賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「他社との差別化」です。
ジャンルごとに差別化アイデアをご紹介
こんにちは! オーナーズエージェント コンサルタントの萩原です。
不動産業界14年目、賃貸仲介・管理会社での生々しい実体験を活かし、現場目線のコンサルや業務改善提案、セミナー・研修を日々行なっております。
前回コラムでは管理会社の生き残り戦略として、他社との差別化を図るうえで最初に手をつけるべき「他社・自社分析とターゲット選定」についてお伝えいたしました。
今回は、他社との差別化を実現する具体的なアイデア18個を4つのジャンルに分けてご紹介していきたいと思います。
当然ながら、すべてのアイデアを網羅して取り組むのは難しいでしょう。なので、前回コラムでお伝えしたように、差別化の事前準備として各種分析を行なったうえで、自社に合った差別化アイデアを見つけ、優先順位を決めて取り組んでいくのが得策です。
《差別化アイデアのジャンル一覧》 【A】契約形態(1〜3) |
【A】契約形態(定期借家・転貸借・空室保証)
まずご紹介するのは契約関連の差別化アイデア。オーナー様との契約、あるいは運用上の賃貸借契約にひと工夫を加えることで、息の長い差別化を図ることができます。
1.定期借家契約(再契約型)
期間満了をもって契約を終了できることから、不良入居者や家賃滞納者対策に有効とされる定期借家契約。普通借家契約と自由に使い分けられるようになれば、「リスクに強い会社」として差別化できるでしょう。
当社の兄弟会社:アートアベニューのように、管理物件すべてを定期借家契約にする、といった使い方もアリですし、審査で不安のある入居者だけは定期借家契約で契約する、といったピンポイントな活用もOK。
ただ、「募集」への悪影響を心配されるオーナー様が多いので、客付けに問題ない旨をきちんと説明する必要があります。
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2.転貸借契約(パススルー契約)
管理に転貸借契約を活用すれば、管理会社が管理物件入居者の「貸主」になることができ、集金・入居者対応(内容証明郵便の送付や訴訟等)・各種書類手続き等をオーナーの手を煩わせずに完結できるようになります。賃貸経営にまつわる余計な費用や時間の削減はオーナーも喜ぶところでしょう。
転貸借契約は一部導入だと逆に業務が煩雑化しかねないため、転貸借契約による差別化に挑戦する際は、全オーナーを対象に一気に契約を結び直していくことをオススメします。
3.空室保証
空室への不安は多くのオーナーが抱えているもの。空室保証を打ち出せれば、他社よりもオーナーの注目を集めることができるでしょう。
ネックは自社の資本的体力(空室保証の財務リスクを負えるかどうか)ですが、ここは厳密な査定と工夫を凝らしたリーシングでリスクを低減していくしかありません。
ただ、仕組み的に転貸借契約となり、また解約時・募集時もオーナーの判断を仰ぐことなく管理会社で判断が下せるので、日々の運用が非常に楽になるというメリットもあります。
【B】客付け力
オーナーが管理会社に期待することは、やはり空室を埋める力。エリアナンバー1を目標に、多岐にわたる空室対策を打ち出すのも差別化アイデアの一つです。
4.独自のリノベーションをしている
単純にリノベーションできることを謳うだけでなく、次のような「独自色」を押し出したリノベーションができるなら、他社の一歩先を行く差別化となるでしょう。
- 定額リノベーションパックで安価で施工
- 実績ある豊富なデザインパターンから選択可能
- 初回費用持ち出しのない0円リノベーション
- エリア需要を綿密に調査した結果から提案
施工実績をWEBサイトや営業資料などに掲載することを忘れずに。
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5.工期が早い
「退去後10日以内に仕上げます!」「自社施工によるワンストップサービスです!」と謳っている会社もありますよね。仕事の早さはそれだけで強力なアピールポイントです。施工スタッフを保有できない場合は、エアコン等をロット買い(まとめ買い)してストックし、迅速な対応を実現するというのも手です。
