「ニュースにヒトコト! 気になるアレに注目!! 」
このコーナーは、賃貸管理に関するニュースの中から気になるものをピックアップし、当社のコンサルタントがヒトコト言わせていただく企画です。
多発する自然災害、賃貸管理会社もできることから対策を。
熱海で大規模な土石流被害
2021年7月3日、静岡県熱海市で大規模な土石流が発生し複数の家屋が流された。土石流が発生した詳しい原因については調査中だが、複数の専門家が「盛り土」が崩れたことが大きな要因となったのではないかと分析している。
(楽待不動産投資新聞2021年7月6日掲載記事より抜粋)
日本人70%・国土30%以上が災害と隣り合わせ
皆さんこんにちは。コンサルタントの萩原です。
ご存じのとおり、先日は静岡県熱海市にて大規模な土石流の事故が起きてしまいました。被災された方々には心からお見舞い申し上げるとともに、復興にご尽力されている皆さまには、安全に留意され、ご活躍されることをお祈りいたします。
さて、今回の土石流被害に限らず、自然災害が起きるリスクは日本中にあります。
たとえば、ニュースでもたびたび報じられる南海トラフ地震。恐ろしいことに、マグニチュード8~9クラスの地震が今後30年以内に発生する確率は、70~80%(2020年1月24日時点)と言われています(国土交通白書2020参照)。
そのほか洪水や土砂災害など例を挙げればきりがなく、国交省の調べ(表1)でも日本人の70%以上・国土の30%以上が災害の脅威にさらされているとのこと。災害はまったく他人事ではないことが分かります。
(表1.国土交通省「災害別の暴露面積・人口」国土形成計画参考データ集より引用)
そこで、賃貸管理会社ができる災害対策として、いま一度オーナーに働きかけたいのが「火災保険」の見直しです。
火災保険といえば、2021年1月に値上がりしたのは記憶に新しいですよね。
しかし、ご存知でしょうか。実は2021年6月6日に、火災保険料の目安となる「参考純率」のさらなる値上げと、最長契約期間の10年から5年への短縮が、損害保険料率算出機構から発表されています。
つまり、来年は再び保険料が値上がりすると予想されるのです。
火災保険料が再び値上げ、契約期間も短縮へ
火災保険について、具体的には下記の2つの点で値上げされることになります。
1.保険料が過去最大となる平均10.9%の値上げ
近年、台風や豪雨災害が多発したことで火災保険の保険金支払いが急増したことが原因です。たび重なる支払いで保険会社の収益が悪化し、これまでの保険料では火災保険自体が成り立たなくなる恐れが出てきたのです。
表2は1959年以降の主な自然災害(地震を除く)で支払われた保険金ランキングになりますが、上位7つを2014~2019年の災害が占めていることが分かります。
こうした大規模な保険金支払いの増加が、今回の火災保険料引き上げにつながったのです(具体的な各社の保険料値上げについては現状未定)。
(表2.一般社団法人日本損害保険協会・損害保険協会ファクトブック2020より)
2.最長契約期間が10年から5年に
もう一つは、最長契約期間を10年から5年に短縮することで更新頻度を高め、今後の保険料改定を反映させやすくしたこと。災害の発生状況によっては、より多くの消費者の保険料を値上げしやすくしたわけです。
背景には、やはり近年の自然災害の激甚化・頻発化があります。
これまでとは災害規模が異なってきているため、保険会社にとって今後10年間のリスク予測は難しく、10年契約のままでは収支改善には時間がかかるとの判断です。もともと災害尽くしの日本ですが、保険料の値上げだけでは対応しきれない状況というのは、なかなか危機的と言えるのではないでしょうか。
保険見直しにあわせて物件のメンテナンスの提案も。
火災保険料の値上げについて保険会社からの発表はまだですが(2021年7月時点)、値上げの時期は2022年中となる見通しです。
地域・建物構造・保険会社・プランによっては逆に値下げになることもあるようですが、基本的に多くのプランで値上げになることが予想されます。
いずれにしても、こうした変化をきっかけに私たちも改めて管理物件の防災・減災について気を引き締めたいものです。
また、火災保険による万一の備えも大切ですが、災害被害を最小限に抑えられれば、それに越したことはありません。管理会社としては、物件のメンテナンスをいま一度見直し、今までやれていなかった簡単な修繕から、築年数を考えれば実施した方がいい塗装・防水などの大規模修繕まで、オーナーに火災保険料の見直しと合わせて提案してみるのも良いと思いますよ。