コンサルタントコラム

公開日:2020年12月18日

【コラム】賃貸経営を守る「入居審査」。気をつけるポイントと判断基準の作り方

【コラム】賃貸経営を守る「入居審査」。気をつけるポイントと判断基準の作り方
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賃貸管理の可能性に、挑む。

当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。

今回のテーマは「入居審査のポイントと判断基準」です。

入居審査で気を付けたいポイントと判断基準

こんにちは! コンサルタントの萩原です。

10年以上の賃貸仲介・管理会社での現場経験を活かし、全国の不動産会社様の収益UP、業務効率化のご提案をさせていただいております。

また、以前は管理会社の入居審査担当として、年間2,000件の申込書類に目を通してきました。その経験を基に、前回のコラムでは管理会社に求められる入居審査がいかに大事か、私自身の「痛恨のミス」エピソードとともに解説いたしました。

今回は前回記事の続編として、管理会社が審査時に気をつけたいポイントと、判断基準がブレないための事前準備についてお伝えいたします。

審査時に気をつけたいポイント

問題を起こす可能性の高い入居者というのは、往々にして対面時の見た目や言動に気を遣っているものです。

後ろ暗いことがあるほど、不審に思われないよう身分を隠したり、虚偽の申告をしたりして、真っ当な人物を装うものですよね。

もちろん、そんな張りぼての演技であれば、少し審査を進めれば見抜けます。昨今は保証会社を導入している管理会社様も多いと思いますが、ひとまず保証会社の審査を通過したのであれば安心できると言えるでしょう。

しかしながら、保証会社の審査は、入居希望者の家賃支払い能力など債権関連にフォーカスしている分、人柄や素性までは細かく調べません

よって、保証会社の審査は重視しつつも、管理会社もまた独自に客観的な審査をすることが重要になります。

管理会社は書面での判断が多いとは思いますが、少なくとも申込書身分証明書の2つはしっかり確認していきましょう。

申込書に関するポイント

1.関係者への意思確認

まず確認したいのは、関係者が実在するか、引っ越しの事実を把握しているかどうかです。

本人や同居人、親権者、緊急連絡先(保証人含む)、勤務先など申込書に記載されている連絡先には、業務が圧迫されない範囲で可能な限り確認の連絡を入れましょう。

関係者と電話で話ができれば、本人の人柄や素性が見えてくるかもしれません。保証会社の確認連絡と重複する可能性もありますが、確認漏れを起こすよりはずっとマシです。

実際に私の場合、独自に連絡してみたところ、「保証会社は承認したけれど実際は勤務先を辞めていた」ということがありました(その申込みは結果的にキャンセルとなり、その後、申込みをした人は詐欺の罪で逮捕されたそうです)。

また、親権者への連絡・意思確認が充分じゃなかったために、親権者から「娘がいなくなった!」と怒鳴り込まれた経験もあります。確認連絡をおろそかにしないよう、ぜひ注意してみてください。

 

なお、確認連絡を確実にするには、携帯電話の番号が必要です。必ず関係者全員から入手しておきましょう。

その時にチェックしたいのが「使用歴」。使用期間が極端に短い場合は何かから逃げていたり、過去にトラブルを起こしていたりする可能性があります。

有料にはなりますが、携帯電話の使用歴を調べてアラートが出せるサービスも存在しますので検討してみるのもいいでしょう。

 

2.引越理由

また、重点的に確認したいのが本人の引越理由。なぜこの部屋に引っ越すのか、納得できる理由があるか確認です。

進学や就職、転職、結婚、独立など9割の引越理由は大抵問題ありません。肝心なのは、残る1割を見抜けるかどうか。検討するポイントの例は次のとおりです。

<引越理由で気にしたいポイント>

・入居人数に対して極端に広い間取りではないか

・条件面が変わらないのに入居先が勤務地から不自然に遠くなっていないか

・収入に対して家賃が高すぎではないか

・無職なのになぜか引っ越そうとしている(秘密にしている仕事があるのではないか)

・動機不明のセカンドハウス利用(例えば配偶者が緊急連絡先ではない場合、住居以外の目的が考えられる)

不自然な理由による入居は、短期解約・近隣迷惑・又貸し・無許可風俗・暴力団関係または犯罪目的の利用などに繋がる可能性があります。

引越理由こそ、申込書類の中で一番重視するべき内容といっても過言ではありません。

 

3.WEB検索

今はインターネットの普及で勤務先情報の取得は当たり前に行なわれていますが、本人のものが確認できるのであれば、SNS等に載っている情報も参考にするといいかもしれません。

場合によっては、写真や日記から、入居者のリアルな人物像を知ることができます(なかには犯罪歴が出てくることも)。

もちろん過去のことですので今は問題のない方かもしれませんし、見た目で判断するのは良くないでしょう。

しかし、アパートの室内にもかかわらず、夜な夜な頻繁に多人数で宴会(パーティ)を開いている写真が上がっていたら、管理会社としてはちょっと入居させたくないですよね。

 