6.査定力が高い
市場相場を正しく見抜いた家賃査定ができれば、退去後の空室期間も短くなり、オーナーの安心につながります。
ビックデータを使ったAI査定や「コンペア式家賃査定」など「根拠」のある査定ができることは、競合他社との差別化材料のひとつとなるでしょう。担当者の経験や感覚だけで査定する会社ではない、と分かることで、オーナーに「いい加減な会社ではない/ロジカルな会社だ」と印象付けることができます。
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7.キャンペーン実績がある
キャンペーン実績も他社との差別化に繋がるアピールポイントです。閑散期など空室が思うように決まらない時期に、効果の高いキャンペーンを企画して成功した経験があるのなら、ぜひ実績としてまとめてオーナーにアピールしましょう。
長期空室に対して何もできない管理会社より、あの手この手で満室にする手法をたくさん持っている管理会社にお願いしたくなりますよね。
8.内見工夫(モデルルーム・臭い対策・ウェルカムボード等)
内見時にさまざまな工夫を凝らすことも、管理会社の個性としてオーナーの目を引くことに繋がります。
反響集客や紹介活動を頑張っていても、現地の内見成約率を上げる対策に細かく取り組めている会社は多くありません。細かい部分にまで気を付けて空室を決めようとする努力を、オーナーにも積極的にアピールしていきましょう。
《内見者が喜ぶ工夫あれこれ》
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9.SNS活用が充実
Instagram、TwitterなどのSNSを上手に活用できているなら、それもオーナーへのアピールポイントになります。
学生など若年層へのアプローチにSNSを使えている会社はまだまだ少数です。最新のITツールを駆使し常にアンテナを張って実行できる点は他社との大きな差と映るでしょう。
また、実際にSNSで反響を獲得した事例を紹介できると、オーナーの納得も得られやすいでしょう。
10.自社仲介店舗がある
思い切ったアイデアですが、自社仲介店舗を増やす・新たに持つという差別化もあります。集客の実態はWEBが中心でも、やはり店舗が多いことはオーナーの関心を引くからです。
実務の面でも、直接リーシングができるようになる・オーナーの相談窓口として使えるなどのメリットも。「オーナー様の物件を最優先で紹介していきます!」と店舗内で言えれば、説得力も違ってきますよね。
【C】ITツール・報告書類の提供
オーナー向けの情報提供が充実していれば、会社の説得力・信頼感が向上して、他社にはないアイデンティティを獲得できます。ITツールや報告書などで満足度を上げ、オーナーの心を掴みましょう!
11.定期的な啓発活動(オーナー向け情報誌・新聞)
オーナーに定期的な啓発活動を行なうことは、自社ブランドの確立や、他社との明確な差別化につながります。
賃貸経営に関する情報誌の発行や、オーナーセミナーの開催など、情報発信を続けてられている管理会社はそう多くありません。だからこそ、情報発信できる会社は目立ちますし、その発信によってオーナーの賃貸経営に対する理解・貴社や貴社の理念に対する理解も深まります。
それから、オーナーが管理会社の提案をちっとも受け入れてくれないケースってあるものですが、これも発信する情報次第では改善可能。業界の最新事情やノウハウを授けることで、提案が通りやすくなる副次効果も生まれるかもしれません。
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12.報告書で入居者対応を密に共有する
忙しい管理会社にとって「対応報告」はなかなか手が回らない業務の代表格、修繕など費用が発生する対応だけしか報告できていない、という会社も多いでしょう。なればこそ、報告書形式で日々の入居者対応をオーナーと共有できることは、有効なアピールポイントです。
入居者からどんな連絡がきてどんな対応をしてくれたのか、気にしているオーナーは少なくありません。密な報告ができれば、それだけで管理会社としての評価は高まるはずです。
