賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「オーナーに対する啓蒙活動」です。
オーナーの認識に起因する非効率な一幕
こんにちは。コンサルタントの高橋です。
賃貸管理に携わっていると、こんな経験をすることはないでしょうか。例えば、退去後、原状回復工事でのこと。借主の故意過失部分とはいえ、償却期間のとうに超えた設備の満額を借主に負担させようとするオーナー。国交省のガイドラインを知らないのか、反しても問題ないという認識なのか…。どちらにせよ精算が進まないため、担当は改めてガイドラインと民法の改正を説明、どうにか負担割合の理解を得て、ようやく敷金精算が動き出す——。
原状回復問題に限らず、管理会社ではこのような「オーナーの認識」に起因する非効率な一幕をよく見かけます。事前にオーナーの理解があれば業務連絡のみで済んだ話が、それが叶っていないせいで面倒事へと発展してしまうのです。
◆オーナーのレベルアップが鍵
ただ、逆の見方をするなら「日頃からオーナーへの啓蒙が徹底されていれば、業務を最短コースで進めることができる」ということを意味しています。オーナーの知識レベル向上に積極的に取り組むことが、巡り巡って管理会社の生産性向上につながるのです。
税制改正や入居者ニーズ、貸し方の多様化(民泊・時間貸し・シェア)、賃貸物一部滅失による賃料減額について…、オーナーの理解はどれくらい期待できるでしょう。提案の成功率を鑑みれば、あらかじめ伝えておきたい情報は山ほどあるのではないでしょうか。
多様化するオーナーへの啓蒙手段
しかし、オーナーの認識を変える・知識を高めるといっても、その方法はさまざまです。
図1に効果・範囲・手間をまとめましたが、できることなら最も効率的かつ効果的な手法を選択したいものです。
(図1.オーナーへの啓蒙・周知の方法)
理解度が高いのはやはり「個別訪問」や「セミナー」など直接会う方法です。
積極的に実施したい反面、個別訪問は1人ずつで非効率的ですし、セミナーは毎回同じ参加者となってしまう懸念があります。
また、今回のコロナ騒動のような場合には、会いたいと思ってもなかなか実現しにくいのが実情です。
それならと、当社を含めビデオ会議ツールを取り入れた会社も散見されましたが、オーナーのITリテラシーが高いことが前提になるため、オンラインに慣れてきた方も徐々に増えたものの効果は限定的だったようです。
その点、よほどの事態でない限り届けられる「オーナー会報誌」は、全オーナーに一斉に、定期的な情報発信ができるというメリットがあります。
読み物として体裁が整っていれば啓蒙効果の期待も高め。ただし、制作に時間が掛かる点、継続に労力がかかる点が玉に瑕(きず)です。
また、最近は管理会社による「動画配信」が増えてきたように思います。紙媒体に比べると、情報量が圧倒的に多く内容が伝わりやすいのが特長でしょう。
課題は、始めるまでのハードルの高さや、高品質で継続する難しさ。
タイムリーな話題が求められる動画はスピード感が大事ですが、見栄えを気にしすぎて掲載が遅れると視聴機会を逃したり、制作が億劫になったりで断念されがちです。スマホ+最小限の編集で十分でしょう。
そして動画や会報誌に比べると、「メルマガ・SNS」は比較的簡単で、一回の啓蒙可能人数も多く、旬な話題も発信可能です。ただ、高齢の方に情報が伝わらない可能性が高いのが難点です。
適切な情報発信で生産性向上を目指す
時代と共に情報発信の選択肢は増えましたが、しかし、どれが正解というものはなく、敢えて言うなら「全て」ではないでしょうか。啓蒙する内容や緊急度、対象に合わせて手段を選択し、あらゆる方向から情報を届けることが現代における最適解でしょう。
ただ、会報誌と動画については、制作に手間がかかるために実施できていない会社も多いと感じます。どうにか実施できている会社でも、このような情報発信は効果が見えにくいためか、通常の管理業務と兼務しながらの制作になってしまっているところが大半です。
せっかくのオーナーの教導、そして自社のアピールチャンスにもかかわらず、片手間での作成では効果も半減です。
このような場合は、専任の広報やマーケティングの部署を作る、またはアウトソーシング(制作会社や外部ライター、制作代行サービスの利用)で品質・頻度を維持するのが望ましいでしょう。
当社の会報誌サービスをお使いいただくのも一つの手です。
適切な情報発信はオーナーの知識を高め、管理会社からの提案の採用率を高められるだけでなく、「管理会社に一目置いてくれるオーナー」を増やし、業務のスムーズな進行に寄与します。
忙しい管理会社にとっては一見すると回り道ですが、自社のブランドとともに業務の生産性も高められると考えれば、コストをかける意義も見出せるのではないでしょうか。