賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「社内の改革者」です。
企業成長の原動力となる“改革者”を育む職場へ
新たな方向性へとチャレンジできる人材の重要性
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
皆さんの会社に「改革者」はいますか? 改革者とは現状・慣習に捉われず、改善のために挑戦し、新しい方向性を提案・実行する人を指します。常にクリティカルシンキングを実践し、リスクを把握したうえで受け入れ、これまでの常識を良い意味で壊していける人、とも言えるでしょうか。
会社の運営にはルーティン業務を淡々と着実にこなしてくれる社員も大切ですが、会社の成長のためには改革者となる人物も一定数必要です。特に、会社規模が大きくなる過程では、経営者だけで引っ張っていくことにも限界が生じます。部署・チームといった小単位の中だけで力を発揮する社員も立派な改革者であり、彼らの働きが経営層の手の届かない部分を補い、会社の原動力として作用します。
改革者が有する能力とは
2022年10月、全国の不動産業界の中で優れた取り組みを共有・表彰するイベント「ちんたいグランプリ2022」が開催されました。どの出場者の取り組みも素晴らしいものでしたが、個人的には人事・経理といったバックオフィス部署の方の取り組みが斬新で、まさに部署内の改革者だと感じました。このような社員の割合が増えてくると大小の業務改革が行われ、必然的に日々の仕事も洗練されていくでしょう。
ところで、そもそも改革者となりうる人はどのような思考を持ち、また能力を有しているのでしょうか。
ビジョナリー思考とクリティカルシンキング
表1.改革者に必要とされる能力(一部)
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表1は改革者に必要とされる能力の一部ですが、まずは明確なビジョンを持つこと(ビジョナリー思考)が挙げられます。ビジョナリー思考の持ち主は、常にあるべき姿(ありたい姿)を意識して、それに対して現状がどうかを把握しています。
ビジョン(あるべき姿)が明確でないと、人はどちらが「前」か分からず前進できません。一方、ビジョンが具体的なら現状の不足部分が明確に分かり、改善のための行動もとりやすくなります。なお、このとき課題発見の精度を高めるのが、論理的・客観的に目の前の情報の真偽や価値を評価する力(クリティカルシンキング)です。
ビジョナリー思考を持ち、クリティカルシンキングのできる人材は、流れ作業的に業務を行わず、常に「なぜ?」と自問し、業務の目的を理解して仕事をします。部署異動や転職で新しい環境に入ると、この部署(会社)はなぜこんなことをやっているんだろうと疑問に思うことがありますが、その疑問を何年も持ち続けられるようなタイプです。
改革者タイプの人材を採用
しかし問題は、そんな改革者をどのように会社の中に増やすかでしょう。
まず1つ目の選択肢は「採用」です。改革者タイプを採用するには、表1のような能力の有無を面接時の質問等で見極めることが必要です。例えば、5年後10年後の自分はどうなっていたいのか、今の自分に何が足りないと思うか、そのために今何をしているのか…、回答が具体的で細分化されている人ほどビジョナリー思考が強いといえます。
真面目で人柄が良いことも重要ですが、質問を繰り返して聞いていくことで仕事に対する考え方、思慮の深さ、資質・能力も見えてくるでしょう。
「あそび」で育む改革者の創造性
もう一つの選択肢は「育成」です。表1のような力をつけるための社員教育はもちろんですが、環境を整えるだけで社員が自ずと考えるようになることもあります。
例えば、「あそび」の用意。仕事には一定のあそびが必要とよくいわれますが、それは1日のスケジュールを「作業」できっちり埋めてしまうと、その人の創造力が死んでしまうからです。
とある企業では、就労時間の15~20%を「将来に向けた仕事」に使っているそうです。長期的に取り組んでいる計画を進めたり、将来に向けた打ち合わせをしたり…、普段接しない部署の人たちと雑談するのも「将来に向けた仕事」とのこと。
さすがに雑談2割は難しいですが、1日10分でも手を止めて、思考を整理し、ペンを片手に考えるだけでも何か発想が生まれそうな気がしませんか。もちろんその時間を創出するには、人員に余裕を持たせたり、業務をアウトソーシングするなどの工夫も必要かもしれません。それでも社員が進んで改革をしてくれれば、結果大きな利益をもたらしてくれるはずです。
最後に、今年の「ちんたいグランプリ」は2023年10月17日(火)に東京都内の会場にて開催が決まりました。同じ業界で働く人たちが日々忙しく仕事をこなしていく中でも時間を作り、創造力を膨らませ、いろんな人を巻き込んで進めてきた「改革」の発表をぜひ会場で聞いてみてください。きっと心の中に眠っている創造力を掻き立ててくれるはずです。