コンサルタントコラム

公開日:2024年5月17日

【コラム】住宅セーフティネット制度を解説。超高齢社会にコミットした賃貸経営を考える

【コラム】住宅セーフティネット制度を解説。超高齢社会にコミットした賃貸経営を考える
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賃貸管理の可能性に、挑む。

当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。

今回のテーマは住宅セーフティネット制度です。

住宅セーフティネット制度とは?

進む高齢化、2023年は29.1%

こんにちは、コンサルタントの金井です。

少子高齢化が叫ばれて久しい日本ですが、皆さまは現在の高齢化率をご存じでしょうか。総務省の人口推計によると、2023年の総人口に占める高齢者(65歳以上)の割合は、なんと29.1%(3623万人)に上るとのこと。一方、同年の子ども(15歳未満)の割合は11.5%(1435万人)と過去最低で、出生数も75万8631人と過去最少を記録しています。

こうした情勢を受け、近年、問題視されているのが「高齢者の住宅問題」です。貸主視点で見れば、孤独死や家賃滞納などのリスクが大きい高齢者には部屋を貸しづらいという意見もありますが、増え続ける高齢者に比例して、高齢者の賃貸需要も膨らむばかり。結果、需要に対する供給不足から部屋を借りづらい高齢者層が増大し、社会問題と化しているのです。

住宅確保要配慮者の支援のため制度創設

これに対して国が打ち出したのが、今回のテーマとなる「住宅セーフティネット制度」です。

同制度は、高齢者をはじめ、障害者、子育て世帯などの住宅の確保に配慮が必要な方(住宅確保要配慮者)に賃貸住宅の供給を促進する制度で、2007年に制定されました。2017年には大幅改正が行なわれ、2024年にはさらなる改正に向けた法律案が閣議決定されています。

今後、少子高齢化のさらなる進行が見込まれる日本において、同制度はますます重要となるはずです。管理会社としても、オーナーへの制度紹介や提案業務に活かせるよう、内容や改正点について理解を深めておきましょう。

【住宅確保要配慮者の対象】
・高齢者
・障害者
・低額所得者(月収15.8万円以下)
・被災者(発災後3年以内)
・子ども(高校生相当まで)を養育している者
・外国人等の国土交通省令で定める者
(国土交通省「住宅確保要配慮者の範囲について」より引用)

住宅セーフティネット制度の3本柱

住宅セーフティネット制度は、正式名称を「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」と言います。2017年改正の現行法では、以下の3つのポイントを制度の柱に据え、住宅確保要配慮者(以下、要配慮者)の居住支援を進めてきました。

【住宅セーフティネット制度の3本柱】
①入居を拒まない賃貸住宅としての登録制度を構築
②登録住宅の改修補助など経済的な支援を提供
③要配慮者に対する居住支援を提供
(国土交通省「住宅セーフティネット制度について」から引用)

①入居を拒まない賃貸住宅としての登録制度を構築

一つ目のポイントは、確実な住宅確保につながるよう、要配慮者から入居の申し込みがあった際に、「入居を拒まない住宅」(セーフティネット登録住宅)として賃貸住宅の登録制度を整えたことです。

そのため、住宅セーフティネット制度の利用にあたっては、オーナーは登録申請書などの必要書類を都道府県・政令市・中核市等に提出し、事前に物件登録を済ませる必要があります。そして、登録された住宅情報は、国土交通省の「セーフティネット住宅情報提供システム」で要配慮者に提供され、マッチングが行なわれることになります。

登録には2種類があり、要配慮者のみが入居できる【専用住宅】と、要配慮者以外でも入居を認める【登録住宅】のどちらかをオーナーは選ぶことができます。また、要配慮者の受け入れ範囲についても、高齢者のみ、障害者のみと選択でき、集合住宅の1部屋からでも登録できるなど、柔軟な運用が可能となります。

ただし、どんな物件でも登録できるわけではなく、主に次の登録基準が設けられています。登録基準は自治体によって異なる可能性があるため、事前に問い合わせてみるといいでしょう。

