コンサルタントコラム

公開日:2020年8月28日

【コラム】賃貸経営の孤独死対策。入居者層としてシニア世代の可能性を考える。

【コラム】賃貸経営の孤独死対策。入居者層としてシニア世代の可能性を考える。
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賃貸管理の可能性に、挑む。

当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。

今回のテーマは「入居者の孤独死-発生時の対応と予防策-」です。

入居者の孤独死対策を考える

こんにちは! オーナーズエージェント コンサルタントの萩原です。

10年以上の賃貸仲介・管理会社での現場経験を活かし、全国の不動産会社様の収益UP、業務効率化のご提案をさせて頂いております。

 

さて、今回お伝えするのは「入居者の孤独死対策」

入居者が室内で亡くなる事態は、管理会社で勤務していると必ず出くわす出来事です。

その際、問題になるとのは事後処理。故人に親族や連帯保証人、身元引受人がいるならお願いもできますが、全く身寄りがない場合はそうはいきません。

「部屋の契約はどうすればいいんだろう」
「残っている荷物は誰が片づけるんだろう」となりますよね。

 

亡くなった入居者のことを思うと心が痛みますが、管理会社としては実務を通してオーナーの財産を守らなければなりません。

そこで当コラムでは、管理物件で入居者が亡くなった際の対応や、事前にしておきたい孤独死対策について紹介します。

深刻化する少子高齢化、変わる賃貸市場

近年、拡大の一途のたどる我が国の高齢化率。

2007年には、全人口に対する65歳以上の割合が21%を超える「超高齢社会」に突入し、それに伴って賃貸住宅に暮らす独居高齢者の数も年々増加しています。

 

「令和元年版高齢社会白書」によると、一人暮らしをする65歳以上の数は、1980~2015年の40年間で、男性が約19万人から約192万人(約10倍)、女性は約69万人から約400万人(約6倍)に激増したことが報告されています。

 

一方、厚生労働省が発表した「人口動態統計」では、2019年の子どもの出生数が過去最少を記録しました。【図1】が示す通り、少子高齢化は今後もますます深刻化することが予想されます。

【図1】高齢化の推移と将来推計(内閣府「高齢社会白書」より)

 

もちろん、賃貸市場も他人事ではありません。
これまでメインの客層だった現役世代から、増え続けるシニア世代へと舵を切る必要が出てきました。

「高齢者にいかに入居してもらえる環境を整えるか」「高齢入居者向けのサービスにはどのようなものがあるか」賃貸経営の新たな挑戦が求められています。

 

しかしながら、高齢者をターゲットにした賃貸経営が非常にリスキーなのは周知の通り。とりわけ危惧されるのが孤独死と、その後の対応です。

実際にご相談頂いた下記のケースを例に、入居者死亡後の解約手続きや残置物の対応についてどうすればいいのか見ていきましょう。(※当記事は弁護士の助言を得て制作しております)

<賃貸住宅での孤独死例>

  • 室内でお亡くなりになられた。
  • 連帯保証人なし、保証会社への加入もなし。
  • 相続人は全員放棄。身寄りなし。
  • 残置物は室内に置きっぱなし。
  • 異臭も放ってきている。

相続人がいないなら自動で契約解除になる?

残念ながら、自動では解除になりません。

入居者が孤独死して相続人がいない、または相続人全員が相続放棄をしてしまった場合には、法律上、「相続財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立て、同管理人との間で契約解除をする以外に方法はありません。

 

現実には、亡くなった入居者に相続人がいない状況であれば、相続財産管理人を選任しないまま荷物の搬出・処分を勝手にしてしまっている業者もいると思います。

しかし、そうした対応は原則として違法な自力救済と見なされ、民事上、あるいは刑事上の責任を問われる可能性もゼロではありません。

管理会社とオーナーを苦しめる残置物の取り扱い

一方で、孤独死が起きた部屋の原状回復は一刻を争います。

速やかに消臭除去や特殊清掃を行なわなければ、他の入居者や建物全体に悪影響が広がってしまったり、募集開始の時期がずれ込み空室損が増加したりする危険があります。

そのためにも、部屋の残置物は早急に片付けてしまいたいところです。

 

ところが、上に述べた通り、残置物の処分についても、相続人や身寄りが全く存在しない場合、相続財産管理人の選任を行い、同管理人の承諾を得てから実施するのが原則となります。

「いやいや、そんな手続きを待っていられない!」と憤る方もいらっしゃるでしょう。

ただ、法的には非常に難しい場面と言わざるを得ません。

まずは弁護士など専門家に相談し、判断を仰ぐのが得策です。

孤独死を未然に防ぐ見守りサービス

このように孤独死が起きてしまうと物件全体の価値下落に繋がりかねません

残置物の処分に手間取り、被害をみすみす拡大させないためには、室内での孤独死を起こさないことが何より重要です。

最近は孤独死が社会問題化したことにより、独居高齢者の孤立を防ぐための様々な「見守りサービス」が提供されています。

<定期的な訪問や連絡による見守り>

見守りサービスの提供者が対象の部屋を定期的に訪問し、安否確認を直接行なうものです。

訪問員が入居者と顔を合わせることになりますので、入居者の異変に気付きやすく、状態を把握しやすい確実な方法と言えるでしょう。

例えば、郵便局の「みまもり訪問サービス」なら、郵便局社員が毎月1回(30分程度)の頻度で高齢者宅を訪問し、会話を通して生活状況を確認し、その結果を関係者に報告するという内容になっています。