4.その他

そのほか、申込書にはさまざまな審査のポイントがあります。

例えば、申込書に書かれた文字。そこにも人柄が表れるものです。最近は電子申込の拡大が業界内のニュースでも多く取り上げられていますが、全国的に手書きの申込書がまだまだ多いかと思います。

「単純に字が下手・苦手な人」と「乱暴に書く人」の区別は見ればわかるもの。申込書を適当、かつ殴り書きで書く方は、入居後も滞納やマナー違反をする人が多い印象です。

身分証明書に関するポイント

1.運転免許証

特にチェックしたいのは運転免許証にある12桁の番号です。実は一番右の数字は「再発行」した回数となっており、この回数が多い人は余程のおっちょこちょいか、トラブルを起こしてきたかのどちらかと考えられるからです。

どちらにしてもそのような方はルーズな可能性が高く、滞納などのトラブルに繋がる可能性が高いので注意しましょう。特に3回以上再発行している場合は引越理由など念入りチェックです。

 

2.その他の身分証

入居者が運手免許証を持っていない場合、あるいは学生や外国籍の場合は、次のような身分証の提出をお願いしましょう。

<確認しておきたい身分証>

  • 保険証
  • 学生証
  • 在留カード
  • 外国人登録証明書
  • 所得証明書
  • 内定通知書
  • 合格通知書
  • 住民票
  • 決算書(ネット情報が出てこない法人等の場合)

保証会社からも同様に提出を求められることが多いので、どういった身分証明書が存在するのか理解しておくことも重要です。

社内共通の審査基準でブレない判断を。

審査時に気を付けたいポイントについてお伝えしましたが、入居者情報をどう評価するのか、スタッフ間で曖昧なままだと片手落ちです。

というのも、社内共通の審査基準を設けていなければ、結果的に入居機会の損失に繋がる恐れがあるからです。

 

例えば、本当は受け入れても良かった入居者からの申込みを、電話を受けたのが審査に厳しいスタッフだったために断ってしまっては、実にもったいない話ですよね。

こうした入居機会の損失を防ぐためにも、社内共通の審査基準を設け、全スタッフが同じ物差しを持って入居者審査ができる体制をつくる必要があるのです。

 

社内共通の審査基準を作るに当たっては、【完全NGとする条件】【注意して見るべき条件】を初めに作成すると、その後の判断がしやすくなります。

まず【完全NGとする条件】の例として、

条件例

検討内容の例

引越理由が明らかに不自然

借金取りやDVから逃げている可能性がある

まっとうな職種ではない

無許可の風俗や闇金など

重い病気を抱えている

入院が必要なレベルのうつ病・統合失調症など

年齢に問題がある

18歳未満の本人契約など

 

一方、【注意して見るべき条件】の例として、

条件例

検討内容の例

(社内で規定する)要注意職種である

自営業、水商売、短い職歴など

収入が家賃に見合わない

家賃が収入の1/3、1/4を超えていないか

外国籍である

日本語のレベルは充分か、定職はあるかなど

学生・未成年である

本人契約にするか、親契約にするかなど

生活保護を受けている

理由は何か、家賃支払いの方法はどうなるのか

高齢者である

受入れ年齢は何歳を上限とするかなど

ルームシェアを希望している

誰と住むのか(親、兄弟姉妹、友人)

小規模な法人契約である

資本金や従業員数は充分か、保証会社を利用してくれるか

母子家庭である

母親の年齢や収入(生活保護)の有無、子ども以外の同居人(恋人)はいるのかなど

このように審査基準を作る際は、それぞれの条件に対して「どこまではOKか」「どうなるとNGか」という視点で線引きをしながら作成していきましょう。

その際、作成者に、入居者対応の経験豊富なベテランスタッフ、地域性やお部屋探しの入居者属性を熟知しているスタッフを交えると、その会社のカラーを反映した、より質の高いものが出来上がるはずです。

ケースバイケースで柔軟な判断を下すことも重要

ただし、審査時に多少の融通が利かせられるよう、審査基準の内容は緩すぎず厳しすぎないバランスの良いものにしていきましょう。

審査が緩くなれば仲介会社からの紹介頻度は上がりますが、管理物件が不良入居者の巣窟になりやすいなど、賃貸経営にとって大きなリスクを抱えることになります。

逆に厳しすぎると仲介からは嫌われるリスクがある一方、きちんと審査して不良借家人を弾いている点で貸主からは喜ばれるでしょう。

緩すぎず厳しすぎず、その中間で審査できればベストです。

しかし、お部屋探しにくる入居者は多種多様。地域性や家賃帯によって入居者層には変化があるものです。

時には長期化している空室を埋めるため、多少のリスクを背負いつつ、審査基準を緩める必要に迫られることもあるでしょう。

そんな時は初回のみ定期借家契約を用いて契約する、保証会社必須にするなど、リスク発生時の逃げ道を作っておくことも戦略の一つですね。

 

本日お伝えした「審査方法」や「基準」はあくまで目安です。実際はオーナーからの要望やその申込内容によって調整が必要になります。

審査基準が硬直化しないよう、定期的に社内でブラッシュアップを図り、賃貸経営の収益を上げられる効果的な入居者審査をしていきましょう。


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