賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「管理受託営業」です。
現場管理担当者を「営業」する気にさせるには?
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
業績が上がらない…、管理戸数が伸び悩んでいる…。悩みを抱える賃貸管理会社様をご支援させていただくと、いくつかの共通した問題点・改善ポイントに気がつきます。業績停滞から抜け出すヒントはどこにあるのか? 今回は「管理オーナーの管理受託営業」について考えます。
管理オーナーは通常業務の担当が口説くべき
新規管理受託のために、他の業務と兼任しない専属の営業チームや担当を設けている会社も多いかと思いますが、一方で、管理オーナーの中にも、既に管理をお任せていただいている物件以外に投資用不動産を所有されている方が多くいます。
できればそちらの物件もお任せいただきたい、と考えるのはどの管理会社も一緒でしょう。新規獲得にせよ既存顧客からの発掘にせよ、管理受託営業は会社を成長させるための重要な業務です。
とはいえ、管理オーナーのもとに受託担当が出向くとなると、今の管理物件の状況を把握するところから始まり、面識のないオーナーとの距離を縮めるだけで多くの時間を奪われてしまいます。
また、そもそも「別物件」の情報を得るところから始める必要があるわけで、そうなるとやはり管理オーナーへの「営業」は、普段の業務で関わりの深い管理部署のオーナー担当が担うべきでしょう。
しかし、実際に管理オーナーへの営業ができているかというと…、できていない会社がほとんどではないでしょうか。
オーナー担当にこそ営業チャンスがあり、かつ適任であるはずなのに、なぜできないのか。
「できない理由」から解決の糸口を探ってみましょう。
オーナー担当が受託営業「できない」「しない」理由
【1.時間的要因】普段の仕事で手一杯
せっかくオーナーと接する機会があっても、普段の業務で報告・提案することが多くあり、受託営業よりそちらを優先してしまうケースです。
募集している空室、老朽化した共用設備、困った入居者の対応など、報告すべき重要事項は山ほどあります。
しかし、たまにはオーナーがいま感じている悩みや将来のことに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。次の世代への事業承継、所有物件全体のキャッシュフローの悪化など、実は目の前の空室よりも大きな悩みがあるかもしれません。
また、普段の業務を優先しなければ!と考えているのは管理担当者だけで、オーナーが真に求めている話はそこではないかもしれないのです。
【2.知識的要因】管理契約の内容を知らない、説明できない
管理契約の詳細を知らないために受託の話題に触れられないケースです。
受託担当者レベルで話ができる必要はありませんが、せめて自社の管理サービスについて説明できる程度の知識はどんな社員にも持っておいてほしいところ。自社サービスに関する研修を実施し、管理受託パンフレット・管理委託契約書くらいは目を通させ、オーナーに聞かれそうな想定問答集を作っておけば解決できるでしょう。
【3.営業的要因】営業するとオーナーに距離を置かれると思っている
意外と多いのがこちら。
営業に慣れていない方は、保有資産や家族などのプライベートな情報をオーナーから聞き出すこと自体が「失礼なこと」と考えてしまいがちです。
もちろん尋問のように聞いては相手も嫌でしょうが、オーナーの問題を把握するために聞くぶんには全く失礼ではありません。
具体的に話をうかがい、「管理を任せてください」と伝えて初めてオーナーの検討が始まります。
コミュニケーションの取れている間柄であれば、その一言だけで距離を置くオーナーはいないでしょう。
【4.組織的要因】自分の仕事ではない、評価されない
表に出にくい隠れた問題がこちらです。
「それは管理受託担当の仕事でしょう」「余計な仕事を増やしたくない」と、会社の利益と自分の利益を別に考えているパターンです。社員の業務を縦割りする分業制の管理会社は、少なからずこの壁に突き当たります。
これを乗り越えるには、まずは会社の「評価」が必要です。
仮に担当部署でなくても、会社の利益となる活動・実績は会社をあげて評価すべきですし、多少のインセンティブや昇給基準に加えることで本人たちも意欲が湧いてくるものです。
きっかけを評価する「トス上げ制度」
では、1~4の課題を解決し、オーナー担当が受託の話をどんどん持ってくる…そんな理想の状況をつくるにはどうしたらいいでしょうか。
弊社で導入しているのが「トス上げ制度」です(表1参照)。バレーボールの攻撃パターンになぞらえたもので、受託担当の「アタック」につながった「トス」を評価する制度になります。
クロージング・成約まではできなくても、オーナーから情報を聞き出したり商談の機会を作ったり、受託担当に営業のきっかけを与えた(トスを上げた)社員は、全体の会議で発表され、成約になればインセンティブも支給されます。
トスを評価することで、受託担当以外の社員にも会社への貢献を実感してもらえるのです。
評価を受けた社員はより営業や商品理解に意欲を示すようになり、やがて「全員営業」の体制が構築されていきます。