「ニュースにヒトコト! 気になるアレに注目!! 」
このコーナーは、賃貸管理に関するニュースの中から気になるものをピックアップし、当社のコンサルタントがヒトコト言わせていただく企画です。
賃貸住宅市場景況感調査「日管協短観」が発表
反響数・成約件数は増加傾向
皆さんこんにちは。コンサルタントの金井です。
先日、日本賃貸住宅管理協会(日管協)より、2020年度下期(20年10月~21年3月)の賃貸住宅市場景況感調査「日管協短観」が発表されましたね。コロナ禍が猛威を振るったことで賃貸市況にどのような影響があったのか、全国217社が回答しました。
皆さんもご存じのとおり、2020年の繁忙期はちょうど新型コロナウイルスの感染拡大と重なり、大混乱のうちに終わってしまいました。
それにより全国規模で移動自粛が見られ、引越し自体が減少したため、引きずられるように成約件数が落ち込んでしまった会社が多かったように思います。おそらく皆さんも同じような印象を持たれたのではないでしょうか。
事実、日管協の上期(2020年4月〜9月)の短観では、「(成約件数が)減少した」との回答数が全国で4割、首都圏だけでも5割弱に上りました。
ところが下期に入ると、状況は好転。自粛ムードが緩和されたこともあり、反響数・成約件数ともに「増加した」と答えた会社の割合が最も多い結果となりました。コロナ禍が思いがけず長引いているだけに、まずは喜ばしいことだと思います。
【2020年度上期・成約件数】
【2020年度下期・成約件数】
【2020年度下期・反響数】
反面、見えてきた課題もあります。それはコロナ禍を境に入居付けがうまくいかない物件が新たに出てきたこと。
これまでは、築年数が古く設備も陳腐化している物件であっても、「立地の良さ」だけで放っておいても決まる事例が多数ありました。
しかし、企業のテレワーク推進や大学のオンライン授業の増加により、立地の需要が減少。また、インバウンド(外国籍の方)の入居が多かった物件も、海外からの渡航制限により苦戦を強いられる事態となっています。
賃貸市場が大きく変わった以上、これまで立地に頼っていた物件や、学生・外国人がターゲットだった物件は賃貸経営の見直しを図らなければならないでしょう。
対策の一案として、テレワーク需要にあわせた「ネット無料」「ワークスペースの設置」といった設備提案から始めてみてもいいかもしれませんね。
コロナ禍の悪影響、在宅時間の拡大により表面化!
2020年度上期の短観から、調査項目に新しく追加されたものがあるのを皆さんはご存じでしょうか。
その項目とは「新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響」というもの。コロナ禍という特別な状況のなかで、皆さんも入居者からの問い合わせ・クレーム数が増えたのを感じていらっしゃるかもしれませんが、それが実数化されているのです。
【コロナ禍による影響】
今回の調査でも、問い合わせや家賃減額請求が増えていることがわかります。
同様に、全国11万世帯の入居者から電話を受けている弊社コールセンター(プロコール24)の入電結果でも、その傾向は顕著に現れており、特に騒音やゴミに関するクレームは例年の倍近くまで増加した月もありました。
【2019・2020年騒音発生件数(プロコール24)】
騒音クレームが増加した要因としては、テレワーク・外出自粛によって自宅で過ごす時間が伸びたことで、普段気づかなかった近隣の生活音が問題として表面化したことが大きく影響していると言えます。
一方、ゴミ問題については、外食の自粛、飲食店の営業時間短縮により自宅での食事が増えたこと、デリバリーの需要増加によってゴミの排出量が増えたことが要因です。
増えたゴミが、ゴミストッカーやゴミ置き場のキャパシティをオーバーしてしまい、さらにあふれたゴミをカラスがつついて散らかしてしまう…。デリバリーの文化が根付いた以上、今後は増えた排出量に合わせて一回り大きいゴミストッカーに変えたり、定期巡回を増やしたりすることが求められます。
アフターコロナを見据えて時代に合った賃貸管理を。
ワクチン接種が始まり、少しずつ終息への兆しが見え始めてきたコロナ禍。
しかしながら、一度普及したテレワークやデリバリー需要は、たとえ終息後に減少したとしても、以前と同じ水準にまで下がるとは思えません。
今回取り上げた賃貸物件に関する「立地の需要低下」「騒音・ゴミの増加」といった問題を解決できる環境を整え、入居者満足度を維持向上していくことが、これまで以上に必要となってきています。
すべての問題を今すぐ解決するのは難しいかもしれませんが、いつまでもコロナ禍前の姿勢では市場で通用しませんし、コロナ禍のせいにして新たな問題を放置したままにするのもいけません。
コロナ禍を経て新しい時代が来たことを認識し、オーナーにも入居者にも、問題が起きたときに真摯に解決を図ってくれる管理会社であることを、まずは明確に示すことが大切です。
時代の変化に乗り遅れて管理離れや解約に繋がらないよう、オーナー・入居者双方の視点から常に解決策を模索していきましょう。