賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「業務改革の進め方」です。
賃貸管理業は競争激化の時代へ
こんにちは。コンサルタントの高橋です。
菅義偉内閣が誕生して、まもなく1ヶ月。新内閣への期待からか、国内にも明るい話題が戻ってきたように感じます。大臣の面々も面白く、中でも私が期待してしまうのは「前例主義の打破」を任された河野太郎行政改革担当大臣。いきなり行政手続きにハンコを使用しないよう全省庁に要請するなど、その怒涛の行動力は「改革担当」にふさわしいでしょう。
しかし、感心してばかりもいられません。コロナショックの影響もあり、昨今は賃貸仲介会社や収益物件の売買会社など、これまで管理に力を入れてこなかった会社の事業参入も目立ちます。既存の管理会社は競争激化に巻き込まれること必至。それこそ業務改革によって無駄を省き、これまで以上に管理拡大に力を入れる必要があります。
とはいえ、仕事の変革は簡単ではありません。
世の管理会社の大半は、DX(デジタルトランスフォーメーション)にもついていけず、余剰リソースの作れていない状態でしょう。リモートワークにも挑戦したものの、結局やることが減ったわけでも効率が上がったわけでもなく、生産性は変わっていない…、真に効果のある改革は容易ではないのです。
改革を阻害する3つの理由
なぜ、必要と分かっていても業務改革は進まないのでしょうか。
その原因として特に多いのは次の3つです。
① 業務が属人化されているせいで無駄が見えない ② 従来のやり方を継承しており、個人の判断でやめられない ③ 管理解約につながりそうでルールを変えられない |
①業務が属人化されているせいで無駄が見えない
属人化の恐ろしいところは、ミスや非効率が外側から見えない点です。担当本人はこれまでのやり方が一番正しいと思っているのですが、他人が見ればすぐに無駄と気付くようなことを延々とやっていたりします。
②従来のやり方を継承しており、個人の判断でやめられない
これまでのやり方が一番!のパターンその2です。
特定のオーナーからの過剰な要求にイレギュラーで応えているケースなどが該当します。過去の担当から代々引き継いできた悪しき伝統のようなもので、「長年やってきた」という既成事実のために、非効率と分かっていても改善することができません。
③管理解約につながりそうでルールを変えられない
最後は、業務をやめたり変更したりすることでサービスが低下し、オーナーが離れてしまうのではと現状維持を選んでしまうケースです。
管理会社である以上、オーナーの心証を気にするのは仕方のないことではありますが、おそらく多くの管理会社がこれを理由に業務改革をあきらめた経験を持っていることでしょう。
こうして俯瞰してみると、業務改革を邪魔する①、②、 ③は「意外とたいしたことない」という印象ではないでしょうか。
①は業務の棚卸しで判明しますし、②は冷静に会社の利益と比較するだけで判断できます。
「利益貢献上位のVIPオーナー」であればイレギュラー対応も検討できるでしょうし、「厳しくて口うるさいオーナーだから」という理由での対応なら今すぐやめるべきです。
③は、仮に一時的な不利益を生んだとしても、最終的に管理会社の品質向上につながる変更ならオーナーにも納得してもらえる可能性が高いはずです。むしろ新たな価値をいつまでも提供できないためにオーナーが離れてしまうことを心配すべきでしょう。
しかし、それだけ分かっていてもなお、多くの会社は①、②、③を理由に改革を実施できません。なぜ改革を達成できないのか。そのヒントは、実は河野大臣のハンコ政策に隠れています。
「なぜ」を重ねて真価を計る
河野大臣のハンコ使用禁止要請、特筆すべきは「ハンコ存続の方向で検討中」と回答した省庁に「存続の理由の提示」を求めた点です。
成果を出すためにやっている以上、どんな作業にも必ずそれを求めている人と、求める理由があります。
しかし業務が細分化されていくと、時に「人や理由と切り離された作業」が発生してしまい、そうなるとニーズも理由も不明確なまま処理される「無駄な作業」が進行し始めます。
故に、業務改革の推進には「なぜ」と問うことが不可欠です。
なぜその作業が必要なのか。
なぜその人はそれを求めるのか。
その人は誰に求められているのか…。
なぜを重ねていけば、必ずどこかでその業務のゴール(要望の根幹)、そして要・不要の結論に行き着きます。
先述の①、②、③は、なかなか「なぜ」と問いにくい性質ゆえに改革の邪魔となるのです。
今回のコラムでもなぜ、という問いを敢えて繰り返しましたが、物事の本質的な解決にはなぜ、の問いが有効です。改革を推進したいならしつこいくらいなぜ、を繰り返しましょう。
「なぜ会社に一度戻るのか」
「なぜオーナー提案が少ないのか」
「なぜその日のうちに報告できないのか」
日常的な仕事ほど、なぜ、を突きつけ、改革の余地がないかを探ってみましょう。