また、新聞配達や配食事業者による見守りサービスのほか、行政の取り組みとして民生委員に相談するのも有効です。

<センサーなどを使った遠隔からの見守り>

一方、センサーや水道・電気などの使用状況を確認することで、入居者の異常を察知する手段もあります。

例えば、人体感知機能などの付いた多機能センサー「いまイルモ」(株式会社ソルクシーズ)はリビング・寝室・トイレなどに設置したセンサーで異変がないかを常時確認することができます。

また、30分ごとの電気使用量で安否確認を行なう「見守り電気」(株式会社アイキューフォーメーション)や、水道の使用状況をチェックする「CLASi」(株式会社Clues)などの遠隔見守り商品も多く市場に出回っています。

 

このように見守りサービスは内容や使い方など多岐にわたります。

どう活用するかは管理会社やオーナー次第となりますが、孤独死のリスクを減らすなら、単一のサービスに頼るのではなく、複数のサービスを組み合わせるのもいいでしょう。二重三重の強固な見守り体制を敷くことで、室内での孤独死リスクを最小限に抑えたいものです。

それでも起きる孤独死。防衛策は万全に

しかしながら、どれだけ見守り体制を強化しても、孤独死リスクを100%回避できるわけではありません。

万が一を見越して、発生後の備えを固めておいた方がいいでしょう。

<緊急連絡先や身元引受人の連絡先を確保しておく>

孤独死が起きた後、事前に緊急連絡先や身元引受人の連絡先が分かっていれば速やかな連絡が可能となり、その後の対応をスムーズに進めることができます。

例えば、管理会社を悩ませる残置物の処分や、現状回復費用が敷金を超えた際の超過分の支払いなども、解決の糸口がすぐに見えてくるはずです。

 

ただし、亡くなった入居者の連帯保証人に対しては、連絡先の確保はもちろん、保証人としての意志や資力があるか、前もって確認しておくことが重要です。

連帯保証契約を結んでから何年も経っているのであれば、連帯保証人を取り巻く状況が変わっていても何もおかしくありません。

費用請求ができないといった事態にならないよう、部屋の更新時に電話で意思確認を行なったり、書面に署名捺印を頂いたりするなどして予防策を講じておきましょう。

<孤独死保険への加入>

孤独死や自殺などの増加に伴い、近年は孤独死保険を提供する保険会社の数も増えてきました。様々な保険商品が提供されており、何をどう選べばいいのか迷われる方もいらっしゃると思います。

基本的な話となりますが、孤独死保険は大きく分けて、オーナーや管理会社が加入する「家主型」、入居者が加入する「入居者型」の2種類があります。

 

家主型は、室内で入居者が死亡した場合、遺品整理費用や原状回復費用、家賃損失を補償するものとなっています。

貸主側の支出が増えるというデメリットがありますが、万が一を考えたら充分に検討する価値のある保険と言えるでしょう。(※補償内容は各商品により異なります)

<家主型の商品例>

  • アイアル少額短期保険株式会社:「無縁社会のお守り」
  • 株式会社あそしあ少額短期保険:「大家の味方」
  • 住まいぷらす少額短期保険株式会社:「大家さんの安心ぷらす」…等々

 

一方、入居者型は、入居時に加入する火災保険(家財保険)の特約として契約するため、室内での死亡事故以外の災害も補償の対象となるという特徴があります。

契約者は入居者となりますので、貸主負担はもちろんありません。

ただし、補償内容に遺品整理費用と原状回復費用は含まれているものの、次のようなデメリットが見られます。(※補償内容は各商品により異なります)

  • 死亡事故による家賃減額や空室期間の家賃損失は補償されない
  • 原状回復後の保険請求は原則として入居者の相続人が行う
  • 相続人がいない場合は原則として保険金は支払われない

 

特に独居高齢者が孤独死してしまった場合、相続人がいないという事態は充分にあり得る話です。

商品によっては、相続人がいない場合でも、亡くなった入居者(被保険者)に代わって部屋を修理すべき者(保証人や相続財産管理人など)が行なった修理費用に対して保険金が支払われるものもあります。

確実に保険金を受け取るためにも、入居者型を導入する際は、管理会社やオーナーが保険金を受け取ることのできる条項が保険商品に盛り込まれているか確認しておくことが重要です。

<入居者型の商品例>

  • 東京海上ミレア少額短期保険・東京海上ウエスト少額短期保険:「お部屋の保険ワイド」…等々

室内で死亡事故が起きてしまった場合の原状回復費用や、事故物件として減額してしまった分の家賃補償など、超高齢社会において孤独死保険は今後欠かすことのできないセーフティネットと言えるでしょう。

いざという時に備えて加入しておくことをお勧めします。

少子高齢化が加速している昨今、シニア世代の入居は家賃収入の安定と、長期的な入居が見込める可能性を強く秘めています。

官民の提供する見守りサービスを使って孤独死をしっかりと防止し、万が一起こってしまった時も被害を最小限に抑えられるよう備えておけば、これまでのように敬遠する必要はなくなるでしょう。

 

入居者層として、今後ますます厚みを増すことになるシニア世代。

オーナーの賃貸経営を成功に導くためにも、管理会社は孤独死対策について情報収集に努め、緊急事態にも落ち着いて対応できる知識と経験を身に付けていきたいですね。


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