賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「社員の退職の防ぎ方」です。
間もなく訪れる繁忙期、どうにか防ぎたい「社員の離職」
不動産業の離職率は14.8%と高め
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
内定式の時期ですね。弊社でも無事に式が執り行われ、新たな仲間を迎え入れる準備が着々と進んでいます。そして、まもなく訪れる繁忙期。1年で最も多くの人員を必要とする期間だけに、できれば一人たりとも欠けることなくシーズンを迎えたいところです。
とはいえ、常に考えておかなければならないのが社員の離職リスクです。下記の表とグラフのとおり、不動産業(物品賃貸業を含む)における2020年の離職率は14.8%と、残念ながら産業分野別のランキングは下から数えたほうが早いようです。
賃貸管理会社の中でも、社員の離職による人材不足は課題としてよく挙がります。果たして現場ではどのような原因で離職が起きているのでしょうか。
出典:厚生労働省 令和2年雇用動向調査結果の概況:産業別・離職率(2020年)
過酷な入居者対応業務の実態
離職の理由は人それぞれですが、やはり多いのは「仕事のハードさ」です。特に入居者対応業務は激務であり、その厳しさから離職となることもしばしば。
現場担当者にヒアリングをしてみると、休みも関係なく会社や入居者から電話が鳴り、プライベートの時間が削られるだけでなく、メンタルも削られることは日常茶飯事。
長いときには2時間近くも入居者に怒鳴られ、結局課題は解決されない…、なんてことは、現場担当者の多くが経験されている話ではないでしょうか。そんな案件を常にいくつも抱えているのですから、よほど割り切れる性格でないと心が休まることはなさそうです。
現場へ駆けつけて対応してくれる専属部署が社内にあればまだいいのですが、そうでない場合は、解約精算・巡回報告書の確認・リフォームの提案など日々の業務に追われながら入居者対応を行うことになります。
そこでもう一つの離職の原因となるのが、「仕事のやりがい」です。
日々クレームに追われ、人より残業し、褒められることの少ない環境では、将来のヴィジョンがうまく描けなくなるのも頷けます。とはいえ、入居者対応は管理会社にとって必要不可欠な業務。誰かがやらねばなりません。
業界に身を置く私が言うのもなんですが、やはりこの労働環境はハードです。社員の離職を防ぎたいなら、何かしら特別な対策を打つべきでしょう。
社員に「やりがい」を感じてもらう3つの方法
対策1.教育とメッセージ
基本的にはどんな仕事にもやりがいはあるはず。それに気づく前に辞めていくのはもったいない…のですが、現実には多くの社員がやりがいを見出せずに会社を去っています。ならば、やりがいに気づいてもらえるような教育・会社のメッセージが必要でしょう。
例えば、担当に当事者意識を持たせるための教育はしているでしょうか。入居者はオーナーや管理会社にとって大事なお客様であり、そのお客様の要望にうまく応えられるかどうかは物件の空室率や収益性さえ左右します。
お客様窓口を担い、当事者として要望に応えるその仕事は重要業務なのだというメッセージを、会社は常日頃から担当者に伝える必要があります。
自身が事業の当事者であると認識できれば、本人にも自然と責任感や達成感が生まれ、仕事のやりがいに気づくのではないでしょうか。
対策2.社内表彰制度
自発的に、あるいは上司の言葉でやりがいを感じられるようになればいいのですが、全員がそんなに前向きというわけでもありません。時には近しい人間からの評価や称賛によって承認欲求が満たされる瞬間も必要でしょう。
例えば、社内で頑張っている人を社員の投票で表彰する「社内表彰制度」を運営し、担当者を表彰してあげることもモチベーションアップには有効です。人から認められることは誰でもうれしいものです。
対策3.自社でやらない仕事を決める
一方で、仕事の中には本当にやりがいを感じにくい、誰でもできる単純作業があることも事実です。また、内容がハードすぎてやりがいを感じる以前にドロップ・アウトしてしまう業務もあるでしょう。
単純でもハードでも、離職という選択肢が頭をよぎるような業務であれば、それが実現してしまう前に「社員の業務から外す」のも一つです。
管理会社は何でも自分でやろうとする節がありますが、アウトソーシング等によってハイリスクな業務を回避することもできるはずです。離職が減って大きな財産が会社に残るなら、その原因をお金で解決するのも合理的な方法と言えます。
人口減の進む現代、離職は事業存続にも関わる問題です。離職原因は社員にあると決めつけずに、社内の状況をよく観察し、社員の声に耳を傾けて、解決の糸口を探ってみましょう。