【セーフティネット登録住宅の登録基準例】
・耐震性を有する(原則、新耐震基準の物件)
・住戸の床面積が原則25㎡以上
・家賃の額が近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しない

②登録住宅の改修や入居者への経済的な支援

二つ目のポイントは、要配慮者の受け入れにあたり、国や地方公共団体などから経済的な支援が受けられることです。代表例が、登録した物件が【専用住宅】の場合に、住宅改修に対して補助金が利用できること。対象工事には、手すりの設置・段差解消などのバリアフリー工事や、断熱・耐震改修工事といった規模の大きなものも含まれ、戸当たり50万円・工事費3分の2までが補助されます。

また、入居後に経済的な支援があるのも、住宅セーフティネット制度の特長です。その一つの「家賃低廉化に係る補助」では、生活保護等を受給していない低額所得者(月収15.8万円以下の世帯)を受け入れた場合に、本来の月額家賃のうち、戸当たり最大4万円(支給期間は原則10年以内)の家賃補助がオーナーに行なわれます。

一方、入居者が支払う家賃はその差額のみとなります。仮に、通常の家賃が7万円、補助が4万円だった場合、入居者は3万円の支払いだけで済むわけです。貸主は滞納時の損失を抑えることができ、入居者は通常より安く借りることができるため、双方にメリットのある制度と言えます。

(※住宅改修・家賃などの補助額はいずれも自治体で異なる場合があります。)

③住宅確保要配慮者に対する居住支援

三つ目のポイントは、NPO法人などを「居住支援法人」に指定し、要配慮者の入居相談や見守りなどの生活支援を提供することで、オーナーと入居者どちらにとっても安心感が高まることです。特に高齢入居者の場合は、入居中のケガや病気、孤独死などのリスクが常につきまといます。日常生活で常に支援者の目があることは効果的なリスクヘッジとなるでしょう。

制度活用による貸主側のメリット・デメリット

このように要配慮者の住宅確保に向け支援を行なう住宅セーフティネット制度ですが、貸主側にとっての利用メリットは、やはり物件への集客効果が期待できる点でしょう。

前述した国交省の「セーフティネット住宅情報提供システム」は、民間のポータルサイトのような作りになっており、掲載されることで入居づけの可能性が高まります。加えて、「家賃低廉化に係る補助」により、要配慮者は一般住宅より安く部屋を借りられるため、集客にはプラスでしょう。

加えて、住宅改修に補助金が利用できるため、築古物件のリフォームでも効果的な選択肢に。さらには、社会貢献につながる取り組みとしてオーナーに価値を感じてもらえる可能性もあります。

一方、注意すべきは、制度活用により要配慮者の入居を拒めなくなり物件活用に大きな制限がかかること。オーナーが制度利用に前向きな際は、中長期的な賃貸経営を考慮すべきこともきちんと伝え、共に将来の経営計画を立てていきましょう。

また、制度による支援があるとはいえ、孤独死などの賃貸リスクがなくなるわけではなく、一般住宅と同様に対策が必要であることも忘れてはなりません。制度に依存するのではなく、孤独死保険の加入、家賃保証会社の利用、見守りサービスの活用など、運用面のリスクヘッジを独自に進める必要があるでしょう。

2024年改正案を紹介

今回、閣議決定された住宅セーフティネット制度の改正案ですが、オーナーが要配慮者にさらに部屋を貸しやすくなるような変更が加えられました。主な改正点は次のとおりです。

【主な改正点】
・安否確認や見守りを社会福祉法人などが行なう「居住サポート住宅」の創設
・生活保護者の住宅扶助費(家賃)を貸主に直接支払う「代理納付」の原則化
・居住支援法人による残置物処理の推進
・終身建物賃貸借の利用促進

改正点には、要配慮者に部屋を貸すオーナーの不安感を取り除くことを主眼とした施策が盛り込まれており、オーナーにより提案しやすい制度内容になることが期待できます。

高齢者入居には拒否感を示すオーナーも多いかもしれませんが、今後の社会情勢において、高齢者受け入れは具体的に検討しなければいけない問題です。時代に即した提案ができるよう、管理会社としても住宅セーフティネット制度の今後の動向に目を光らせておきたいものです。


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