賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「管理解約の防止」です。
増えない管理戸数、まずは解約理由を確認
こんにちは。コンサルタントの高橋です。
不景気に強く売上が安定する賃貸管理ビジネス。管理戸数を増やすべく受託営業に注力することはとても大切です。しかし、「せっかく受託をしても既存物件が次々と管理解約となってしまい、まさに三歩進んで二歩下がるの状態に陥っているんです」というお悩みも多く伺います。
そんな時、確認したいのは管理解約の理由(表1)です。
《表1.管理解約の主な理由》
|
売却によるオーナーチェンジや自主管理への変更はある程度致し方ないにしても、見逃せないのは「3.管理会社に対する不満」です。
その不満が全オーナーに波及するかもしれない以上、解約となるオーナーからは不満の内容を詳しく聞き出す必要があります。
しかし残念なことに、解約を希望するオーナーの大半はその理由を正直に言おうとしません。
これまでお世話になった相手だし、事を荒立てずに静かに去っていきたい…
そんな思いがあるのでしょうが、一方で、嫌な話を聞きたくない管理会社側も「管理料の安い会社に鞍替えした」「近くの管理会社に物件管理を集約したかった」など、なんとなく他責的な理由を報告するのみで解約を処理しがちです。
ですが、実態はどうでしょう?
私が受託営業をしていた頃は、新規オーナーから毎回のように、管理変更のきっかけとなった「ひどい話」を洗いざらい打ち明けられていました(苦笑)
結局、不満が溜まっているのですね。
言いたくないオーナーと聞きたくない管理会社、どちらの思いも分かりますが、しかし徹底的な解約理由の確認なくして解約抑止は始まらないのです。
潜在的課題への提案が解約抑止の肝
私もたくさんの不満を伺いましたが、中でも多かったのは「管理会社が提案をしてくれない」「言わないとやってくれない」といった理由でした。
実は、空室を決めてくれないことより、提案不足や能動性のなさに不満の根幹があります。そして、提案不足の不満が特に露呈しやすいのが、繁忙期です。
管理会社は繁忙期こそ提案を意識しなければなりません。
この時期は募集しておけば決まるだろう、退去・契約に忙しくて提案どころではない…と、つい放ったらかしの管理をしがちですが、シーズンの終わり際になって「この物件まだ決まってなかった! 提案も忘れてた!」なんてことでは、オーナーが今後のことを考えるのも無理のない話です。
管理会社の業務はその特性上、決められたワークフローに沿ったものが大半です。
解約を受けたら募集、退去したら原状回復、入居者から連絡があったら現地対応…
それに慣れてしまっているせいか、管理会社はこれから起きる潜在的課題への提案も二の次となりがちです。オーナーが最も空室を決めたいだろう繁忙期に、空室対策提案が後回しになってしまうのはまさに典型でしょう。
しかし、その「管理会社あるある」がオーナーの不満となる以上、私たちはもっと意識的に提案を増やす必要があります。
わかっていてもできない場合は、提案すべきタイミングでアラートが出る仕組みを作ってはいかがでしょうか。
例えば、
1.募集開始から2週間で申込みゼロの物件は、内見数・募集サイトの閲覧数を確認する、というルールを作る
2.基準以下の場合は次の一手を提案しなければならない(できれば提案内容も事前に決める)、という業務フローにする
これだけです。
長期空室の事実を可視化し、日常のワークフローに組み込むのです。
付加価値をつくり解約されない会社に
その他の理由として多いのは、コスト削減のための競合他社への乗り換えでしょう。
管理料、成約時の報酬、工事単価など、自社より条件がよい会社はいくらでも存在しますが、どうしようもないと嘆く前にできる工夫はあります。
例えば、解約したくてもできない仕組みづくり。決して高額の違約金を設定するとか強行手段の話ではありません(笑)
代表的なところでは、賃貸経営に役立つニュースやノウハウ、物件のレポート(リーシング・入居者対応・巡回報告)などを毎月提供する、といったことです。
もちろん全てを従業員が用意しては「提案」もできなくなりますので、外注やシステム活用で仕事を増やさないのが前提です。
有益情報がオーナーアプリやWEBで提供されれば理想的。貴社の情報力の高さと利便性に慣れてしまったオーナーは、他社からの誘いにも踏みとどまるでしょう。
管理解約の対策は、新規受託営業と比べてないがしろにされがちです。
停滞脱出のためには、解約理由を謙虚に受け止め、「穴をふさぐ対策」を実施することも大切です。