賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「稼働率向上と空室対策」です。
空室原因を見出す3つの視点で稼働率アップへ
オーナーにとって稼働率は最重要指標
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
管理物件の稼働率は、いわば管理会社の成績表のようなもの。高い稼働率は、私たち管理会社が物件を効果的に運営し、入居者をしっかりと保持できている証です。
このため、稼働率は不動産オーナーが管理会社を選ぶ際の最重要指標とも考えられます。また、管理手数料は管理会社の主要な収入源であるため、会社の安定した経営を維持する上でも、高い稼働率を保つことは極めて重要です。
高稼働率を叶えるための2つのアプローチ
では、どうすれば私たちは市場平均を上回る稼働率を実現できるでしょうか。
方法は主に2つあります。1つは、問題の多い物件や管理に協力的でないオーナーの物件をできる限り避けること。いきなり厳しい話ですが、管理会社のリソースには限りがある以上、問題の多い物件に手を取られれば、他の管理物件やそのオーナー、そして会社自体にマイナスの影響が発生します。マイナスを抱えた状態での稼働率改善は極めて困難です。
そしてもう1つは、空室対策のスキルを磨くことです。多くの空室は、適切な条件設定と適切な募集で決まります。
しかし「市場を上回る稼働率」を目指すなら、ただ募集しただけでは決まらない物件も工夫を凝らして決めていく必要があります。その際、重要となるのが空室対策のスキルであり、「空室原因を見極める力」です。
この原因発見にあたっては、①虫の目、②鳥の目、③魚の目でアプローチしてみることをお勧めします。
①「虫の目」で現地課題を発見
虫の目とは、対象に近づいて細部まで注意深く見る視点です。
空室対策というと派手なリニューアルや家賃減額に意識が行きがちですが、初心に立ち返って現地を詳細に見てみると本当の課題が見えてくることがよくあります。例えば、古い給湯器やエアコン、壁紙の汚れや床の傷み、古いままのコンセントカバー、放置自転車、長期空室による埃や封水切れによる臭い…、見落としていた小さな欠点が内見者の意思決定に大きな影響を与えていた、というのはままあることです。
PCの前に座っていては分からない、現地に眠る空室要因を見つけ出すのが「虫の目」です。
②「鳥の目」で販促戦略を再考
鳥の目は、物件が位置する地域や市場全体を俯瞰する視点です。
競合物件の状況、地域の賃貸需要動向など、外部環境は小まめに確認できているでしょうか。また、物件の強みを活かした募集が行われているか、ターゲットとする入居者層に適切に情報が届けられているかなど、募集広告やマーケティング戦略もこの視点で見直します。
例えば、若者向けの物件であれば、SNSやLINEを活用した集客が効果的かもしれません。このように、物件を取り巻く大きな環境を理解し、より多くの入居者にアプローチするべく戦略を調整するための視点が「鳥の目」です。
③「魚の目」で需要と流行を読む
魚の目は、変化する時代の潮流、つまり最新ニーズや人々の期待、トレンドの変化を読み解く視点です。
入居者が物件に求めるものは何か、どんな生活スタイルを望んでいるのか。入居者アンケートや人気設備ランキング、仲介担当者へのヒアリング等を通じてニーズの変化を読み解き、期待に応える物件づくりを行ないます。
例えば、テレワークの普及によるワークスペース需要の増加、という変化を読み解けたなら、共用部の改装や部屋のレイアウト変更も検討できるでしょう。潮の流れを読むように変化に気づき物件価値を高める視点が「魚の目」です。
根拠ある提案でオーナーも納得
空室原因と対策が見えてきたなら、いよいよ提案です。しかし、担当者がいかに空室対策に精通していても、オーナーの支持を得られなければ採用されません。
提案を成功させるコツは、ずばり「根拠」を示すこと。データや市場分析に基づいて、あるいは自身の〝観察〟の結果を踏まえて、なぜこの提案が適切と考えるのかを具体的に説明しましょう。虫・鳥・魚の異なる視点から根本原因と解決策を導けば、提案の妥当性を理解してもらい易くなります。
また、表1のように「実行可能な対策を抽出して可視化し、最も適切な策を明確に示す」という提案スタイルも、多角的かつ細かな分析からの提案であると示すことができてお勧めです。