賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「人事評価制度」です。
人事評価を見直し、社員の「人材育成」を叶える
評価制度は会社を成長させる仕組み
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
加速するビジネス環境の変化に順応するべく、賃貸業界でも多くの企業が人事評価制度の見直しを検討しています。
人事評価制度というと、定期的に社員を評価し、昇給昇格や業績に応じた報酬を決めるための「基準」や「ルール」を想像される方も多いのですが、評価制度の最終目的は、制度を通じて社員の成長を促し、経営成果の達成と業績向上を叶えることにあります。実は、評価制度づくりは評価という工程の基準をつくることではなく、会社を成長させるための「人材育成のプロセス」をつくることなのです。
皆さんの会社では、期末になると評価者が大慌てで社員を評価し給与を決定する、そんな形式的な評価制度運用になっていないでしょうか。制度を社員の成長ツールとして通期で活用できれば、社員の成長や定着率向上を叶え、人材不足の解決にも繋げることができるはずです。
成長を考えた目標の設定
表1:人材育成を考えた人事評価のPDCA
では、人事評価制度をどのように社員育成ツールとして活用するのか、表1のPDCAサイクルをご覧ください。
まず期初の時点では、社員本人の本来あるべき理想の姿と現実とのギャップを埋めるために必要な行動目標を計画します。評価項目としては、会社の目標数値をチーム・個人に落とし込み、その達成度合いで評価する「業績評価」を取り入れている会社が多いと思いますが、ここで設定する目標は業績のみとしないほうが良いでしょう。
もちろん重要な評価項目なのですが、個人の成長を軸に考えるなら、成長目標の達成度合いを評価する「成長評価」もあるべきです。例えば5年後・10年後の自分がどうなっていたいのか、理想の将来像から逆算し、やるべきことを1年単位の行動に整理し、今期の指針と目標を設定します。
キャリアデザインまで考えている社員は多くはないかもしれませんが、ここは上司がうまくリードし、本人に熟考する機会を作ってあげ、本人の口から目標を掲げてもらいましょう。本人も自身の取り組みや成果に対して責任を持つようになり、自己監督が強化されます。
定期面談で目標達成をフォロー
とはいえ、自分で自分を監督するのにも限界があります。目の前の仕事に忙殺されていたら、できる仕事は多少増えたものの、何年間も成長らしい成長をしていなかった…なんてことも。これでは、本人や会社が求めていた理想の人物像・必要スキルに対するギャップが埋まったとは言えません。
そうならないためには、やはり他者による適切な監督が必要です。本人も成長目標を意識して業務に取り組もうとはしますが、どうしても自己研鑽は意志が揺らいだり、後回しにしてしまいがちです。上司は定期的な面談で(理想は毎月、少なくとも2ヶ月に1回)目標達成までの進捗を確認し、状況が悪い場合はその原因と対策を一緒に考えましょう。
あまりに達成までが遠い場合には、そもそも目標設定が適切かも検証します。高い目標設定は個人の成長を促進しますが、目標が高すぎる場合や外的要因で達成が困難になる場合には目標を柔軟に修正していくべきです。
評価のフィードバックまで怠らず
評価対象期間が経過し無事に評価が終わったとしても、まだ完了ではありません。成長に繋げるための重要な項目がPDCAのA(アクション)の工程です。具体的には、評価の結果はもちろん、奨励すべき点と改善点を伝え、次期の目標を設定します。
中でも改善点のフィードバックは苦手な方が多く、気を遣い過ぎて本人にうまく伝わらないケースも多いようですが、人を育てるには覚悟も必要。伝える際のポイントは表2にまとめました。全ては本人のためと考え、上司は愛情を持ってフィードバックを行ないましょう。
表2:改善点フィードバックのコツ(伝える側)
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次回は、社員の成長・定着を促すためのキャリアパス提示と役職・部署ごとの職務要件について、また弊社で実践しているミッショングレード制を例に用いて、人事評価制度を活用した人材育成のポイントを解説します。