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13.物件巡回報告書を提出している
物件巡回報告が充実していることも他社との差別化に繋がります。現地になかなか行けないオーナーであれば、物件の状態が分かる報告書が月に一度は欲しいところでしょう。写真付きの報告書で細かく伝えることで、オーナーからの信頼も高まります。
また、管理会社にとって、巡回報告はオーナー提案の良いきっかけにもなります。外壁や共用部の改修提案などを急にするより、定期的な報告に合わせて相談できた方がやりやすいですよね。
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14.リーシングレポート(募集活動報告)を提出している
空室解消はオーナーが最も気にすること。募集状況を記した定期的なリーシングレポートを提出できれば、信頼できる管理会社として他社をリードできます。
レポートは具体的であればあるほど望ましいと言えます。反響・内見数・改善点・対策など、オーナーが気にする内容を盛り込んでいきましょう。また、募集状況を見える化することで、管理会社にとっても提案のキッカケづくりになるかもしれません。
15.オーナー専用WEBページを備えている
WEB上で送金明細や収支状況が見れるオーナー専用WEBページの需要も高まっています。
本業のある投資家オーナーや二代目オーナーなど、時間のないオーナーにとって「WEBで完結」は大きな魅力。管理会社にとっても多種多様なオーナーにアプローチできるようになりますので、ターゲット拡大に一役買ってくれます。
16.オーナーアプリや入居者アプリを実装している
上記のWEBページに通じるものがありますが、オーナーアプリや入居者アプリといった最新のITサービスを実装できている点も差別化ポイントとなります。
オーナーアプリが実装されれば、オーナーはスマホ一台でいつでも管理会社とやり取りできるように。夜間や週末しか連絡できないオーナーは非常に便利だと感じるでしょう。
また、入居者アプリは入居満足度の向上とともに、入居者対応の記録もすべて残るようになります。オーナーへの報告内容も厚くなり、信頼度も高まるでしょう。
【D】管理料設定の工夫
料金プランは支払う側にとって大きな関心事です。管理料にひと工夫を加えるだけでも、オーナーの目を引き、他社との差別化に繋げることができます。
17.管理料の設定に融通が利かせられる(家賃1%、1戸1,000円など)
画一的な管理料だけでなく、オーナーに合わせた料金設定、そしてサービス設定ができれば、他社との差別化につながります。管理料の相場は全国的になんとなく5%ですが、そこに合わせる必要はまったくないでしょう。
また、オーナーのなかには「家賃集金のみ」「入居者対応のみ」など一部の業務だけ任せたい方もいるでしょう。
管理サービスを分解し、対応する管理料を「家賃1%」「1戸1,000円」などと設定して提供できれば、多くの自主管理オーナーの注目を集められるのではないでしょうか。
18.0円管理
他社との差別化を図るなら、ときには思い切ったアイデアも有効です。管理料「無料」はエリアによっては唯一のサービスとなり得る可能性がありますし、よほど自主管理したい場合を除いてオーナー側に断る理由がないため、認知度向上・契約数増大を目指す際には強い武器となるはずです。
ただ、実態として無料ではサービスを継続できません。
売上は入退去の手数料や工事利益、更新料を当てにすることになりますが、上手に商品設計をしないと「無料だといったのに高いじゃないか!」とクレームになることも。大胆な策だからこそ慎重に企画しましょう。
いかがでしたでしょうか。
比較的簡単に始められるもの、長期的な準備が必要になってくるものまで幅広くご紹介させていただきました。初めに述べたとおり、「他社との差別化」は事前準備が大切です。
まずはご自身のエリアで市況を調べ、「他社・自社分析とターゲット設定」をしたうえで、自社に最も合う差別化対策に取り組んでいただけたらと思います。
※今回の記事内容をお読みいただき、「他社との差別化」について検討・相談したいという方は、どうぞお気軽に萩原までご連絡ください。