賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「他社・自社分析とターゲット選定」です。
管理業で生き残るなら最初にやるべき「3つ」のこと
こんにちは!オーナーズエージェント コンサルタントの萩原です。
12年間の賃貸仲介・管理会社での生々しい実体験を活かし、現場目線のコンサルや業務改善提案、セミナー・研修を日々行っております。
前回のコラムでは、賃貸管理会社の乱立事情に始まり、「業務見直しに繋がる8つの管理サービス」「業務効率化のアイデア」についてお話しました。
一見すると、管理会社のサービスは全国で似たりよったりです。
しかし、細かく分析していけば各社それぞれの特徴が浮き彫りになってくるもの。
今回は賃貸管理会社の生き残り戦略を進めるうえで、最初に必ずやるべき「他社分析」「自社分析」「ターゲット選定」の3点についてご紹介したいと思います。
敵を知り己を知れば百戦殆うからず!
「賃貸管理業でレッドオーシャンを勝ち抜きたい」「ライバルとの差別化を進めていくぞ」と思ったとき、ただ闇雲に対策するのはオススメできません。
先人の言葉にある通り、まず大事なのは情報を集めること。ライバル企業の強みや特色を把握し、自分たちの力量を知ることが必要です。
他社の強み・弱みを書き出していく!
幸い現在は情報化社会と言われるようになって久しく、敵の情報を入手するには大変便利な時代となりました。インターネットで検索すれば、ホームページや口コミから情報が簡単に手に入りますよね。
ライバル会社の情報を集める際も、まずはホームページに載っている管理料金やサービス内容、稼働率といった基本情報は忘れずにチェックしたいものです。どれもオーナーに見てもらおうと積極的に開示している情報ですので、他社の売りがどこにあるのか、すぐにわかるかと思います。
情報が集まったら次は分析に移ります。
自社と比べて他社の強み・弱みがどのようなものかを、分かる範囲で構いませんので書き出していきましょう。その際、次のようなポイントに注目すると言葉にしやすいかもしれません。
《他社の強み・弱みを考えるポイント》
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自社分析はSWOT分析・クロス分析で明らかに!
最も重要なのは自社分析です。己の分析というのは簡単に見えて意外と難しく、強み・弱みを咄嗟に聞かれても多くは出てこないものです。
そこで今回、私がオススメするのが「SWOT分析・クロス分析」という2つの手法です。
SWOT分析では、自社の強み(Strength)・弱み(Weakness)といった内部環境と、自社を取り巻く業界の機会(Opportunity)・脅威(Threat)といった外部環境を、それぞれプラス・マイナスの2面に分け、4つの分類により自社の特性を客観的に診断することができます。
まずは図1を参考にしながら、自社の強み・弱み(内部環境)、そして地域的な環境や市場の変化による機会と脅威(外部環境)について書き出してみましょう。
(図1.SWOT分析の4分類)
《SWOT分析例》 自社の強み(Strength)
自社の弱み(Weakness)
自社を取り巻く業界の機会(Opportunity)
自社の取り巻く脅威(Threat)
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ある程度書き出せたら、次に行なうのは「クロス分析」です。
表1のように内部環境と外部環境を交差させてみましょう。交差箇所にはそれぞれ下記のような問いかけがありますので、問いかけに答える形で自社の戦略を導いていきます。
(表1.クロス分析表)
《クロス分析の問いかけ内容》
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充分な情報収集・分析ができたら、「何の対策から始めるべきか」「優先順位はどうするべきか」「他社の良いサービスを自社でも取り入れるべきか」等を検討したうえで、差別化の第一歩目を踏み出していくことになります。
ぜひ皆さまもSWOT分析・クロス分析を使って自社理解を深めてみてください。
ほかにも分析にはさまざまな種類があります。参考までに、おススメできる手法を下記に掲載いたしますので、興味がありましたら調べてみてください。
【4P分析】
どんな製品(Product)を、いくらで(Price)、どこで(Place)、どのようにして売るか(Promotion)といった、マーケティングにおける4つの視点を組み合わせた分析手法。企業戦略の策定に有効。
【3C分析】
自社・競合・顧客のそれぞれをリサーチし、戦略を考える手法。
【ペルソナ分析】
商品・サービスをアピールする際に、具体的なターゲットとして、サービス・商品の典型的かつ重要なユーザー像を作るマーケティング手法。
【PPM分析】
ある企業が手がけるすべての事業について、市場成長率と市場シェアを把握し、今後の成長可能性という観点から位置づける手法。
「ターゲット」を明確にしてから攻めるのもアリ
分析の次に行なうべきは、顧客となるターゲット層の選定です。
力のある管理会社は全国どこのエリアを見ても複数存在しているものです。都市部はもとより、地方でも、実力の拮抗した会社が最低3〜4社は割拠しているレッドオーシャンですので、同じ客層を取り合うとなると苦戦は必至。
また、管理会社同士の横の繋がりも強く、顧客を無理矢理奪いにいく、なんていう行為がご法度のエリアも目立ちます。
そこで戦略として注目したいのが、あらかじめ設定したターゲットのニーズに合わせて自社の強みを伸ばしていくという、特定のオーナーから「求められる」管理会社になる戦い方です。
下記に各ターゲットの戦略例を載せます。狙いによっては管理収入だけでなく将来的な売却等に繋がる可能性もありますので、検討する価値のある戦略と言えるでしょう。
【地主系オーナー】
例)相続相談ならなんでも受けますという戦略。建て替えや売却相談に繋がる可能性が高い。
【サラリーマン投資家】
例)サービス提供は全てIT。WEB上ですべての対応を行う戦略。サラリーマン投資家にはITリテラシーが高い方が多いので狙い目。
【区分所有】
例)一戸管理に特化。家賃管理が主になるため管理料を抑える戦略。入居後のトラブル対応が少なく、売買に絡めるチャンスも。
【8戸以下のアパート・マンション大家】
例)現場巡回や清掃、入居者対応の体制を整え安心経営をお届けする戦略。
【一般媒介のオーナー】
例)ご自身で対応するオーナーが多いので、部分的(家賃集金のみ)だけ管理。将来的に専任募集や管理に繋がる可能性も。
次回は「具体的な差別化対策」を紹介
いかがでしたでしょうか。
今回は他社と差別化を図るための事前準備として各種分析を中心に見てきました。
次回はオーナーが管理会社に期待することをジャンル別に分け、それぞれ考えられる差別化対策についてご紹介していきたいと思います。
※今回の記事内容をお読みいただき、分析手法についてアドバイスがほしい・実際に自社分析してみたい・業務の相談をしたいという方は、どうぞお気軽に萩原までご連絡ください。