賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「入居者からの電話対応テクニック」です。
賃貸管理コールセンターに学ぶ「入電対応」とは
皆さんこんにちは。コンサルタントの金井です。
弊社では先日、「賃貸経営アドバイザー養成研修」の第2回を開催いたしました。賃貸経営アドバイザー養成研修とは、当社の提供する人気の賃貸管理会社向け社員研修です。
第2回のテーマは「入居者の電話対応テクニック」。
僭越ながら講師は私が務めさせていただき、またゲスト講師として、全国11万世帯をカバーする入居者コールセンター「プロコール24」の社員(オペレーター)が登壇。入居者対応のノウハウを包み隠さずお伝えいたしました。当日の様子は、簡単にレポートにまとめていますので、ぜひこちらからご確認ください。
(第2回 賃貸経営アドバイザー養成研修のもよう)
ベテランスタッフの仕事の時間を確保するためにも
日常的に発生する「入居者からの入電対応」。
賃貸管理会社にお勤めであれば多くの方がご経験されていると思いますが、相手の顔が見えないなか、問題解決に向けて適切なヒアリングと状況判断、そして「どう対応するか」「どう実行するか」を決めなければならない入居者対応は、なにげに難易度の高い業務です。
そのため、メインの対応を経験豊富なベテランスタッフが負わざるを得ない管理会社も少なくないようです。
しかし、ベテランスタッフは本来、オーナー提案・空室対策・管理受託営業といった、会社の売上に直接繋がるようなハイレベルな業務を率先して行なうべき存在。もちろん、入居者対応も重要なのですが、会社の売上に繋がりにくく手間暇もかかる以上、できることなら若いスタッフに任せたいところです。
ただ、安心して入居者対応を任せられるスタッフを育てようとすると、今度は対応の教え方が難しいという悩みが出てくるんですよね。
そこで今回は、先日の研修でお伝えしたプロコール24流「入電対応テクニック」を、少しだけ皆さまに公開。ぜひ若手スタッフの教育にご活用ください。
入居者の「2つの欲求」を同時に解消する
なぜ入居者は管理会社に電話をかけてくるのか。
それは多くの場合、何か困っていることがあり、それを解決したいと考えているからです。
ただ、入居者の心のうちを覗くと、そこには「物理的な欲求」と「心理的な欲求」という2つの欲求を抱えていることが分かります。
「物理的な欲求」と「心理的な欲求」とは、たとえば、エアコンが壊れたと電話してきた入居者様なら、こんな具合です。
- 物理的な欲求:エアコンを修理してほしい
- 心理的な欲求:謝罪をしてほしい(暑いのにエアコンが使えず迷惑している)
どちらも入居者の本音です。そして入電対応のポイントは、この2つの欲求を同時に満たしてあげることです。
「エアコンの効きが悪いのですが…」という入電があったとします。若手スタッフだとついつい気持ちが急いてしまい、「それでは業者を手配しますので!」と問題解決にばかり意識がいって、だいじな謝罪を忘れてしまうなんてことも起こりがちでしょう。
しかし、若手スタッフから謝罪がないことにカチンと来た入居者がヒートアップしてしまえば、二次クレームは待ったなし。対応時間はどんどん延びてしまうことになりかねません。
この場合、若手スタッフは、入居者が持つ物理的な欲求(エアコンの不具合を解決する)だけでなく、迷惑をかけられたことに対する謝罪を求める心理的な欲求にも、冷静に応えてあげなければならなかったわけです。
入電対応に焦りは禁物です。入居者が迷惑を被っている状況に対して、まずは落ち着いて謝罪の言葉をかけるよう、若手スタッフに促してみてください。
オペレーターが心掛けている、プロならではの「対応ポイント」
相手の顔や状況が全く見えないなか、入居者との会話のみで状況を把握し、適切な対処を行なうにはいくつかのコツがあります。
電話対応に慣れておらず、苦手意識のあるスタッフに対しては、次のようなことを意識させてみてください。(研修では5つ紹介いたしましたが、ここでは2つ紹介します)
