所有の甲土地をBに売却した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

①Aが甲土地をBに売却する前にCにも売却していた場合、Cは所有権移転登記を備えていなくても、Bに対して甲土地の所有権を主張することができる。

②AがBの詐欺を理由に甲土地の売却の意思表示を取り消しても、取消しより前にBが甲土地をDに売却し、Dが所有権移転登記を備えた場合には、DがBの詐欺の事実を知っていたか否かにかかわらず、AはDに対して甲土地の所有権を主張することができない。

③Aから甲土地を購入したBは、所有権移転登記を備えていなかった。Eがこれに乗じてBに高値で売りつけて利益を得る目的でAから甲土地を購入し所有権移転登記を備えた場合、EはBに対して甲土地の所有権を主張することができない。

④AB間の売買契約が、Bの意思表示の動機に錯誤があって締結されたものである場合、Bが所有権移転登記を備えていても、AはBの錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。

ー平成28年度【問3】

正解は③です。

EはBが登記を備えていないことを知っていて、さらに高値で売りつけようとしている背信的悪意者に該当します。背信的悪意者は、不動産の取得を主張できる正当な利益を有する第三者ではありませんので、Eは登記を得ていたとしても、Bに対して甲土地の所有権を主張することができません。悪いことだと分かっていてやっていることは、契約や所有権移転という固い約束が取り付けられていたとしても、無効となるケースが多いです。

善意なのか悪意なのか、というところもしっかり見分けられるようにしましょう。

とはいえ、これだけで乗り切れるほど宅建は甘くはありませんので、どうしても解けない問題があったときの手助け程度に考えておきましょう。

合格点を底上げ!宅建「民法・権利関係」攻略のためのコツを徹底解説

まとめ

難しい分野ですが、権利関係のなかにも宅建業の実務で重要な点がたくさんあります。満点を目指す必要はないので、事例をイメージしながら少しずつ理解していき、苦手意識をなくして最低5割の得点を目指しましょう。権利関係を攻略する日も近いかもしれません!

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