1.入居者の言葉に疑いを持つ
若手スタッフがやってしまいがちなのは、入居者の言葉をそのまま鵜呑みにしてしまうこと。もちろん、共感・理解は示さなければなりませんが、注意をしないと後々トラブルになる可能性があります。
弊社では昔、こんな例がありました。
それはエアコンのリモコンの液晶画面がつかないという入電でした。若手スタッフが電池交換をお願いすると、入居者は「すでに交換した」と言います。それでも、一向に液晶がつかないため、若手スタッフは故障と判断して、業者を手配しました。
一見、よくある普通の対応で、問題はないように見えますよね。電池交換をしても直らないのであれば、故障と判断するのが一般的でしょう。しかし、現地に到着した業者からは「故障じゃなかった」との報告があったのです。
いったい何故でしょうか。
落とし穴は、入居者が「交換した」と言った電池にありました。入居者の言葉から、若手スタッフは「新品に交換した」と思い込んでいましたが、実は入居者は「他の製品で使っていた古い電池に交換した」だけで、リモコンの電池を新品に交換したわけではなかったのです。入居者の言葉を鵜呑みにしたせいで、業者手配の無駄な費用だけがかかってしまいました。
同じようなミスは他にもあります。
たとえば【電球が切れている】という入電だと、単純に「古い電球やW数の違うものに変えていただけ」だったり、【水が出ない】という入電では、実は「子供がいたずらで止水栓を閉めてしまっていた」なんてこともありました。
こうした些細なミスを防ぐためにも、入電対応では常に入居者の言葉を信じすぎず、入居者の認識が間違えているかもしれないという意識を持って対応にあたるよう、若手スタッフに伝えていきましょう。
2.ネガティブな話をポジティブに話す
先ほどのリモコンのように、入居者の協力のもと、自力復旧を試していただくケースもよくありますよね。
しかし、入居者のなかには、なかなか協力に応じてくれない方もいるものです。その場合、一方的にお願いするのではなく、協力に応じることで入居者にどんなメリットがあるのかを合わせて伝えることが大切です。
たとえば、コールセンターでは次のような言い回しをよく使います。
「こちらの作業をお試しいただくことで、復旧してすぐに使えるようになるかもしれませんので、お手数ではございますがご協力をお願いできますか」
入居者にとっても、業者との日程調整をしないですぐに直るのなら、それに越したことはありませんよね。復旧のために「自分が動かなきゃいけない」というネガティブな話から、「いま自分が動けば、すぐ使えるようになるかも」というポジティブな話に変えることで、入居者に協力してもらえる可能性がグッと高まるのです。
ちなみに、ヒアリングを始める際も「業者を手配いたしますので、手配にあたって何点か教えてください」とワンクッション挟むことで、入居者に安心感を与える効果も期待できますよ。
入居者対応をアウトソースするのも手
入電対応のノウハウは、経験則によるところが大きく、教育が大変だと感じていらっしゃる方も多いと思います。今回のコラムが若手スタッフの育成に少しでもお役に立てば幸いです。
また、高いレベルで対応できる人材を社内で増やしていくためには、対応履歴をしっかりと残しておくことも大切です。
どのような対応をしたら上手く解決できたのか、逆にどのような対応で怒らせてしまったのかを、スタッフそれぞれが共有できる環境を整え、次回に活かしていきましょう。
履歴を残す時間がない、教育ができる人材もいない、そもそも入居者対応に大幅なリソースを割かれてしまっているといった場合には、外部のコールセンターを利用するのも手です。
手前味噌ですが、弊社の「プロコール24」は、賃貸管理会社専用の入居者対応コールセンターとして、北海道から沖縄まで、今日も日本全国の賃貸管理会社に代わり入居者対応を行っています。
ご興味ございましたらぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。